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2017年03月24日
No.10000041

依存問題 業界の対策、明らかに
政府や自治体でも研究進む

依存問題 業界の対策、明らかに

 IR推進法案の施行以降、政府や政党、自治体がギャンブル依存に関する実態調査を進めている。遊技業界でも、リカバリーサポート・ネットワーク(RSN)の機能の充実や自己申告プログラムの改善など、依存問題への対策を強化するためのアウトラインが徐々に明らかになってきた。

 昨年末に施行されたIR推進法に付された附帯決議の中には、ギャンブル等依存問題の実態把握の体制の整備、相談体制や臨床医療体制の強化、ギャンブル等依存症に関する教育上の取り組みの整備が掲げられた。
 これを受けて政府は1月、「特定複合観光施設区域整備推進本部設立準備室(準備室)」を立ち上げ、IR整備の推進本部に移行するまでの間、依存問題の実態把握に努めている。厚生労働省ではギャンブル依存問題に特化した調査を全国11都市を対象に行った。この調査は今後、対象者を全国に広げていく予定だ。

 自民党でも1月にIRの準備に向けたプロジェクトチーム(PT)が立ち上がった。このPTの主な役割は既存の公営競技や遊技を含めた、ギャンブル依存問題への対応を調査すること。これまで、公営競技を監督してきた各省庁や、遊技場を運営している事業者にヒアリングを行ってきた。
 自民党PTの座長を務める岩屋毅議員は本紙の取材に対し「ギャンブル依存対策の制度の全体像としては、ギャンブル依存問題を抑止するための対策、そして、残念ながら問題が発生してしまった方への相談、あるいは治療体制の充実という点が柱になるだろう」との見解を示したうえで、「まずは正確な実態を把握することから」と述べている。

 地方でも、IR誘致に積極的な姿勢をみせる自治体を中心に、ギャンブル依存問題の調査・研究が進んでいる。3月14日には、地方自治体のギャンブル依存症対策を考える超党派の議員連盟が発足。同会の事務局長を務める神奈川県横須賀市の小林伸行市議は、「ギャンブル依存問題については地方自治体の役割が大きくなる」と話す。今後は専門家を交えて情報交換を継続し、地方自治体としてギャンブル依存症対策の準備を進めていくと言う。


業界団体でも
強化案を取りまとめ



 こうした動きの中、公営競技や遊技についても依存問題の対策の強化が求められている。パチンコ業界では1月27日のパチンコ・パチスロ産業賀詞交歓会の席で声明を出し、最優先課題として取組む方針を発表。2月末、パチンコ・パチスロ産業21世紀会でパチンコ・パチスロ依存問題対策について取りまとめ、警察庁に報告した。大きな柱は「リカバリーサポート・ネットワークの機能の充実」「自己申告プログラムの改善」「遊技機性能の表示機能及び管理遊技機」に関する3点だ。

 16日に行われた全日遊連全国理事会後の記者会見で阿部恭久理事長は、依存問題対策のうち「自己申告プログラムは日遊協が、遊技機については日工組が対応する」とし、全日遊連ではRSNの充実に取り組んでいくとした。
 具体的な取り組みについては、RSN相談員の増員や相談時間の延長が挙げられているが、阿部理事長は「相談員の人数も限られているため、すぐに相談時間を延ばすことや平日以外に対応することは難しい状況」との認識を示し、ホールスタッフに研修を行い相談員に充てることも検討しているとした。
 また、各ホールで依存問題への適切な対応ができる体制を作るために、依存問題に関する研修を受けた「安心パチンコ・パチスロ・アドバイザー」を配置する考えも明らかにした。このアドバイザーは問題を抱えた遊技客をRSNや精神保健福祉センターにつなげる役割などを果たすもの。4月に1回目の研修会を都内で開催することが決まっている。

 このほか阿部理事長は「RSNの西村代表からは、RSNへの相談は借金など生活上の問題である場合が多いと説明を受けた。家計面の管理などでのアドバイスができる仕組み作りも考えている」と述べるなど、のめり込みから派生する問題へのアプローチの必要性も訴えた。


 日遊協が中心となって進めている自己申告プログラムは、導入店舗が2月初旬以降から急増しており、3月16日現在で4 8 9店舗に導入されている。
 16日に開催された日遊協定例理事会後の記者会見で伊東慎吾常務理事は、「近いうちに1000店舗を超すと予想される」と述べたほか、「改善案の具体的な方策は決まっていないが、上限金額だけでなく回数や時間、一般客や家族からの要請にも対応できること、対応ユニットを持たないホールでも導入できるものを視野に入れている」との考えを示した。

 このほか、依存対策の提言や評価などを行う第三者機関を組成していくことも検討されているが、これについて庄司孝輝会長は、「早期に立ち上げるコンセンサスは取れている。数カ月を目処に客観性を担保できる形にしていきたい」との見通しを示した。