No.10000447
創和アーキテクツ
お客様の想いをカタチにしたい
時代の変化に応じた改革で人の心を動かす施設を創る
創和アーキテクツの公式サイトで「企業情報」を開くと、「お客様の想いをカタチにする」「創りたいのは、人が集まりたくなる場所」というコピーが目に飛び込んでくる。ARROWの屋号でホールを展開する平川商事(本社/大阪府八尾市)に依頼され設計したホールと子供向けレジャー施設を事例に、この二つの企業理念がどう具現化されているかを髙田淳一郎所長に伺った。
髙田淳一郎所長は、父・髙田保氏が社長を務める創和設計で長年、設計の仕事に従事。2012年、新たに設立された創和アーキテクツの所長に就任した。
「僕のルーツは仕事を学んだ創和設計。また、自分の力で漕ぎ出していく”新しい船“という意識のもと、現代風の響きがある創和アーキテクツにしました」。この社名には、「今まで蓄積した設計のノウハウを大切にしつつ、時代の変化に応じた新しい会社経営をしたい」という髙田淳一郎所長の決意が込められている。
厳しい景観条例を発想の転換で
クリアした店舗『ARROW大東店』
「お客様の想いをカタチにする」とは具体的にどういうことだろう。「設計やデザインがいかに優れていても、お客様の意向や要望に沿わない建築は自分たちが目指すところではない」と髙田所長は言う。もちろん、クライアントの要望には無理難題もある。景観条例などの法律の制約で希望に沿えないことも多い。しかし、こうしたことを理由に、「できない」と決めつけるのではなく、問題点と真摯に向き合い、諦めないというのが髙田所長の信念であり同社の企業理念だ。
『ARROW大東店』(大阪府大東市)は、設置台数960台(パチンコ640台・パチスロ320台)の大型店舗で2015年にグランドオープンした。外観は、平川商事のコーポレートカラーである深紅とバラをモチーフにというのが、オーナーの希望だった。
「厳しい景観条例が設けられているエリアで、そのままでは認可が下りません。そこで、建物駐車場の壁を深紅に塗装した上で、外側に格子状の白いルーバーを施すことで、外壁に占める深紅の割合を規制の範囲内に収めることができました」
夜はLED照明を当て、ルーバー部の透かし彫りになったバラがレインボーカラーに光る。
「角度によって白にも深紅にも見え、表情が変わります。施主様にはたいへん喜んでいただきました」
また、限られたスペースで最大の駐車スペースを確保するために、2つの立体駐車場を橋で繋ぐことにも挑戦した。このような構造は、大阪府では前例がなかったが、既製品である認定駐車場の法的要件を細かに読み込み、当局と交渉することで橋で繋いだ駐車場の認可を得た。
こうした工夫は、法律の規制があるからとすぐ諦めていたら実現していない。「お客様の想いをカタチにしたい」という情熱と、プロフェッショナルな創造集団であるという自負が、不可能を可能にしたと言える。
「私たちが手掛ける物件は“作品”ではありません。自分たちはアーティストではなく、建築のプロ。だからこそ、お客様の想いに耳を傾け、実現のために最大限の努力をすることが大切だと思います」
最近は、様々な店舗のリノベーションの仕事も多い。「低予算でもガラリとイメージを変えることがテーマの一つ。自分がユーザーでもその方が行く気になりますからね。例えば、ファサード。低予算ならば、基本構造や建材はそのままに、塗装と照明でまったく違う印象にする。手間はかかっても、いかに質の高い表現にするかがセンスの見せ所だと思います」
また、遊技コーナーをきれいでゆとりある空間にリノベーションしつつ、増台もして欲しいという相反する希望が出ることもある。「私たちが試される瞬間ですから、臆することなく少しでも希望に近づけるよう考えます。難しいほどワクワクして(笑)、やりがいもある仕事です」
大人も子供も集まりたくなる
遊び場を創る『奈良わんぱくランドはしゃきっズ』
平川商事が運営する『奈良健康ランド』(奈良県天理市。1987年開業)は、温泉・岩盤浴・室内プールなどからなる温浴施設。健康ランドとしての知名度は高く、Wikipediaで「健康ランド」と検索すると『奈良健康ランド』の写真がトップに表示されるほどだ。
この施設の隣に2017年夏、屋内巨大エア遊具テーマパーク『奈良わんぱくランドはしゃきっズ』がオープン。併せて健康ランドのファサードなども全面改装した。両施設ともに手掛けたのは創和アーキテクツだ。
「小さいお子さんはお風呂だけでは飽きてしまいますからね。今回のわんぱくランドも、お子さんを含めたファミリー層にもっと楽しんでいただき、利用客の増加を図って行こうというのが狙いです」
約1000㎡の広大な施設には、全長9mの巨大スライダーをはじめ、埋もれるほど大量のボールを使ったボールプールなどの遊具が数多く設置されている。
また、チームラボの「小人が住まう黒板」は巨大なデジタルディスプレイの中を小人が歩き回っている知育モニター作品。子供たちが、小人やシャボン玉にタッチすると、ディスプレイ内の世界がどんどん変わっていくというものだ。
施設内には、子供の探究心や好奇心をくすぐるこうした仕掛けがたくさんある。コンセプトは、「いつもは親子、ここでは友達」。親子が一緒になって楽しめるレジャー施設に、オープンから3日間で数千人の入館者があったという。
設計にあたって髙田所長が留意したのは、デザインだけではない。オープン後の営業をスムーズに行うために、来場者の利便性を確保した上で料金支払いのチェック洩れが発生しないような動線を考えた。両施設を繋ぐ渡り廊下をつくり、移動の際は必ず受付の前を通る構造にし、料金未徴収を防ぐようにした。
健康ランド本体は30年前の建物で、今回そのまま増築をすると、異用途や既存遡及(現代の法律通りに設備を刷新すること)などの課題があり、認可を受けることが大変困難だった。そこで「渡り廊下」で2つの建物を繋ぎ、災害など有事に配慮をした設計をしたところ無事認可され、必要最小限のコストで建築できた。
株式会社創和アーキテクツ
www.sowa-architects.jp
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*詳しくは月刊アミューズメントジャパン1月号特集「他業種経営への挑戦」をご覧ください。