No.10003667
もっと働きやすく、もっと選ばれるためのSDGs⑤
社会課題の解決が利益に結び付く
SDGs&Career 赤羽良太

第4回ではSDGsにおける重要な3つの言葉と解釈を主なテーマとする中、2030年に向けた業界の在り方についても問わせていただきました。
今回はSDGsへの誤解についてお伝えさせていただきます。
CSRとCSV、そしてSDGsの違い
これまでの活動の中で、SDGsとCSRの違いについて質問をいただく機会が多くありました。同じだと考えていらっしゃる方がいれば、まったくの別物と捉えられている方もいます。結論、正解でもなければ間違いでもありません。
CSRとCSVは似て非なる性質があり、SDGsはCSVの指標である。私はこれを理解したとき、SDGsに取り組む価値をさらに感じました。
CSRとCSVの大きな違いは経済価値の創造という点です。
CSRは本業と離れた分野で展開され、経済価値という視点は含まれません。清掃活動やエコキャップの回収、災害協定などが上げられます。
しかし、このような活動は直接的な利益がなくとも、イメージや従業員のエンゲージメント向上に好影響を生み出すなどの間接的な利益に期待できます。
反面、CSVは社会課題を解決する活動に経済的価値を創造するという性質があります。
ここではキリンホールディングス社の事例をご紹介します。
同社では「CSVを経営の根幹に据え、社会と共に持続的な成長を実現」という価値創造モデルを打ち出しています。
2013年に発売された「氷結果汁 和梨」、続いて15年に発売された「氷結果汁 桃」。これは、東日本大震災の復興支援を目的とした取り組みです。それぞれ、福島県産の原材料を使用して作られました。この取り組みに多くの消費者が共感した結果、通常よりも3倍のスピードで完売し社会課題の解決にもアプローチできるものでした。
本業の強みを活かして社会課題の解決と経済価値を創造するというCSVの事例です。
SDGsでは活動自体の持続可能性も求められます。取り組むことでコストはかかるかもしれませんが、持続するために稼げる仕組みを考えることも重要になります。
業界の強みを活かしたCSV
遊技業界で取り組みを検討する上で、まずは強みや課題を知ることから始めたほうがいいでしょう。
業界の強み
◎地域に根付き、気軽に足を運べる娯楽施設であること
◎年間の営業日数や時間
◎顧客の幅広い年齢層
◎最先端のデジタル設備
◎サービススキルの高さ
社会課題
◎超高齢社会
◎温暖化
◎人口減少
◎ジェンダー
ポイントとなるのは、このような社会課題が地域にもたらす影響まで考えることです。
例えば、超高齢社会において高齢者の孤独化や孤独死の増加、交通インフラにも影響を与えることなどが想定されています。想定されるさまざまな社会課題に対して、自社の強みや特性を活かしてどうアプローチできるのかを模索していきます。
取り組みは自己満足で終わるのではなく、地域と対話を続けることが大切です。地域に求められるようなレベルの取り組みになれば、それが社会から選ばれる要素になることでしょう。
また社会課題を知る上で参考になるのが、博報堂生活総合研究所の未来年表というサイトです。
https://seikatsusoken.jp/futuretimeline/
ここではあらゆる分野・年代に起こり得る未来予測を知ることができます。訪問してみると面白い発見や気づきが得られるかもしれません。
社会課題を解決しながら稼ぐ
日本は陰徳の文化が強く、社会貢献活動に経済的価値を見出すことがイメージダウンにつながると思われることも少なくないと感じます。
「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は偽善である」。これは二宮尊徳氏の名言です。
遊技業界で行っている、社会的に良いと思われるような活動は、広報して経済価値につなげていくことが重要です。
しかし、ここで大切なことは金儲けだけではないという点です。人の心を動かすには「想い」=「Why」があることが大切です。
この活動は誰のために、何のために行なっているのか?「地域を元気にする」、「困っている人を助ける」、「次世代の子どもたちのために」など、そこが明確になれば人々の関心を集めるでしょう。そして、このWhyが共感を生み、活動の原動力になります。
自分たちだけが儲けるためでは、社会から選ばれることは難しいでしょう。Whyを探求するために効果的な、ブロックを使ったワークがあります。不思議なことにブロックを使うと抽象的な想いを言語化することができるので、非常に面白く効果的な結果を生み出すことができます。
このWhyについての詳しい説明とブロックワークの詳細は次号に掲載させていただきます。
ボードゲームでSDGsが目指す世界を体感する。
SDGs 学習ゲーム[Get The Point]
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※『月刊アミューズメントジャパン』2022年5月号に掲載した記事を転載しました。