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2023年07月11日
No.10003649

景品交換所のリスク対策に「古物商特例」を
インボイス制度による納税額増加回避へ

景品交換所のリスク対策に「古物商特例」を

INTERVIEW 
株式会社ショシナビ
皆川裕介さん


10月から始まるインボイス制度により、今のままでは景品交換所の消費税納税額が大幅に増加することが見込まれている。その対策として注目を集めているのが「古物商特例」という制度だ。5月に開催したオンラインセミナーが大きな反響を呼んだ株式会社ショシナビの皆川裕介さんに、古物商特例について聞いた。 [文中敬称略]

──インボイス制度に向けた対策で、ショシナビへの問い合わせが増えているそうですね。
皆川 今年に入ってから問い合わせが増えてきて、4月ごろから実際に申請するケースが増えてきています。4月に申請した案件については、現時点ですでに古物商営業の許可が交付されてきている状況です。

──そうした中、5月にホール業界に詳しい税理士と共同でオンラインセミナーを開催されました。反響はありましたか?
皆川 景品交換所の方だけでなく、多くのパチンコ業界の関係者様にもご視聴いただき、セミナー後に許可申請を進めている事業者様も出てきています。また、ホール経営者の方や卸問屋さんが情報収集をして、景品交換所の事業者様にお伝えいただいているケースもあるようです。

パチンコの賞品も古物商特例の対象となるか

──そもそも古物商特例とはどういうものですか?
皆川 パチンコの景品交換所と同様に、インボイス登録番号を持たない一般消費者から商品の買い付けを行うリサイクル事業者(=古物商)を救済する制度です。インボイス制度開始後は、商品を仕入れる際に支払った消費税を納税時に控除してもらうために、適格請求書(インボイス)と呼ばれる登録番号付きのエビデンス書類を保存しておくことが必要になります。一般消費者から商品の買い付けを行う古物商は、この適格請求書を取得することができないため、救済措置として「古物台帳」と呼ばれる帳簿を付けることで、特別に消費税控除が認められます。

──パチンコの賞品も古物商特例の対象になるのですか?
皆川 そこがパチンコ業界の事業者の皆さまが心配されているところかと思います。この件について、パチンコ業界について言及したガイドラインは公表されていません。しかし、すでに国税庁の担当官が業界団体向けの勉強会に臨席されるなど、公式なガイドラインは公表されていないものの、パチンコの賞品に対しても古物商特例が適用される方針であることがほぼ既定路線であると、私たちは読み解いています。それを裏付けるように、本来、税金に関するテーマは管轄外である警察庁が、地金など本来は「古物営業法では古物とされていないもの」についても古物商特例の対象になるといった文書を公表しているからです。警察庁が管轄外の税金について公式文書を出すのは異例のことです。国税庁との間で話し合いが行われた上で、この文書が公表されていることは、ほぼ間違いないと考えています。

一般的な雑貨の買取を行う副業で許可を

──では、景品交換所はどのように古物商の許可を取得すればよいのでしょうか。
皆川 その点もガイドラインが示されていないため、皆さん困っているところだと思います。景品交換所のようにスペースが狭く、相手方の本人確認が容易に行えない構造の店舗では、古物商の許可取得が難しいという話は聞いたことがあると思います。しかし、当社では古物商の許可を1000件以上取り扱ってきた実績から、さまざまなリユース事業者様の事業形態を把握しています。その中の一形態で、パチンコの景品交換所に通じる事例が「お酒の中古買取店」です。

──どのような共通点がありますか?
皆川 実は「お酒」等の食品や飲料も、古物営業法上の古物にあたらない「古物に準ずるもの」と扱われています。近年、国産ウイスキーの値上がり等の背景から「中古酒類の買取専門店」といった事業も登場してきていますよね。この「お酒を専門に買い取る店舗」は、古物商として営業所を登録する義務がありません。通常の雑貨等を取り扱うリサイクルショップと、お酒専門の買取店の2店舗を経営する事業者は、雑貨等を取り扱うリサイクルショップのみを古物商の営業所として届出しています。「景品交換所」も同様に、パチンコの賞品のみを買い取るのであれば、景品交換所自体を古物商の営業所として届け出る必要はありません。一方で、景品交換所とは別に、一般的な雑貨の買い取りを行う副業を、別の事務所で始めることで、「古物商の許可」を取得することができます。

──具体的にはどのような副業ですか?
皆川 最近では一般の個人の方が、ご自宅を営業所としてメルカリなどをつかった副業で古物商の許可を取得するケースも増えています。古物商の営業所は、専用に新たな事務所を契約しなくても、法人であれば本社事務所、個人事業主の方であればご自宅などを拠点として登録することも十分検討の余地があります。

──仮に古物商の許可を取得したとして、古物商で求められる相手方の本人確認をできるのでしょうか。
皆川 この点についてまずお伝えしたいのは、パチンコの賞品は「古物営業法上の古物」には当たらないため、買い取りにあたって本人確認措置を行わなかったからといって、何ら処罰を受けることはないということです。あくまでも消費税申告のために「古物商特例」の適用を受けるため、自主的に台帳を記帳するという位置づけであることをご理解いただければと思います。

──では、パチンコの賞品の買い取りにあたり、どのような形式で台帳を付ければよいのでしょうか?
皆川 古物営業法では、税抜1万円未満の取引は本人確認が免除される対象とされています。さらに、国税庁への確認の結果として、「1つの遊技景品の買い取りが1取引という実務に基づいて帳簿を記載する」という記載がある文書も確認しています。この実務運用であれば、景品交換所としても既存の業務を大きく変更することなく台帳を付けることができるでしょう。

10月までの許可取得には8月中の申請を

──今後、国税庁などから景品交換所に関するガイドラインは出てくるのでしょうか。
皆川 もちろん国税庁から公式のガイドラインが出てくればご安心いただけるかと思いますが、5月のセミナーでご協力いただいた税理士の先生も、パチンコ業界に向けたガイドラインが出ることは期待しづらいという見解でした。ただ、インボイス制度には、3年間は消費税額の8割控除を認める経過措置もありますが、この経過措置を適用したとしても、納税額が増えるインパクトは非常に大きいものになります。古物商特例を適用することでこのような事業リスクに対策を打つことができますので、是非、古物商の許可の取得をご検討いただければと思います。

──古物商の許可取得には申請から取得までどの程度の期間が必要ですか?
皆川 通常は1カ月から2カ月程度です。10月のインボイス制度開始に間に合わせるためには、遅くとも8月には申請が必要となります。また、古物商の許可申請は、所轄の警察署ごとに地域特性があり、求められる書類や確認されるポイントが微妙に異なります。当社では、北海道から沖縄まで日本全国の古物商許可申請を手掛けています。全国に提携している行政書士の先生がいるため、出張費などをいただくことなく、全国の警察署との調整から申請代行までサポートできます。

──費用はどの程度必要ですか?
皆川 個人の場合、すべてお任せいただくプランでもサービス利用料の5万 2800円と、警察署に収める証紙代1万9000円との合計7万1800円(税込)。法人の場合はそれプラス法人加算オプションで8800円が必要です。役員数2人以上の場合は1人につき5830円加算されます。

──申請を依頼する場合はどうすればいいですか?
皆川 電話やメールでお問い合わせいただければ対応させていただきます。また、オンラインセミナーの見逃し配信を無料で公開しています。資料を見ていただきながら詳しく解説させていただいていますので、是非ご参考にしていただければと思います。インボイス制度が税額に与えるインパクトと比較すると、取得自体にかかる費用は大きくありませんので、インボイス制度が始まった後もきちんと消費税の全額控除ができるような体制を作っていただくことをお勧めします。

みながわ・ゆうすけ
株式会社ショシナビ 代表取締役
行政書士、日本証券アナリスト協会検定委員、日本行政書士連合会デジタル推進本部専門員。外資系コンサルティングファームを経て株式会社ショシナビを2020年に創業。これまでに1000件を超える古物商許可申請のサポートに従事。古物営業法に関しては法令だけでなく警察組織の内部通達や現場の運用にも精通している。



ショシナビ古物商の景品交換所専用サイトはコチラ
https://shoshi-navi.com/service/kobutsu/pachinko


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