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2017年10月16日
No.10000337

ギャンブル依存問題、新聞はどう伝えたか
厚労省研究班 今年度調査で中間報告

9月30日の朝刊で各紙が報じた

政府の委託を受けた研究班が9月29日、「国内のギャンブル等依存に関する疫学調査」の平成29年度全国調査の「中間とりまとめ」を発表した。それによると、過去1年以内で「ギャンブル等依存症が疑われる者」は成人の0.8%で約70万人、生涯のうち一度でも「ギャンブル依存症の疑いがあった者」は同3.6%で約320万人と推計した。では、これらの数字を新聞各紙はどう報じたのか。




この調査は政府の外郭団体である日本医療研究開発機構(AMED)が国立病院機構久里浜医療センターに委託して行ったもので、久里浜医療センターの樋口進院長らが記者会見で発表した。

同センターでは平成25年度に、「アルコールの有害使用に係る実態調査」に付随して自記式の簡易なアンケート調査を行い、「ギャンブル依存症が疑われる者」の割合(生涯の中で、ギャンブル依存症が疑われる状態にあったことがある人の割合)を成人の4.8%(536万人)と推計。この数字が新聞やテレビなどで大きく報じられたことから、「ギャンブル依存症」の問題が大きくクローズアップされた。ただし、平成25年度の調査では、「過去1年」に限った調査はしていなかった。

一方、今年8月に日工組社会安全研究財団(社安研)が発表した「パチンコ・パチスロ遊技障害全国調査」では、「直近あるいは生涯の特定の1年間において軽度以上のパチンコ・パチスロ遊技障害を有する(有していた)人」は成人の0.9%で約90万人、「直近1年間において、パチンコ・パチスロ遊技障害を有しているおそれのある人」は0.4%で約40万人と推計した。

社安研の調査に携わった諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授は発表に際して、「ギャンブル障害が論じられる場合、生涯にわたる状況が問題にされるが、(問題を抱えた人に対する)対策にとってより重要なのは直近1年間の状況のほうだ」と述べた。



では、今回の久里浜医療センターの発表を新聞各紙はどう報じたのか。直近1年の推計値である「70万人」を大見出しで報じたのは朝日新聞だけだった。その他の全国紙はすべて生涯にわたる推計値の「320万人」を大見出しにし、「パチンコ・パチスロ突出」(産経新聞)、「政府、4600人調査で推計」(東京新聞)といった小見出しをつけた。通信社の記事配信を受けているとみられる地方紙もおおむね「320万人」を大見出しにしていたが、「最近1年間は70万人」(信濃毎日新聞)と小見出しをつけた新聞もあった。NHKをはじめとしたテレビのニュースでも、おおむね見出しは「320万人」だった。

依存問題対策においては、「現在問題を抱えている人」の把握が第一に求められる。今回の中間とりまとめで久里浜医療センターは、「3.6%」の推計値について「この中には、調査時点で過去1年以上ギャンブルを行っていない者が一定数含まれており、例えば10年以上前のギャンブル等の経験について評価されていることに留意する必要がある」と記した。その効果か、記事本文中では「過去1年間」の数字に触れた新聞も多かった。

調査主体やメディアがどう伝えるかで、国民の依存問題に対する認識は大きく変わる。それが政府の政策にも反映される。メディアには、依存問題に対する正しい理解とギャンブルの問題を抱えている人の立場に立った報道を求めたい。


*週刊アミューズメントジャパン10/16号掲載