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2018年03月06日
No.10000539

東日本大震災から7年
ホールに災害備蓄品
公助から共助へ 進む取り組み

風除室に備蓄物資を設置している『Super D'station前橋大利根店』

今月11日に東日本大震災から7年目を迎える。震災後、多くのパチンコホールが地域と一体になった災害対策に取り組んできた。そんな中、最近では食料品や飲料水などを店舗に備蓄し、災害時の一時避難所として自治体と協定を結ぶ動きが増えている。地域とともに助け合う「共助」の取り組みだ。

これまでの大きな大震災を振り返ると、災害が発生したときに地域が必要とするのは一時避難所だ。交通インフラにもダメージが出るほどの大規模災害では、物資の流入が途切れることも想定されるため、食料や飲料水、そして情報の収集・伝達手段の確保なども必要になってくる。 

生活に密着した場所や駅前に数多くあるパチンコホールにも「防災拠点」としての役割が期待されている。近年、特に東日本大震災後は、ホール企業や遊技業組合が防災に備えるための協定を自治体と締結する取り組みが増えてきた。

最近増えつつあるのは、来店客の目に触れやすい場所に備蓄物資を設置するホールだ。
『D’ステーション』の屋号で全国にホールを展開するNEXUS(群馬県高崎市)は、グループ全店舗で水や簡易トイレ、乾パンなどを風除室などに設置している。店舗に物資を備蓄し始めた当初はバックヤードに置いていたが、民間施設などを活用した地域活性化を支援するNPO法人からアドバイスを受けたことを機に、来店客の目に触れる場所に置くようにした。

これまでの震災では自治体や企業が食料や水などを備蓄していても、どこに備蓄品があるか認知されておらず、いざ災害が発生しても物資を手にすることができないケースが多発した。つまり、普段から「ここに備蓄品がある」という周知が必要なのだ。

NEXUSは店舗がある自治体と「災害時における防災備蓄物資の提供に関する協定」を結び、災害の際にこれらの物資を配ること、駐車場を一時避難場所として開放することなどを協定に盛り込んでいる。協定を結んだ店舗は、避難場所一覧として自治体のホームページに掲載される。

タツミコーポレーションの店舗では備蓄品を来店ポイントで交換できる


『ミクちゃんガイア』、『ミクちゃんアリーナ』などの屋号で関西に31店舗のホールを出店するタツミコーポレーション(兵庫県明石市)は、今年2月から災害備蓄品を店舗に設置し始めた。大型店や人通りが多い繁華街立地の店舗など6店舗で開始し、最終的には全店舗に広げていく予定だ。

同社は元々、パチンコホールを災害時の防災拠点として機能させる構想を持っており、一部店舗で毛布をバックヤードに設置する計画をしていた。

この取り組みを中心になって進めた営業管理部の平野泰広次長は「当社には過去に阪神・淡路大震災を経験した従業員も多く、災害への備えの重要性は共有していました。震災直後は水や食料が手に入らない、帰宅できずにトイレに困った従業員もいました。パチンコホールは避難場所として人々を受け入れる空間がありますし、そこで水や携帯トイレを配布して持ち帰ってもらえれば、その家族も助かるはずです」と話す。

物資は備蓄しているだけではなく、来店ポイントで交換もしている。こうした物資を家庭に持ち帰ってもらうことで、各家庭での防災意識を高めてもらいたい、という想いからだ。

「地域住民のことを想って物資を置いてくれてありがたい」。災害備蓄品を置いた店では、こうした感謝の言葉をかけられることが多くなった。また、地域に役立つ活動をすることで、従業員のモチベーションアップにもつながっているという。

タツミコーポレーションの木下成哲社長は「私たちの商売は地域の方に支えられて成り立っています。これまでも地域貢献、社会貢献活動には力を入れてきました。私たちのお店を利用してくれる方だけではなく、パチンコやパチスロを遊技しない方々からも『パチンコホールがあって良かった』『ミクちゃんガイアがあって助かった』と思われる存在になっていきたい」と話す。

中央防災会議「首都直下地震避難対策等専門調査会」座長や首都直下地震対策検討ワーキンググループ委員などを歴任した「防災のプロ」、明治大学大学院の中林一樹特任教授は、「防災拠点であることを普段から地域住民に周知させることは重要なこと」と指摘する。どの事業所にどの程度の備蓄品があるのかを地域の住民が知らなくては、いざ災害が起こった時にせっかくの備蓄品を活用できないからだ。

「『そうしたことは公言することではない、モラルとして災害の際は地域住民を助ける』と考える企業もあるようですが、普段から自社の従業員や地域に対してコミットしていなければ、いざという時に共助のために動けないものです。公言しない企業は自助のための備えも疎かになりがちです。『うちは共助をするんだ』と普段から明らかにしておくことで、その責任を果たすための緊張感が生まれ、普段からの備えにつながるのです」(中林教授)