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2017年07月14日
No.10000227

特集 経営課題を解決
業績を上げるために重要な「問題発見力」

店舗が好ましくない状況にあるとして、そこから抜け出すために、まず手を着けるべきことは状況を認識することだ。状況を正確に理解し、問題を引き起こしている本当の原因を特定し、解決すべき問題を明確化する。それが、問題解決策(ソリューション)を導きだすプロセスだ。



「4円パチンコの稼働が伸びない」「人材不足」「高コスト構造」……。
経営上の問題点は何か? 店舗の課題は何か? ホール企業の幹部層に聞くと、返ってくる答えのほとんどはこういったことだ。

企業では様々な好ましくない状況が発生し、それを解消するために経営資源を投入している。それが「問題解決」と呼ばれるが、陥りがちな間違いが、目に見える現象を深堀りすることなく「解決すべき問題」だと定義してしまうことだ。

「4円パチンコの稼働が伸びない」「人材不足」というのは好ましくない状況であり由々しき問題ではあるが、ある問題によって表出した現象、結果、症状だ。

「売上が落ちている。この状況をどう解決するんだ?」という経営者の問いに対する、「はい。売上を上げます」といった、コインの裏表のような答えは何ら解決策を提示していない。表出した現象の根底にある問題こそ、「解決すべき問題」なのだ。

もし問題の定義が適切でなかったら、いくらその問題の解決にリソースを注ぎ込んでも、もっとも重要な「業績の向上」という課題に対してはほとんど手付かずとなる。 

目の前で起こっている現象、表出している症状が、現場のリーダーによって「好ましくない状況」と認識されていなかった場合も、「解決すべき問題」として認識されない。

例えば店舗スタッフのモチベーションが低下しているという現象があり、それが営業成績低下の原因になっていたとする。現場のリーダーが、モチベーション低下に注意を払わず、たまたま目に付いた「お辞儀の角度がばらばら」ということを問題だと捉え、接客基本動作の徹底指導で知られる研修会社に接客研修を依頼したとする。

ここで起こっていることは、現場のリーダーが、お辞儀の角度がばらばらという〈現象〉から、接客動作の不均質を〈原因=解決すべき問題〉と設定し、接客動作を揃えるにはどうしたらいいかという〈課題〉に対して、接客向上のための接客研修という〈ソリューション〉を選択した、ということだ。

本記事で注意を促したいのは、電光石火のごとくひらめいた熟考されていない〈ソリューション〉に簡単に飛びつくべきでないということだ。いずれのケースでも、冷静な読者であれば、「本当の原因は他にもあったのではないか?」「仮にそれが原因だとしても、他に有効なソリューションがあったのではないか?」と考えるはずだ。



真の原因を探る必要性

問題解決の第一ステップは、課題の設定だ。これは好ましくない状況を認識し、「改善可能だろうか?」という問いを立てること。好ましくない状況はほとんどの場合、目標と実績の差異、あるべき姿と現実の姿の差異として現れる。元々はあるべき姿と現実の姿が一致していたのに、いつのまにか悪い方向へと向かい乖離が生じた。これは何らかの条件が変化したからであり、どの条件が変化したのかを速やかに特定し、何らかの処置をとらなければならない。

製造業であれば生産の効率性が常にモニターされているが、サービス業ではサービス提供プロセスが必ずしもモニターされていない。これを把握する方法として、ミステリーショッパー(覆面調査)によるサービス評価調査や顧客アンケートによる顧客満足度調査は非常に有効だ。

第一に、ベンチマーク(指標・基準)があることで、早期に好ましくない差異を発見できる。第二に、このような調査により、「全体評価の低下に最も大きな影響を及ぼしている要素は何か?」を特定することが容易になる。すると、解決すべき問題を明らかにでき、そのためのソリューションを考えることに注力できる。

問題を発見、理解する際に効果的だと言われるフレームワークに、問題発見の4Pと言われるものがある。「Position(立場)」「Purpose(目的)」「Perspective(空間)」、「Period(時間)」の4つを指し、これらについて考えることがヒントになるのだ。

「Position」は、その好ましくない状況は誰にとっての問題なのかを考えること。「Purpose」は自社/自店の取り組みはそもそも何の目的のためにあるのかを考えること。「Perspective」は問題の範囲、問題を捉える枠組みの広さをとらえ直して考えること。「Period」はどのタイミングの事象を問題ととらえているかを考えること。

一例として、「Period」(時間)」について考えてみよう。
例えば、あるホールが「コミュニティーホール」への変革を打ち出し、部長を中心にしたプロジェクトチームが組まれていた。その取り組みを始めて約1カ月。集客への好影響が見られない。元々、即効性のある取り組みではないが、焦った部長は、来店客に向けて「当社はコミュニティーホールです。従業員も〇〇のような対応をします」といった告知を開始したが、効果は表れなかった。

コミュニティーホールに着手しているが集客に好影響がでないという〈現象〉に対し、部長は、遊技客に伝わっていないことを〈原因=解決すべき問題〉だと捉えたわけだ。だから、来店客に積極的に伝えるにはどうしたらいいか? という〈課題〉を設定し、「当社は~をします」というストレートな告知をするという〈ソリューション〉を考え、実行した。

しかし、本質的な問題は、コミュニティーホールが具現化されていなかったことにある。原因は、コミュニティーホールの概念が従業員に浸透していないことにあった。それも無理がないことで、その店は、取り組みを始めてまだ1カ月程度だった。

取り組みを始めてわずか1カ月という期間では、好ましくない状況ととらえるべきことは、集客に好影響がでていないということではない。そのことが念頭にあれば、従業員がコミュニティーホールとしてあるべき行動を実行できていないということに気づけたはずだ。問題の定義がズレれば、ソリューションもズレたものになってしまうのだ。