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2020年09月16日
No.10001920

ネクステリア代表取締役 森本耕司
頭取りデータの本当の目的を忘れていませんか?
ここが変だよ、パチンコ業界③

頭取りデータの本当の目的を忘れていませんか?

パチンコ業界では何十年も前から、頭取りという形でライバル店の客数調査を行い、シェアを管理してきた。どの業界よりも早くからシェアを意識していた業界だ。

というのも、他の業界では簡単にライバルの売上げを知る術(すべ)がないからだ。上場している企業であれば、ある程度情報開示はされるが、非上場の企業の売上げは知ることができない。調査会社に依頼して本当に正しいかどうかわからない情報でシェア管理をしている場合も多い。

パチンコ業界では、頭取りをしてライバル店の稼働状況を知ることで、ある程度正確なシェアを簡単に導き出すことができる。しかし、あまりにも簡単にシェアがわかってしまうので、頭取り自体が目的になってしまっているホールも多い。何十年と続けてきた調査である故にルーティンとなってしまい、シェア本来の活用法を忘れてしまったかのように見える。

ライバル店の客数をシステムやEXCELに入力して、「今日の勝ち負け」を知るだけで満足してはいないだろうか。しかし、シェアの本来の活用法は、その数値を見て「これから何を実行するのか」を考えることだ。頭取りデータはライバル店と自店を比較する唯一のもの。そして、ライバル店と比較して戦略を立てるために活用しなければならない。

予算には限りがある。その限りある予算を何に一点集中するのかを決めることを戦略と呼ぶ。「パチンコの4円貸しは業績を伸ばすために予算を多く投入するが、パチスロの20円貸しは現状維持で良いのであまり予算をかけない」といった具合に、限りある予算で攻めと守りの戦略を実践するべきだ。

さらに、「甘デジやミドルなど、どのタイプで業績を伸ばすか」や「ライバルとシェアや稼働率を比較して、何に投資するのが一番費用対効果があるのか」、そして「明日何を実行すればいいのか」を考える材料が頭取りによって得られたデータなのだ。

明日、実行すべき戦略とその効果の一例を挙げてみよう。自店が1つ上位の店舗より稼働率が高かったならば、ぜひ増台戦略を実行してほしい。ネクステリアのデータ分析では、この戦略を実行した93%もの店舗でシェアが上昇する法則がある。また、これは4円などの貸玉料金別の戦略だけでなく、ミドルなどのタイプ別戦略でも使えることを覚えておいてほしい。
今日の数字を見て一喜一憂するだけでは、本当にもったいない。「データを見て何を実行するのか、どのように業績を伸ばすのか」という戦略を、ぜひ組み立てていただきたいと思う。

「ここが変だよパチンコ業界」というテーマで連載コラムを書かせていただいたが、今回が最終回となる。パチンコ業界には、理不尽なルールがとても多い。その最たるものが必要以上に高く感じられる「業界価格」だが、最終的には一番大切にすべきパチンコユーザーに負担がかかり、ファン人口減少の一因となっている。こうした負の連鎖を断ち切り、コロナ禍で苦しんでいる業界が一日でも早く業績を回復するために、私は業界価格を無くす活動をしていきたいと思っています。


もりもと・こうじ 地域1番店を作る戦略家。パチンコ業界の膨大なデータから業績を上げる8つの法則を発見。現在累計で54店舗の地域1番店を作ってきた実績を持つ。「成果と地域1番店にこだわり、本質を突く」という理念のもと行う研修が人気だ。日本最大のマーケティングポータルサイト「マーケター通信」では常にTOP10に入る人気コラムを執筆。パチンコ業界だけでなく、各方面からの呼び声も高い。過去に、2つの会社のIPO(上場公開)に深く関わった経歴を持つ。