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2017年03月31日
No.10000052

ユーコーリプロ
廃棄台処理は新時代へ
適正処理とリユース対応で業界をクリーンに

廃棄台処理は新時代へ
金海基泰 代表取締役社長

 遊技機のリサイクル事業を通して業界の健全化に寄与するユーコーリプロ(本社/福岡市)。創業から25年を経て、時代の変化とともに同社の役割も大きく変わってきた。廃棄からリユースへ。新たな循環型産業の構築を目指す金海基泰社長に思いを聞いた。

 ユーコーリプロが設立されたのは1992年。同社の創業者で現会長の金海龍海氏が、使用済み遊技機が適正に処理されていないことが将来的に大きな問題になりかねないとの危機感から立ち上げた。事実、それは現実のものとなり、1990年代から2000年代初頭にかけて、国内で使用済み遊技機が野積みで放置される事案が発生し社会問題化した。その後、使用済み遊技機が中国などへ持ち出され、現地で環境問題を引き起こすなどの問題を起こした。昨年6月に同社の社長に就任した金海基泰氏はこう振り返る。
 「設立当時もっとも懸念されていたのが、不適切に処理された廃棄台から不正ロムなどが作られる可能性でした。それを阻止するためにも、業界から排出される遊技機は自分たちできちんと処理しなければならないという思いがあったのです」


東西2カ所の
リサイクル工場


 時代もリサイクル社会へ向けて動き出した。01年に資源有効利用促進法(改正リサイクル法)が施行され、ぱちんこ遊技機もその対象となった。同法ではリサイクル(再資源化)、リユース(再使用)、リデュース(発生抑制)の促進が明記された。

 ユーコーリプロは97年、全国に先駆けて広域再生利用指定産業廃棄物処理業者に指定され、全国にまたがって廃棄台の運搬・処理ができる体制を整えた。現在では西日本リサイクルセンター(北九州市)と東日本リサイクルセンターの2カ所で、全国から集まる使用済み遊技機を適正に処理している。ただし、その処理方法は20年前といまでは大きく変わってきた。
 「以前は遊技機をそのまま破砕機に入れて粉々に砕き、木屑や鉄に分別し、マテリアルリサイクルに回す原料や燃料にするサーマルリサイクルでしたが、いまでは遊技機を解体して部品取りを行うリユースへどんどんシフトしています」

 その結果、以前と比べて一日に処理できる台数は2分の1程度が限界になったという。
 「メーカーや機種ごとに必要な部品が異なるので手作業で解体しています。液晶だけでなく、シリンダーやセンサー、スイッチなどを外して目視確認、動作確認、通電確認などを行い、メーカーさんに納めています」
 遊技機の枠は破砕した上でプラスチックの種類や金属に分けて再利用できる資源として売却しているという。





使用済み遊技機の
買取を積極的に推進


 こうしたリユースの流れは、ユーコーリプロが設立以来、日本遊技機工業組合(日工組)とともに廃棄台処理を行ってきたことが背景にある。09年には広域認定制度(環境省認可)における委託処理会社の登録を受け、10年に広域認定制度における新たな日工組遊技機回収システムがスタート。その中間処理会社となり遊技機の適切な処理にあたっている。
 「昨年社長に就任して以来、業務の見直しを行うとともに、全社的にコンプライアンスを大事にすることを徹底しています。それができてはじめて、ホール様から安心して遊技機を出してもらえるし、日工組加盟メーカーの信頼も得られると思うからです」

 こうした流れの中で昨年、業界を挙げて取り組んだ検定機と性能が異なる可能性のある遊技機の回収撤去で大きな役割を果たすことになった。日工組遊技機回収システムで回収撤去した遊技機約20万台の処理にあたったのだ。
 「そういう役割を担う会社が業界の中にあるんだということを知ってもらうことができたと思っています。いままでお取引のない法人様ともつながりができました。今後さらに努力して、つながりができたホール様に寄り添って、循環型産業の実現に向けて努力していくつもりです」
 いまでは金海社長以下、若いスタッフが経営に携わるようになった。そのなかで力を入れているのが使用済み遊技機の買取システムの推進だ。

 「当社をはじめとしたリサイクル選定業者以外の業者に流れている使用済み遊技機は相当数あると見られています。その状態を放置しておいては将来的に問題化することも考えられます。業界のイメージアップや地球温暖化対策なども含めて、すべての遊技機が適切に処理されるためにどうお役に立てるか。それが当社の存在価値です。そのためにも買取を積極的に推進していきたいと思っています」
 リユースを推進していくには、多くの遊技機を回収する必要がある。同社に持ち込まれる遊技機が増えれば、リユース部品の供給が増えていく。

 「メーカーから求められるクオリティの高い部品を返すことでその一助になれる。20年前とは工場の状況もガラリと変わりました。当社のリサイクルセンターは処理工場ではなく、新しい機械を作り出している場所と考えています。そのためにも200人あまりいる社員が働きやすい環境を整えていきたい。それが生産性の向上につながると信じています」
 ユーコーリプロが目指すのは、業界全体でパーフェクトリサイクルを達成することだ。金海社長は最後にこう語った。
 「将来的にはクリーンな業界にしていくことが目標です。目先のことを優先ばかりしていては将来必ずツケが回ってきます。使用済み遊技機すべてが適正に処理されるために、いまできることはしっかりやっていくつもりです」