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2017年12月06日
No.10000412

ギャンブル等依存問題
本当に必要な支援のあり方とは(1)

ギャンブル等依存問題への関心が高まる中で、これまで依存問題に関わってきた人たちは「本当に支援が必要な人に支援が届かなくなる」という危機感を抱いている。17年にわたって活動してきたギャンブルの問題がある人のケアセンター「ワンデーポート」に関わる人たちに、依存問題の現実を語ってもらった。〔文中敬称略〕

聞き手=野崎太祐(本誌



──中村さんは2000年にワンデーポートを設立されてから17年間、ギャンブルの問題を抱えた人を見てこられました。その間の変化をどう感じていますか?
中村 17年前にワンデーポートを作った頃は、依存症に詳しい精神科医の先生のところに利用者を連れて行って、先生からGAに行ってきなさいと言ってもらったり、人によっては薬を出してもらったりしていました。当時はワンデーポートでもGAに行くことをメインでやっていましたが、そのなかでGAに行って良くなる人とそうではない人がいることに気づいたり、精神科でうつ病と診断される利用者がいたりしました。そしてなんとなく、もともと依存とは違う問題があるのではないかと思い始めていた頃、発達障害という言葉が社会に出てきた。そこで、大人の発達障害を見てくれる病院でワンデーポートの利用者を診てもらったら発達障害と診断された。その利用者は依存症に詳しい精神科でずっと依存症だと言われていたんです。家族もそう思っていたし、私もそう思っていた。でもそれが違うんだと、やっぱりいま起きている現象だけを見ていても意味がないということに少しずつ気づいていきました。

──ギャンブル「依存症」が依存の原因ではなかった?
中村 そうですね。それぞれいろんな背景があるということがわかってきました。ギャンブル依存症が病気だという言い方をしてしまうと、その背景にあるものが見えなくなる。そして本人は他人任せになってしまう。誰かが良くしてくれる、精神科に行って先生の治療を受ければ良くなるんだと思い込んでしまうんです。

朝倉 ワンデーポートから来院する利用者さんは、発達障害の特性があるんじゃないかと見られる人です。8割ぐらいの人は発達障害の傾向がある。私たちの役割は発達障害の特性がどのぐらいあるかを見極めること。発達障害と言っても、その症状は人によってさまざまです。その特性を検査して、それをフィードバックし、その人が地域社会にどう関わっていくかを考えるヒントを与える。私はそういう役割に徹しています。



──大人でも発達障害ということがあるのですね。
朝倉 以前は、発達障害は自閉症など子どもにしかないと言われていました。でもいまではその概念が広がってきて、子どもでいる間に治るものではなく、持って生まれたものなので大人になっても引きずると考えられています。発達障害の人は抽象的な事柄をなかなか理解できません。目に見えるもの、はっきりしているものでないと認識できない。曖昧なしきたりとか、世の中のルールをいくら説明してもわからない人もいます。

高澤 依存症専門の病院に勤務していたとき、精神保健福祉士の主な役割は家族教育と回復施設・自助グループへのつなぎでした。「依存症はこういう病気」「こういう対応が望ましい」「依存症者・家族に自助グルーブは必須」という考えを疑う余地もなかった。でも開業してから一人で初回相談→見立て→支援の組み立てをするようになり、その人を理解するために人生の聴き取りを丁寧に行うようになった。すると、ギャンブル以前から金銭管理などが苦手、学校や仕事でつまずいている、対人関係が苦手などの課題を抱えた人の存在が見えてきたんです。ギャンブルによってそうなったわけではなく、元々の困難を抱えていてギャンブルにはまる人がいることがわかってきました。自分の相談室やワンデーポート、精神保健福祉センターなどで相談を受けていると、こうした人の割合が圧倒的に多い。それらの中には、発達障害、軽度知的障害の診断がつく人、そのような診断がはっきりつくわけではないが、グレーゾーンの弱さや脆さを抱える人がかなりの割合で含まれていると実感しています。

髙橋 薬物事件を起こす方も、暴力団関係者ばかりということはなく、普通の方が多くいて、もともと抱えている発達や知的の問題が背景にある場合もあります。裁判官は背景的な問題まで深く掘り下げようとしませんが、本来であれば、薬物を使うようになった動機だけではなく、背景的な問題まで掘り下げて、本人がどのような生活をしていたのかを知らなければ適切な判断を下すことはできないはずです。ギャンブルでも同じような背景的な問題があると思います。また、盗撮を繰り返す方の弁護をしたことがありますが、その方はごく普通の青年でした。どこにどのような問題があるかは、見た目ではわからないし、話していてもまったくわかりませんでした。

中村 特性として、発達障害の人は同じことをやり続けることがあります。一方で社会の中で居場所がつくりづらいので、逃げ場がない。そんなときにパチンコなどが逃げ場になることはあると思います。

朝倉 発達障害の方でギャンブルやゲームセンターが好きな人は多いですね。ゲームセンターに行くのは高校生や中学生ですが、ゲームセンター以外はほとんど外に出ない。家の中かゲームセンターしか居場所がないんです。

中村 じゃあゲームセンターをなくせばいいという簡単な話じゃないんですよね。ストレス解消の逃げ場なのですから、そこに行かないともっと大変なことになってしまうかもしれません。

<つづく>
本当に必要な支援のあり方とは(2)
本当に必要な支援のあり方とは(3)

【プロフィール】
なかむら・つとむ
認定NPO法人ワンデーポート施設長。1967年生まれ。國學院大學文学部文学科卒。10代からギャンブルにはまりはじめ20代で多重債務など様々な問題を引き起こす。29歳のときギャンブルをやめ32歳のときワンデーポートを立ち上げる。好きなことは、マラソンと写真、森高千里のライブ観戦。

たかさわ・かずひこ
精神保健福祉士、浦和まはろ相談室代表。1963年生まれ。明治学院大学社会福祉学科卒。埼玉県立精神医療センターでアルコール・薬物依存のソーシャルワークを担当。2007年浦和まはろ相談室開設。ワンデーポートの家族個別相談担当、東京・千葉の精神保健福祉センターで依存問題の助言者等も務めている。マラソン、農家めぐり、乃木坂46好き。

あさくら・あらた
精神科医・新泉こころのクリニック院長。1962年生まれ。佐賀医科大学卒業後、東海大学医学部精神科学教室入局。依存病棟で2年間勤務。2008年、神奈川県茅ケ崎市で新泉こころのクリニック開業。専門は児童思春期精神医学。ワンデーポートの利用者約100人に心理テストなどを実施しての評価をフィードバックしている。

たかはし・ようへい
弁護士・髙橋洋平法律事務所代表。1977年生まれ。中央大学法学部法律学科卒業後、中央大学法科大学院を修了。薬物問題を抱える方々の支援をしている中で、依存症プログラムを押し付ける支援活動に疑問を持ち、ワンデーポートに出会う。現在は、薬物だけでなく、アルコールやギャンブル等の問題を抱える方々を中心に、刑事弁護、借金問題、家庭問題、生活の立て直しの観点から、多様な支援者との連携を図りながら支援活動を行う。