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2017年12月22日
No.10000436

シティコミュニケーションズ
挑戦しないことこそリスクだ
INTERVIEW 三田大明社長

挑戦しないことこそリスクだ

日本最大の複合カフェ『DiCE池袋店』や、世界一に認定されたラグジュアリースパなど、本格的な多角化を進めるシティコミュニケーションズ。「ラスベガスのような街を作る」という理念に着実に近づいている同社の今後の展開について、三田大明社長に聞いた。
〔文中敬称略〕


──遊技機のスペック変更などもあり、ホール企業の多くは売上が減少しています。パチンコ業界の現状をどう見ていますか?
三田 パチンコホールは他の業種に比べて、まだまだ収益性が高い業態だと思いますし、成長のチャンスに溢れた市場だと思います。収益性が落ちたと言いますが、ようやく普通の商売になっただけなのではないでしょうか。私は大学卒業後3年間SEGAでゲームセンターの店長を経験しましたが、いかに100円を使って頂くか、利益を出すためにどうコスト管理をするか、ということを学びました。弊社が展開しているインターネットカフェの業態は、基本料金が数百円です。ホールの感覚では「たったの数百円」ですが、それを頂くためにさまざまなアイディアを考えますし、コスト意識も高くなります。飲食は低価格・高品質な業態が溢れていますし、その中で収益を確保しながら事業を継続していくことは非常に難しい。つまり、他の業界ではこうした厳しい環境の中で、借り入れを返済しながら事業を続けているわけです。それに比べると、パチンコホールは厳しい環境ではないというのが私の考えです。

──多角化を始めたきっかけは?
三田 「ラスベガスのような街を作る」というのが当社の目標です。エンタテインメントの街を作るには、ゲーミングだけではなく、人々を笑顔にさせるたくさんのコンテンツが必要になります。全てを自社で経営・運営する必要はないのですが、できるものは自社でやっていこうという発想です。事業多角化街づくりは創業時からの考えで、パチンコ業界が駄目だからちょっと異業種をやってみよう、という軽い考えではありませんし、逆にホールが順調だからと片手間でやっているわけではありません。

──現在、御社が手掛ける事業は?
三田 ホール12店舗、飲食事業17店舗、インターネットカフェ14店舗。スパとカプセルホテルで3店舗に、アニソンカフェ2店舗、ウェディング事業、シューティングバーやデザイン会社と不動産会社、スマホアプリ制作会社ポータルサイト運営会社など、事業所数は約50になります。ほとんどの新規事業が社員たちからの提案で始めたことです。グループ全体の収益構成比は、利益ベースで見れば、パチンコとその他事業は、ほぼ半々という状況になりました。

『痛カプ ニューシティ』 萌えキャラのデコレートやスマホと連動した「喋る枕」など、斬新なコンテンツを揃えた


──それぞれの事業が単体で収益を上げているのは難しいのでは?
三田 単店でも集客できるような魅力や独自性を備えたものでなければなりません。例えば、インターネットカフェの『ダイス池袋店』は日本一の広さで有名ですが、『池袋店』だけではなく、どの店舗も国内トップの高付加価値を有したブランドだと自負しています。フレンチレストランのフレンチトーストは東京の人気ランキングで1位になりました。『DAMAI』というラグジュアリースパは、ロンドンの格付け機関で世界一に認定されました。「痛カプ」という商標登録を取ったカプセルホテルは、世界中から取材が殺到している状況です。自慢をしているわけではなく、ここまで魅力的な物を作る情熱を持たなければ成功しないのです。最高のコンテンツ同士が複合する施設を作ることでシナジー効果が何倍にもなるわけです。


ラグジュアリースパ「DAMAI」を代官山と横浜に出店。イギリスの旅行業界の専門家によるアワードで「世界一」に認定された


──ホールを10店舗以上経営されている企業で、ホールとその他事業の利益が同程度というのは非常に稀なケースだと思います。
三田 当社の中で「主事業は何か」という意識はありません。全ての事業部は平等ですし、希望によって社員が事業部を選択することもできます。複数の事業部が社内にあることで、社員の成長にもつながります。例えば、事業計画発表会などでパーラー事業部の社員が飲食部門の事業計画を聞くと、ここまで細かい管理をしなくては利益が出せないのか、といった気づきがあります。それはホール事業だけに携わっていたら見えないことです。

──多角化はリクルーティングでの効果もあるのでしょうか?
三田 もちろんです。当社を選んでくれた学生のほとんどが、さまざまな事業にチャレンジできる可能性がある、仕事で自己実現できるという理由で入社しています。時代によって学生たちが「ワクワクする」事業は変わるようで、最近では2年前に立ち上げた「クールジャパン事業部」が学生からの人気が高い。世界中から取材のオファーが来ており、毎日のようにテレビや雑誌で取り上げられている状況ですから。

──新規事業をこれだけのスピードで展開することはリスクを伴いますが、決断することに躊躇はありませんでしたか?
三田 むしろ、新しいことにチャレンジしないことにリスクを感じます。新しいことを始めることで、社員たちのモチベーションも上がり、学びの意識を持ち知恵も使う。従来と同じことを繰り返しているだけでは、新しい学びも気づきも得られず、優秀な人材も入社してきませんから、既存事業を維持することすら難しくなっていくでしょう。

居酒屋から高級フレンチまで様々な業態の飲食店12店舗を出店。『Le FAVORI紀尾井町店』 フランス料理の伝統を守りつつ日本の食材を活かした“和×フレンチ”。味はもちろん、接客サービスにおいて日本が世界に誇る「おもてなし」を体現している


──社員からの提案はありますか?
三田 ものすごい提案があります(笑)。そもそも、当社には「ラスベガスのような街を作る」という理念がありますから、自分たちで提案し、実行していかなくてはその理念に近づくことができないのです。自分たちの夢がかかっているので、市場調査はかなり精度が高いものを提出してきます。

──どんな業種・業態が成功の可能性が高いのでしょうか?
三田 どんな業種・業態かはそれほど重要ではありません。その事業に情熱を持って取り組めるか、決め手はそこです。ビジネスですから採算を考えることは重要ですが、これまでの経験から確信しているのは「収益は情熱の量に比例する」ということ。どんな事業を始めても、最初はうまくいかないことが多いんです。それを乗り越えるには、その事業が好きで、情熱を持って取り組めるかどうかなんです。

──とはいえ、業種によって成功の可能性は異なるとは思いますが?
三田 強いて言えば、世の中の流行に乗ったビジネス、100人に聞いて100人が「それいいね」というようなビジネスは選択しません。過去、流行のスイーツを販売する店を出店した際、初日は記録的な販売数を記録しましたが、1カ月後は閑古鳥が鳴いていました。流行は廃れやすいということもありましたが、そもそも、その事業には誰も情熱を持っていなかった。むしろ、100人中99人に「失敗するのでは」と疑われる事業の方が成功する確率は高いと思います。事業を始めるタイミングは重要かもしれません。仮に店舗型ビジネスを行うとしたら、物件を取得しなくてはならない。好景気の時は地価も賃貸料金も高いですし、そもそも良い物件も出てきません。

──社員からの提案の中には、社長が全く知らない分野、業態などもあるのでは?
三田 ほとんどそうですよ(笑)。興味があるとか、知っているか知らないかで新規事業を判断していたら、まず成功はしないでしょう。知らないならば、実際に行って体験してみることです。「アニソンカフェ」と提案されても、全く想像もつきませんでした(笑)。でも、実際に体験してみると、これは可能性があると思った。事業計画書や収支シミュレーションは所詮、机上のものですから、可能性があると思ったら実際に始めてみて、そこから軌道修正していけばいいのです。

『すた~ず@City』 アニソンカフェはカラフルな店内で、ライブ会場としても楽しめる空間


──IRが横浜にできる可能性もあります。パチンコと競合するかもしれませんが、御社にどのような影響があるでしょうか?
三田 もし、横浜にできたら、ものすごいチャンスです。当社のクールジャパン事業は、外国人が日本で楽しめるコンテンツを提供することにかけては世界一だと思ってますし、パチンコもそのコンテンツのひとつですから。「パチンコホール」だけで考えたら、お客様の使えるお金の一部がカジノに流れ、ホールにマイナス影響を与える可能性もありますが、会社全体で見れば、非常に大きなチャンスです。

──最後に中長期的なビジョン、成長戦略を教えてください。
三田 「ラスベガスのような街づくり」のゴールはまだ先ですが、魅力的なコンテンツはある程度できてきました。今後は、それらのコンテンツの複合化、あるいはドミナントを検討していきたい。それを国内、国外にアピールし、IRをはじめとしたプロジェクトがある時には、当社ができることで参画していきたいですね。


みた・ひろあき
1995年3月慶應義塾大学経済学部卒業。1995年4月㈱セガ・エンタープライゼス入社。1998年4月㈲ザシティ入社、2000年4月㈲ディスクシティエンタテインメント設立、社長に就任。2002年12月㈱シティコミュニケーションズ代表取締役社長に就任。