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2017年12月28日
No.10000452

玉岡設計
他業種で十分な収益を挙げる方法
全国のスーパー銭湯の3分の1を手がけた設計会社が教える

プロカメラマンならぬ、「風呂カメラマン」を自称する佐藤専務。プロ並の機材を揃え、全国の温泉施設を撮影。スーパー銭湯のオーナーなどと作品をブログに投稿し合い、交流を深めたことも

「PからSの時代へ」。こう提言するのは玉岡設計の佐藤満専務取締役。Pはパチンコ、Sはスーパー銭湯の略だ。度重なる出玉性能の基準変更がファン人口のさらなる減少を呼び、ホールのM&Aや廃業が増えている。「新規出店するなら他業種で」と舵を切り始めたホール企業も多い。中でも、スーパー銭湯は投資回収も早く安定経営が望める有望株だ。


2017年11月22日、博多駅から車で30分ほどの郊外に温浴施設『ふくの湯 花畑店』がオープンした。露天風呂を含む施設の広さは820坪。大浴場、岩盤浴、ボディケア、エステ、レストランなどが揃ったスーパー銭湯だ。

設計は、玉岡設計(名古屋市)。全国に700軒ほどあるスーパー銭湯のうち3分の1近くにあたる200軒以上を手掛けた温浴施設特化型の設計会社だ。一級建築士の佐藤満専務取締役は、「自分が手掛けたスーパー銭湯は12年間で約100軒ありますが、まだ1軒も廃業していません」とスーパー銭湯の安定経営ぶりを語る。

『ふくの湯 花畑店』の経営は、佐々木グループの佐々木食品工業(本社/大分県豊後高田市)。同グループのチアエンタープライズは、『サミット』の屋号で店舗展開するホール企業だ。

『ふくの湯』は、すでに6軒目。18年の秋、福岡県内に7店舗目の出店が決定済み、同店も玉岡設計が手掛ける。さらに九州全域にドミナント出店を広げていく計画だ。

「一般的に、ホールの場合繁盛店でもオープン後は毎年10%ずつ収益が落ちていくのに比べて、スーパー銭湯は安定して収益を伸ばしていくことも可能です」(佐藤専務)。

玉岡設計の施工例 露天風呂

玉岡設計の施工例 露天風呂


公衆浴場法および各都道府県の公衆浴場条例で、スーパー銭湯は「その他の公衆浴場」に分類され、利用料金は物価統制令の制約を受けずに自由に設定できる。

「パチンコのように広告の規制を受けず、イベントもいくらでも開催できます。パチンコは出すと告知すれば行政に叱られますし、出さないとお客様に叱られてしまう(笑)。スーパー銭湯は、多くの利用客に”楽しかった、疲れが取れた“と感謝してもらえる。こうした事業としてのやりがいも魅力です」

出店には、どれくらいの資金が必要なのだろう。規模にもよるが、一昔前は5億円程度と言われていた。現在は「第三世代のスーパー銭湯」と呼ばれ、岩盤浴やボディケア、長時間滞在するためのリクライナー付きレストコーナーなどの設備が標準となり、500~700坪で10億〜15億円、1000坪なら20億円程度かかる。

玉岡設計の施工例 岩盤浴

玉岡設計の施工例 岩盤浴


資金回収目標は約8年。条件次第だが、一般的にホールの新規出店よりも資金回収が早いという。
佐藤専務は長年の経験から、次のようなビジネスモデルが考えられると話す。ある企業が経営する3店舗のスーパー銭湯の年間利用者は、合計150万人。入浴料金は600円、岩盤浴を含めた利用料金は1200円。3分の1の50万人が岩盤浴を利用するので、1店舗当たりの年間売上げは、[(600円×100万人+1200円×50万人)÷3]゠4億円となる。このほか、飲食店や、1回あたり数千円~1万数千円のボディケア、売店などの売上げなどが加わる。

もちろん、こちらは繁盛店の一例だが、500坪の店舗ならば商圏半径5㎞で10万人、1000坪の店舗ならば商圏半径10㎞で10万人の商圏人口があれば、安定した営業ができるという。

「スーパー銭湯の7割はリピーター。この層をいかに増やしていくかが経営のポイントの一つとなります」

売上げが増えても営業経費がかさんでは、資金回収に時間がかかる。チェーンストア理論や人件費の徹底的な抑制といったホールの経営手法が、スーパー銭湯の経営でも効果的だ。

「基本は、お客様に全部セルフでやっていただくということです。お風呂と言うと旅館のように女将の出迎え・見送りが最高のおもてなしというイメージがあります。でも、誰もが気軽に来て、手頃な値段で入浴、満足して帰るのがスーパー銭湯。日常使いの温浴施設ですから、セルフでも利用客は不満を抱きませんし、過剰なおもてなしは逆に嫌われます」

メンテナンスに手間をかけない設計にすることも重要だ。例えば湯船の形状は、角がなく丸みのあるものに。「角があるとどうしても汚れが付きやすくなりますからね、ゴシゴシと力を入れて洗わなければならず時間がかかります。細かなところですが、こういう小さな積み重ねが人件費の抑制に大きく貢献します」

繁盛するスーパー銭湯をつくるためには、さらにいろいろなノウハウがある。その一つはエリアの「銭湯文化」に応じた設計を考えることだ。

玉岡設計の施工例 癒しの空間

玉岡設計の施工例 癒しの空間


「東京は、富士山の風景画を背に、みんな同じ方向を向いて黙ってお風呂に入ります。大阪は丸い湯船に向かい合って、おしゃべりをしながら入る。こういうエリア特性を考慮せずに設計すると、リピーターを増やしていくのは難しいと思います」

佐藤専務は、もう一つ意外な話をしてくれた。10年先を見据えた設計を”仕込んでおくこと“が、安定経営には非常に大切だという。

「例えば、受付カウンターの高さ。10年後には高齢者の割合がもっと増えますから、それを見据えて数㎝低めに設定しておいた方が、来店客もスタッフも利用しやすい。こうした将来を見越した工夫が、長年地域の人に親しまれるスーパー銭湯づくりに繋がっていくと思います」

玉岡設計の施工例 癒しの空間


佐藤専務は、仕事を通し名古屋の経済界でトップクラスの人や全国的に著名な温浴施設のオーナーなどとも親交がある。また、地元のテレビ愛知の温泉特集にスーパー銭湯の”伝説の仕掛け人“として出演するなど、その名を知られている。

「台湾の財閥の依頼で現地に温浴施設をつくったり、イタリアやドイツの温泉施設に視察に行き、その国のオーソリティと対談の機会を得たこともあります」

こうした交流を通して得られた人脈や知識は、新たなスーパー銭湯づくりにフィードバックされていく。

「2017年にアメリカの3人の科学者が体内時計に関する研究でノーベル賞を受賞しました。この理論に基づき、代謝や睡眠、行動などを改善する岩盤浴もつくらせていただきました。また、原点回帰をテーマにした第4世代のスーパー銭湯づくりにも挑戦しています。どのスーパー銭湯も設計やデザインは、人が利用してはじめて完結します。どんな施設をつくる場合も、このことは忘れないようにしたいと思います」


玉岡設計 
〒460-0007 名古屋市中区新栄1丁目39番21号
TEL.052-261-7626(代表)
office@tamaoka-sekkei.co.jp

*詳しくは月刊アミューズメントジャパン1月号特集「他業種経営への挑戦」をご覧ください。