2018年08月13日
No.10000768
No.10000768
若手社員、どう育てる!?
新時代のマネジメントを探る
「仕事はソコソコに、プライベートを充実させたい」。こう考える若手社員が増えているようだ。日本生産性本部が今年の新入社員1644人を対象にした「働くことの意識調査」によると、「人並みの働きで十分」「好んで苦労することはない」と答えた割合が過去最高を更新した。こうした若手社員をどう育成して戦力化していけばいいのだろうか。
今春の新入社員に「人並み以上に働きたいか」を尋ねたところ、「人並みで十分」が前年の57.6%から61.6%と初めて6割を超えた。「人並み以上に働きたい」は34.9%から31.3%へと減少。両者の差は約2倍近くになった。
「若いうちは進んで苦労すべきか」という質問には、「好んで苦労することはない」が前年の29.3%から34.1%に増加。これも過去最高となった。「デートの約束があった時、残業を命じられたらどうするか」に対して「残業を断ってデートをする」と答えたのは30.9%と「デート派」の割合は7年連続で増加。
この他、「仕事」中心か「私生活」中心かなどを尋ねた他の質問にも、プライベートを重視する傾向が見られた。また、「どのポストまで昇進したいか」では「社長」が過去最低となった一方、「主任・班長」が過去最高となった。
つまり、人並み以上に仕事に注力し、将来は出世したいと考えるより、仕事はソコソコでプライベートを充実したいと考える若手の割合が年々増えているということ。こうした傾向はホール企業にも当てはまるようだ。
「店長や役職者になりたくない人は年々増えてきている」(関西・人事部長)
「休日はもちろん、有給休暇も当たり前のように取得する。自分が若い頃は考えられなかったこと」(北陸・人事部長)
ただし、こうした時代の変化を嘆いても仕方がない。健康経営や働き方改革を提唱する健康経営研究会の岡田邦夫理事長はこう指摘する。
「仕事よりプライベートを充実させたいと考える学生が、未曾有の人手不足で売り手市場のなか、わざわざ残業が多い会社を選ぶとは思えません。企業はこうした若い人たちの意識を理解し、どのように働いてもらったら喜んでもらえるか、やりがいを感じてもらえるかを考えなくてはならない。そういったマネジメントをしていかなくては、人材が確保できない時代になったのです」
では、どのようなマネジメントをするべきなのか。例えば、ダイナムでは残業を減らす仕組みを整備し、2017年度は全社員の残業時間が月平均3・9時間と大幅に減少した。長時間労働を減らすことは、プライベートを充実させたい若手社員の意向に沿った制度だが、それだけでなく、店舗レベルでのマネジメントも各店舗で工夫をしている。
『ダイナム栃木小山喜沢店』の碇真也ストアマネジャーは「確かに昇進して責任あるポストにつきたいという新入社員は年々減っているが、それは理想の上司がいないからではないか」と分析する。
「若い頃は、店長になれば責任は増えるが、良い車に乗れる、店舗を切り盛りできるといった店長のステイタスや裁量に憧れを抱いていました。今の若者はそうしたことに憧れを持たなくなっている。心がけているのは、店長はキツいだけの職位ではないんだということを意識的に伝えること。家族との写真を見せ、プライベートでも楽しんでいる側面を出すようにしています」
また、若手社員とのマネジメントについても「信頼関係を作ること」がより重要だと碇ストアマネジャーは言う。
「例えば、SNSが好きだったらコメントをしたり、『いいね』を押したり。映画が趣味だったら、その社員が好みそうな映画を見て共通の話題を作ったりして、仕事以外のコミュニケーションを増やすようにしています。そうすると、仕事上のコミュニケーションもスムーズになります。仕事の能力的には、むしろ若い社員の方が良い部分もありますから、まずは職場が楽しいと感じてもらうようにすることが必要です」
前出の岡田理事長は次のように指摘する。
「仕事の期限と目的をはっきり定めることが重要。期限やゴールがない仕事はより疲労感が強くなる。若い人は『プライベートを充実させたい』と考える一方、人のために働きたい、役に立ちたいと考える人も多いので、会社の提供価値をかみ砕いて伝える。短期的な仕事であれば、期日や期待する成果を伝える。そんなマネジメントをしていくとやりがいが生まれ、生産性も高まっていくと思います」