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2017年08月17日
No.10000262

業績を上げる社内コミュニケーション
ホール企業でありがちな「3つの誤解」

業績を上げる社内コミュニケーション
フェイス総合研究所 上席執行役員 針生英貴氏

個人個人の従業員の仲が深まったとしても、それで「社内コミュニケーション」が高まったと言えるのだろうか。業績の向上につなげるためには、社内のどんな部署間で、どんな意思疎通を図るべきなのか。ホール企業にコミュニケーション力を高める研修を行っている、フェイス総合研究所の針生英貴氏に解説してもらった。


私はホール企業に勤め、その後ホール企業の人材育成・業績向上の支援をしてきました。その20年間の経験から「社内コミュニケーションに対して『誤解』が増えている」と感じます。

企業に所属する方の多くが「コミュニケーションは大事である」ことを「知っている」にも関わらず、「コミュニケーションが取れていない状況」にあります。そしてそのことが「業績に大きな影響を及ぼしている」ことに気づいていない状況も多く見受けられます。

「そもそも『コミュニケーション』は日本語で言うと何でしょうか?」
こうした質問を研修や講演などの機会に参加者の方に投げかけると、多くの方が答えられないか、「会話することですか?」など、曖昧な回答になります。

誤解の1つ目は、「コミュニケーション」そのものが何かを理解していない点です。結論から申し上げると、「コミュニケーション」とは「意思の疎通」です。「意思の疎通」をもう少し噛み砕くと、「互いの考え、想いを伝え、互いの理解が高まり、認識が共有されること」です。「社内のコミュニケーション」に当てはめると、「社内の意思疎通」と言えます。

誤解の2つ目は「個人の都合を理解しあうこと」(悪い言い方をすれば、「仲良くなること」)と思っている方が少なくないということです。「社内コミュニケーション」である以上、「企業の目的・目標に基づく意思疎通」のはずです。相互理解は人間関係を築く上での「必要条件」ではありますが、「十分条件」ではありません。

ホール企業においては、「店舗内」「店舗間」という現場レベルの意思疎通から、「部署間」、「経営者と経営幹部」の意思疎通など様々なレベルがありますが、とりわけ重要なのが、「経営者と経営幹部」、「店舗内」であると思います。


「コミュニケーション」不全はどんな問題を引き起こすか

「コミュニケーション」は人間の血液・神経にも例えられます。人間の体内で血液や神経の巡りが悪くなると大病につながってしまうように、社内の意思疎通が図られないと、企業に深刻な影響を及ぼします。一言で言うと、会社の方針・やるべきことが実行されず、「組織の機能低下(停止)」に陥ります。

例えば、「現状」に対する認識が共有されていないとしましょう。経営者が「このままではいけない」と思っているにも関わらず、現場では「これまでの延長で大丈夫」と思ってしまっていると、あらゆることが「すれ違い」になってしまいます。

経営者は「なぜ、変わらないのか?」と疑問を持ち、従業員は「なぜ、変わらないといけないのか?」と疑問を持ちます。双方が主張だけすると、「信用」「信頼」の低下につながります。こういう状態になってしまうと、何事も経営者からのトップダウンになりがちです。しかし、指示の背景が理解されていないので、上司の指示した内容の実行度合いが低下してしまうのです。

さらに部下も「受身」になり、上司への「報告」や「提案」が減少します。互いに「言っても、わかってもらえない」となれば、コミュニケーションがますます低下し、最終的には、社内に「受身体質」「面従腹背」「やらされ」「しらけ」などが起き、顧客へのサービスは低下し、業績に深刻な影響を与えてしまいます。

誤解の3つ目は、コミュニケーションを軽視していること。以前は機械やイベントによってトップダウンで業績を上げることができましたが、選択肢が限られた現在、トップダウン以外のコミュニケーションも業績に大きく結びつくのです。


社内コミュニケーションの成果を高める効果的な手法

社内コミュニケーションを高めるためには、「どのような部署間」で、どのような意思疎通を深めるべきなのかを理解しておくことです。とりわけ重要なのは「経営者と経営幹部」そして、「店長を中心とした店舗メンバー」での共有です。

経営者と経営幹部におけるコミュニケーションにおいて必要なテーマは「企業の目的・目標・価値観」についてです。特に意義のある話し合いは企業の「経営理念」など、企業の目的や目標、価値観を共有していくことです。

経営者の思考・視点は普段のコミュニケーションでは埋まりにくいのですが、このような取り組みで、経営幹部の思考・視点が変わり、経営者にとって、経営幹部とのコミュニケーションにおけるストレスが減ります。その他の手法として「1対1の食事」、「社長塾」、「経営計画の策定やそれに伴う合宿」など、「ずれていく」ことを前提に、常に「意思の疎通」を図っていくことが重要です。

一方、店舗内では、意思疎通に向けたプロセスにおいて「オープンな雰囲気」をつくり、「目的・目標達成に向けたコミュニケーション」を取ることが有効です。

弊社で行った研修を振り返ってみると、「チーム・ブリーズ(風研修)」を通じて、店舗の課題についてオープンに話し合うと、お店を良くするための100以上の意見が表面化し、そしてほぼ全ての参加者が、コミュニケーションが足りていなかったことに気づきます。その結果、研修後に「お店をもっと良くしよう」という機運が生まれます。

その他、店舗内でのコミュニケーションでは以下の点がポイントになります。
① 業務連絡・事務連絡より、考え方や想いの共有、新しい知見を共有すること。
② メールやLINEより、対面のコミュニケーションを定期的に開催し、対話すること。
③ 社内だけの情報ではなく、社外の情報を探索し店舗に持ち帰ることなどが有効です。

社内コミュニケーションを高めることは、「目的・目標達成に向けた貢献に集中すること」と言えます。さらには、その貢献に集中したもの同士の間に信頼関係が築けます。ぜひ、お店づくり、企業づくりの参考にしていただければ幸いです。





はりう・ひでき

1998年株式会社マルハン入社。2001年同社関連会社に出向。組織人事コンサルタントとして、マルハン成長期を支えたノウハウを体系化し、外部法人向けにサービスを提供。2003年株式会社フェイスグループ設立と共に、創業メンバーとして入社。以後13年に渡りアミューズメント業界を中心に、数万人を超える受講者へ研修を実施。「顧客の創造」につながるコンサルティングを通して、「一社一社、一人一人の可能性を開花させる」が信条。