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2017年08月14日
No.10000259

日電協・回胴遊商
依存問題で公開討論会
識者6人が議論

左から司会の青山氏、中村氏、河本氏、杉村氏、藤田氏、力武氏、ういち氏

8月5日、東京・秋葉原で行われた
「8月4日はパチスロの日」のイベント「パチスロサミット2017」で、IRの影響やギャンブル等依存問題を中心に考える公開討論会が開催された。業界内外の識者をパネラーに招き、依存問題の現状や今後の業界が取るべき対策などについて議論した。


パネラーは元衆議院議員の杉村太蔵氏、精神科医の河本泰信氏、ワンデーポートの中村努施設長、セントラルカンパニーの力武一郎代表、エンタテインメントビジネス総合研究所の藤田宏代表、パチスロライターのういち氏の6人。司会はフジサンケイビジネスアイ編集局遊技産業担当の青山博美氏が務めた。

討論会ではまず「IRが遊技産業に与える影響」をテーマに議論。今後のIR実施法までの見通しについて藤田氏は「政府はIR実施法とともにギャンブル等依存症対策基本法の整備を進めている。依存症対策基本法案が可決されてから実施法の審議という流れになると、来年の通常国会の会期内の成立になるのではないか」と予測した。

これに対して杉村氏は「(現状の内閣支持率などを勘案すると)来年の春にはどのような政権になっているか分からない。IRについては全く未定の状態ではないか」との見解を示した。

力武氏はIRができた場合のホールへの影響について「足元商圏のパチンコホールと広域から人を集めるカジノは営業上の競合にはならない。ただし、人材の奪い合いという点は競合するかもしれない」とし「ホールとして問題なのはIRができた後ではなく、できる前。風営法の厳格化などが脅威となる」と危機感を示した。

ういち氏は「日本にカジノができても数カ所程度。しかも、入場するために身分証の提示や入場料が必要になるのであれば、毎日気軽に通える遊びにはならない。パチンコ・パチスロユーザーの多くは、カジノができたら一度は行きたいと考えるだろうが、日常的に通うものではない」と力武氏の意見に賛同した。


政府が発表した「ギャンブル等依存症対策基本法案の概要」で、ギャンブル依存症を「疾患」と定義していることに対して河本氏は「医学的見解でもないのに、依存症という医学的な疾患名をつけていることに非常に大きな違和感を覚える」との見解を示したほか、「家族による入場排除や、回数や金額を減らすなどの『制限』を設けることが依存症の抑制になるという発想が貫かれているが、医療の場でギャンブル依存の患者を見てきた経験から言うと、制限されればされるほど少ない回数で取り戻そうとするなど、制限することは逆効果にもなりかねない。対策は必要だが、周囲からの減らせ、やめろという強制では効果がない」と述べた。

また「様々な統計から、ギャンブル障害を抱えた人の7割、8割は最終的に自然回復することがわかっている。ただし、自然回復しない人が1割、2割いる。そういう人は何かしらの重症化因子を持っており、問題が深刻化する一部の人に当てはまる。我々専門家としては、この重症化因子に対応していくことが重要だ」と述べた。

パチンコ・パチスロで問題を抱えた人に数多く接してきた中村氏は、「ギャンブル依存症」についての報道が増えている現状について「ギャンブル障害やギャンブル依存症といった、いかにも感染症のような病気が存在するという風潮をマスコミが作っているように感じる。IRを推進する際、そういう病気があるという前提があった方が対策を立てやすい、もしくは反対する人にとっても都合がいいのかもしれないが、政治問題になることで私が一番危惧しているのは、本当に困っている人に必要な支援や対策にならないこと」と懸念を示した。

また、パチンコ・パチスロで問題を抱える人の実態として「パチンコをやった結果、借金をしたり生活の問題が発生しているのではなく、元々、社会の中で上手く生きていけない人が、パチンコをすることによってさらに問題が大きくなっているケースがほとんど。問題には個別性があり、画一的に効果が見込める対策はない」と説明した。

力武氏は、いまホール業界で取り組んでいる安心パチンコ・パチスロアドバイザーの役割について解説した上で「現場のスタッフがお客様の動向に気を配る。問題がありそうなお客様には声をかけて、RSNにつなげる。RSNは問題を精査し必要な機関につなげる。このスキームができれば、世界最高水準の依存問題対策になる。パチンコ依存はプロセス依存(ある行為をする過程で得られる興奮や刺激を求めてその行為に依存する)なので自然完治する割合が多い。RSNのポスターを見て我に返る瞬間が必要で、そういったきっかけづくりを、アドバイザーを含めてホールでやっていきたい」と述べた。

ういち氏は「依存症と言われる人は、おそらくパチンコやパチスロの仕組みを全く理解していない人が多いと思う。それゆえ勝率が下がり、金銭的な問題が生じやすくなっているのではないか。安心パチンコ・パチスロアドバイザーがパチンコ・パチスロの仕組みを教える役割も担えば、問題も起こりにくくなるのではないか」と持論を展開。また、今回の規則改正案が依存対策につながるかどうかについて「出玉が抑制されることでパチンコ・パチスロをやめてしまう人はいるかもしれないが、依存対策には効果が薄いのではないか」との見解を示した。

藤田氏は「河本先生の話でもあったが、ギャンブル依存がどういうものか、医学的にも全く明らかになっていない時点で対策を決めることに無理がある。ギャンブル依存症の名称や定義も含め、そうした研究などに業界がもっと積極的に関わっていってもいいのではないか」と提言。

最後に中村施設長が「私たちよりも、ホール従業員の方がのめり込みの現状を最も知っているのではないか。対策を考える時には、ホールの方は受け身にならず積極的に関わってもらいたい」とホール関係者に呼びかけた。


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日本の実態に沿った
  基準が必要 (河本氏)
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2014年に厚生労働省研究班が、ギャンブル依存症の疑いがある人が536万人という調査結果を公表した。昨年、本格的調査の予備調査を大都市圏で行った結果、生涯を通じてギャンブルに依存していたことがある疑いのある人が270万人、直近一年に限ると60万人という結果が今年3月に示された。

2度目の調査に携わった河本氏は「この調査ではSOGSというアメリカで開発されたスクリーニングテストが採用された。SOGSの質問は、『お金の問題がどれだけあったか』に比重が置かれている。つまり、20項目のうち5項目以上でギャンブル依存症の疑いがあると判断された場合、お金の問題、貸し借りの問題が過大に評価されるので、過剰診断になってしまう可能性がある」と説明。実態をより正しく把握するためには、日本の文化的背景やパチンコ・パチスロ遊技者の実態に沿った基準が必要だと強調した。

なお、近々発表される日工組社会安全研究財団の全国調査では、業界内外の専門家が数年間かけて作成した「パチンコ・パチスロ遊技障害尺度(PPDS)」を採用したという。