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2018年12月26日
No.10000967

INTERVIEW
若手建築家が描くIRとアミューズメント施設の未来
NRC一級建築士事務所 鶴田 一 主宰

若手建築家が描くIRとアミューズメント施設の未来

これまでのように、遊技機パワーだけで集客する時代は終わった。店内の居住性や接客、外観など店舗のトータルクオリティが求められる。『AQUA月島』で海外建築賞を受賞したNRC一級建築士事務所の鶴田一氏に、集客するためのホールづくりについて聞いた。


──今年、『AQUA月島』が海外で建築賞を受賞しました。これまでも国内外で建築賞を受賞されていますが、それによって何か変化はありますか?
鶴田 やはり、国外への影響があるようです。海外のクライアント様からの依頼が増えました。業界や国境を超えたデザイナー同士のつながりも構築できていると思います。国内では、今までとは違ったアミューズメント施設を希望されるオーナー様から問い合わせをいただけるようになりました。

──今回は、企業同士がプロジェクトチームを組んだとのことですが、その経緯を教えてください。
鶴田 まず、島設備などを納入した京楽様が全体の取りまとめを行いました。TKビルド様は設計から施工までを手掛ける「建築家集団」として数多くの実績があり、『AQUA月島』では建築設計・施工を、私どもはデザイン・設計を担当しました。最近では企業の強みを出し合い、アライアンスを組んでプロジェクトを進めていくことが一般的になっています。今回も強みを出せる人選を進めるなか、必然的にこのチームが結成され、コンペに勝ち残りました。

──御社の強みを教えてください。
鶴田 アミューズメントという枠や、流行にとらわれず、建設地の条件や施主様の要望を加味した上で、コンセプト重視の設計を行っています。それに加え、一つのプロジェクトに関わる各分野の業者様との関係性を確立し、組織体系や決定事項の伝達経路を構築します。一つのチームとして効率的に機能するよう、プロジェクト全体のイメージ共有化を図り、報連相がスムーズに行えるシステムをつくるのも設計の役割と考えています。それが施主様の意向を忠実にカタチにすることにつながります。急な変更にも対応でき、コストの無駄も省けます。

──良いデザインの定義とは?
鶴田 最終的な目的は、やはり繁盛する店舗をデザインし、オーナー様に利益が還元されていくことです。繁盛する店舗の定義はそれぞれの土地柄や人柄、企業様のキャラクターなど、多くの要素を熟考していく必要があります。初回提案前は計画地の歴史や、地域性、競合店の状況などを精査していく作業にほとんどの労力をかけることが私どもの特徴だと思います。建物の形状、使う素材、色など全てを、それらのリサーチで作られたコンセプトに基づいて決定していきます。なぜこの形状なのか、なぜこの素材なのかといったデザインプロセスにおいて、コンセプトが力強ければ自然に解決していきます。逆に言うと、デザインを見てそこにあるコンセプトが力強く表現されていることが海外賞レースで勝ち残る要因でもあり、良いデザインの定義と考えています。

2016年 海外建築賞受賞 天国 朝生田店(愛媛県松山市

2018年 海外建築賞受賞 AQUA(東京都中央区)

──今後のパチンコ業界にとって建築デザインに必要な要素とは?
鶴田 今、様々な業界で、従来の常識や価値観が変わっています。アミューズメントというジャンルの中だけでデザインを行うのではなく、根本的な部分からボーダーレスでデザインしていくことが、新たな層を獲得していく突破口になるのではないかと考えています。

──IRに関して建築学、都市計画学の観点から研究されていますが、今後IRがパチンコホールに及ぼす影響はどういったものが考えられるでしょうか?
鶴田 IRにおいてはカジノという言葉が一人歩きして、依存症や治安悪化に関する事だけが議論されていますが、実質的には、国際会議場やショッピングセンター、ホテル等でIRの大半は構成され、近隣エリアにどのような影響を及ぼすかが重要な要素となってきます。大型の施設が近隣の既存商業施設を弱体化させず、また国内全域にいかに経済効果を波及させることができるかがIRにおける都市計画、観光産業の研究テーマで、シンガポールの国策や歴史と比較しながら研究を行っています。また、日本のアミューズメント施設は海外カジノよりも長い歴史があり、そこで育まれてきた設計手法を日本のカジノ施設においても大いに活用できると考えています。このような日本式のIRができ、既存のアミューズメント施設がボーダーレス化すれば、両者がシナジー効果を生み出し、共に発展していけるでしょう。




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