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2017年12月06日
No.10000414

ギャンブル等依存問題
本当に必要な支援のあり方とは(3)

相談段階での
的確なアセスメントが重要


──ワンデーポートでは「ギャンブル依存アセスメント・回復支援センター」(仮称)を設立するそうですね。今日集まっていただいた方々がプロジェクト協力者になっています。その背景にどんな理由があるのですか?
中村 最初の段階でアセスメント(見立て)をしっかりやりましょうということです。ワンデーポートでこれまで最低3カ月から半年でやっていたアセスメントを、中身を濃くすることで1カ月で終えます。いろんな専門性を持った人たちの力を借りながら、その人がどんな人で、どんな問題があって、どんな支援が必要なのかをその1カ月で評価します。ですから、本人を回復させるとか治療するということではありません。それは1カ月のアセスメントの後でも遅くはないと思っています。

高澤 私は人生(生育歴・生活歴・家族歴)の聴き取りと分析を行うことでアセスメントの一端を担うのが役割。朝倉先生は心理検査等を踏まえてアセスメントを行う役割です。いずれも医療機関などでも行われていますが、せっかくの情報が生活の困難さの理解や生活支援の方策を推測することと結びついていない。また、人生の聴き取りや分析、心理検査の結果だけでは見えない部分も多いので、ワンデーポートでの生活、活動場面を観察することによって見える情報を加え、複数の視点をすり合わせていくことでより正確なアセスメントができると思っています。ここまでしっかりはどこもやっていない、新しいところだと思います。

──この人はこういう背景があるとわかったその先は?
中村 家族との関係の見直しだけで解決できる人もいるでしょうし、本人が考え方を変えるだけで解決できる人もいるでしょう。福祉的なサービスが必要な人は、朝倉先生に診断書を書いてもらったり、私たちも地域の支援者につないだりします。もしかしたらワンデーポートの近くにアパートを借りてもらって関わりを続ける人や、地域の支援機関に案内する人もいるでしょう。

朝倉 そもそもギャンブルの問題そのものを医療でやっていくことには疑問も持っています。もちろん重症な方や合併症がひどい方はそれでいいのかもしれませんが、なんでもかんでも医療で囲い込むのはどうなのでしょうか。私は依存症専門ではないのでそういうことが言えるのかもしれませんが、地域で支えていったり、医療以外の場所で問題を解決していくことのほうが大事なのかなと思っています。

高橋 刑事事件を起こした方についても、自分自身をよく知ることがスタートであって、それによりゴールに近づくことができると思います。例えば、借金が2000万円あるから生活が破たんしているとは限りません。住宅ローンの借金の場合もありますから。ただ、収入がゼロなのに、借金をして1日で50万円も使ってしまうような人は問題があると思います。現在は、法律が変わりつつあり、窃盗事件や薬物事件、何度も繰り返すような犯罪をどのように繰り返さないようにしていくかという方向に向かっています。そこで一番大切なことは、その人が刑務所から出所した後にどう生活していくかです。そういうことは刑務所では教えてくれませんから。

中村 短期間でも一緒に生活することで、この人が仕事に就いたら周囲の人も本人もかなり苦労するだろうなというのが見えてくるんです。「ギャンブル依存症」から入ってしまうと、そういうところは見えません。

──最後にみなさんそれぞれ、今後の依存問題対策で必要と思われることをお聞きしたいと思います。
中村 ギャンブル等依存の疑いが70万人ということですが、ふつうは数が多ければ多いだけ個人に目が行かなくなります。そして、数字が大きいと射幸性の問題だとか全体を変えようとしてしまう。でもいまワンデーポートに来ている人や家族相談を電話で受けると、明らかに「弱い」人たちが多いんです。発達障害という診断を受ける人もいるし知的障害の診断を受ける人もいるかもしれない。診断は出ないかもしれないけど社会の中でうまく生きられない。そうしたいま本当に支援を求めている人は2万人ぐらいだろうと私も思います。そういう人たちに対するピンポイントな支援が必要で、アセスメントによって、どういう人がどういう問題を起こす可能性があるかをある程度把握できる。いまのこういう社会状況だからこそ70万人に対してではなく、数万人へのアプローチに変えてもらうと、現実的に効果のある対策が立てられるのではないでしょうか。

高澤 肌感覚として「ギャンブル依存症は進行性の病気」というのは大ウソで、8割は自然回復(自己改善)というのはかなり腑に落ちます。自分の相談室で相談を受けていて、いわゆる「依存症の支援」につなげることなく、話を聴くだけ、方向性の整理、家族のかかわりの見直しなどの簡単な介入だけでいつの間にか落ち着くケースがかなりある。70万人すべてに同等の支援が必要なわけではなく、電話での介入、対面での簡易介入などが果たす役割も大きいでしょう。一方で「重症」「困難の大きい」2~4万人に対しては、生活の視点に裏打ちされた福祉的な支援が必要になる。困難を抱えたまま生きていくのを支えることが必要な人もいる。初めから一人ひとりを丁寧に見立てていく方が、かえって社会的費用を無駄なく使うことにもつながると思うのですが。

朝倉 医療的な立場で言えば、依存症と言ってしまうことの弊害は非常に大きい。そこで思考停止してしまうからです。でもこれは依存症対策だけでなく、発達障害と軽々しく診断してしまうことも同じ。そこはきちんと検査をして、人それぞれの特性をしっかり把握して支援につなげていくことが大事。すぐに依存症と言わないで、あなたはこういうことだからいまの状態になっているんですよ、という説明をしてほしいと思います。

高橋 依存問題については、例えば、債務整理の中で背後にある生活の問題が見えてくることもあります。家計を見ると支出も当然見る。3万円の支出を何に使ったのかを聞くことでどんな問題が潜んでいるのかがわかることもある。生活の実態を聞き出すこともできます。また、刑事事件のからみでは、更生というのは間違いを起こした人がどう立ち直っていくかであり、今後その人自身がどのように生活していくかが一番大切な問題です。そのためには、何か大きな制度改革をしなくても、その人自身の生活をどのようにしていくかという視点に切り替えるだけでも、まだまだできることがあるのではないでしょうか。

中村 18年近く依存問題に関わってきて、生活保護のワーカーさんも福祉関係の担当者も自分より年下の人が多くなってきています。みなさん発達障害とか依存症という名前をご存知ですが、知っていることで、システムに乗せればいいといった発想になり、本人理解が少し不足しているのは怖いことですよね。そういうことを一番象徴しているのが「依存症」なんです。社会で何か名前をつけて、回復プログラムを受ければよくなるんだと。それは妄想なんですけどね。でもいま、不適応になってパチンコにはまっている人やワンデーポートに来る人は、そんなに簡単に生活が変わるわけではない。借金を続けてしまう人もいるし、仕事に就けない人もいます。そういう人を社会や地域がどう支えていくかを考えていく必要があると思っています。(了)


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