コラム

コラム内を

2020年09月15日
No.10001919

ネクステリア代表取締役 森本耕司
生涯利益よりも目先の利益を重視する?
ここが変だよ、パチンコ業界②

ホール業界はどの業界にもない特徴を持っている。それは、「価格を客に開示せずにサービスを提供すること」だ。例えば、八百屋なら「トマト1パック200円」と価格を明示して販売しているが、ホールは遊技料金以外には、粗利率や設定などを明らかにしない。

「遊技の提供」というサービスに対する価格を本当は見せていない。したがって、いつでも実質的な値上げができ、利益を簡単に取得することができる。売上目標より利益目標の方が容易に達成できる所以だ。

利益を優先すると、長期的にみれば来店客が間違いなく減る。つまり、目先の利益ばかり考えると、生涯利益は減ってしまうのだ。「わかってはいるが、なかなかできない」という声が聞こえてくる。しかし、よく考えていただきたい。他の業界では簡単に値上げはしない。安易に値上げをすると、店はすぐに閑古鳥が鳴き、潰れてしまうからだ。

よく知られたランチェスター戦略では、次のような法則を導き出している。それは、「市場でシェアを上げれば上げるほど利益が向上する」ということだ。ランチェスター戦略では、KPI(重要業績評価指数)を設けている。何を向上させれば利益が上がるのかを知るために考えられた指標がKPIだ。この指数を元に「利益向上に必要なことはシェアを上げること」だという法則が実証された。

ホール業界の市場規模は年々下降しているが、その傾斜は緩やかだ。規模にあまり変化がない市場では、ライバル店と客の奪い合いをすることになる。したがって、1番のシェアを持つと利益も1番多くなるし、シェアが2番ならば、利益も2番になる。

他にも、目先の利益に目がくらんでしまう事例がある。例えば、中古価格で300万円の値がついた人気台を売却すること。お客様を大事にするならば、なぜ人気のない台から撤去しないのだろうか。「売却益をお客様のために有効利用した」と言うホール関係者もいるだろう。しかし、肝心の機種ラインナップの質が落ちて喜ぶ人はいない。商売で一番大切なことは品質であって価格ではないということをあらためて考えてみるべきだろう。

まだまだ目先の利益を取りに行って、生涯利益を失っている事例は多くある。一度社内でチェックしてみてほしい。

新型コロナウイルスが商売に大きな影響を与えている状況では、値上げは仕方がない側面もある。しかし、ライバルに比べて値上げをし過ぎて生涯利益を失うようなことは、絶対に避けるべきだ。

本気で「100年企業」を作りたいのなら、客を増やして生涯利益を獲得するのが商売の王道だ。「お客様が増えた結果として、利益が後からついてくる」という思考をしないと長寿企業にはなれない。

このことが簡単ではないことは重々承知だが、ホール業界は「大競争時代」に突入している。勝ち上がっていくためには、「ライバルができないことの実践」が一層重要になる。厳しい話ばかりになってしまったが、皆様のホールが末長く発展し、そこで働く人や家族の方々の幸せを願うからであることをご理解いただければ幸いです。

このコラムは、ピンチの中にチャンスを見い出し、戦略を実践しシェアの向上を目指すホールの皆様への応援メッセージです。今、何をすべきかをぜひ考えていただき、一つひとつを着実に実践されることを祈っております。


もりもと・こうじ 地域1番店を作る戦略家。パチンコ業界の膨大なデータから業績を上げる8つの法則を発見。現在累計で54店舗の地域1番店を作ってきた実績を持つ。「成果と地域1番店にこだわり、本質を突く」という理念のもと行う研修が人気だ。日本最大のマーケティングポータルサイト「マーケター通信」では常にTOP10に入る人気コラムを執筆。パチンコ業界だけでなく、各方面からの呼び声も高い。過去に、2つの会社のIPO(上場公開)に深く関わった経歴を持つ。

※このコラムは月刊アミューズメントジャパン9月号(8月20日発行)に掲載されたものです。