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2019年02月15日
No.10001027

INTERVIEW 魚谷侑未プロ(セガサミーフェニックス) 
魂を込めた一打で感動を与える
思慮深く卓上を泳ぐ最速マーメイド

Mリーグのドラフト会議でセガサミーフェニックスから第一位指名を受けたのは、日本プロ麻雀連盟所属の魚谷侑未プロ(五段)。18年には3冠王に輝くなど、女流プロの中で最も勢いがある選手だ。そんな魚谷プロにMリーガーとしての決意を聞いた。【文中敬称略】


──プロを目指したきっかけを教えてください。
魚谷 自分の夢や将来について真剣に悩んでいたときに、友達にたまたま誘われて雀荘を訪れたことが麻雀との出会いでした。それまでは中学生のときから憧れていた競馬の騎手への道を歩んでいたのですが、挫折してしまって。そんなときに雀荘で初めて麻雀をして、直感的に「私はこれがやりたい、この仕事がしたい」と運命を感じました。もともとゲーム好きだったせいか、麻雀の奥深いゲーム性に強く惹かれました。その日のうちに「ここでアルバイトさせてください」と頼み、働くようになりました。

──プロデビューを飾るのも早かったですね。
魚谷 プロ試験を受けたのは、麻雀を始めて10カ月目のことでした。まだ初心者同然の実力だったので受験は翌年に見送るつもりだったんですが、麻雀でお世話になった周囲の方から「プロへの決意が固いなら早い方が良い」と背中を押されて受けました。自信はまったくなかったのですが幸いにも一発で合格したので、背中を押してくれた方にはとても感謝しています。特にオーナーにはマナーや心構えについても厳しく指導していただきました。

──どのようにして強くなったのですか?
魚谷 自分ができる努力を常に重ねてきました。働き始めたときから教本を一気に読破して、練習に明け暮れました。プロになってからも師と仰いだ愛知の雀荘オーナーさんの元で、2年間みっちりと修行しました。寝ているとき以外は、勤務中も勤務後も休みの日も麻雀漬けの生活です。プロになれたとはいえ、同期に比べたら研修期間中も劣等生でしたから。そのときは「今は一番弱いかもしれないけど、絶対に一番になってやる。麻雀を好きな気持ちは誰よりも私が強いんだ」という想いで練習に打ち込んでいました。運は自分で左右できませんから、巡ってきたチャンスをモノにできるように練習で技術を積むことが大切だと考えています。

──苗字と打ち方のスタイルから「最速マーメイド」と呼ばれているそうですね。
魚谷 私は昔から、スピードを重視する麻雀を目指していました。鳴きも多用します。若い層が増えた今では一般的になった、いわゆるデジタル雀士ですね。でも10年ほど前は面前でじっくり勝負するスタイルがもてはやされていたので、私の打ち方は当時、周囲から批判されました。でも自分はこのスタイルでやっていきたかったんです。

──麻雀の魅力はどのようなところにあるのでしょうか。
魚谷 飽きが来ないゲーム性です。何年やっていても同じ状況は起きません。それに将棋や囲碁と違って、初心者でも運任せでプロに勝てるときがあること。役や点数計算は後から覚えればいい。まずは勝つ楽しさを味わってほしい。最近は対局を観戦する”観るジャン“も流行っていますが、これは対局の中にドラマがあるからだと思います。どれだけ駆け引きや読み合いをしても、最後の最後まで誰が勝つか分からない。誰か応援する選手ができると、一層熱が入ると思います。


──セガサミーフェニックスから第1位で指名されたときは、どんな気持ちでしたか。
魚谷 私を選んでいただいたことには感謝しかありません。Mリーグが発足したときから、「選ばれたい、あの舞台で戦いたい」と強く思っていたものの、私の実績は評価されるのか、そもそも女性は選ばれるかといった点で、自信がなかったからです。でも選んでいただいたからには、絶対に結果を出すつもりです。ところがセガサミーの髙畑大輔監督からは、「見る人に感動体験を与えられるメンツを選びました。結果も大事ですが、それよりも良い麻雀を打ってください」と言われました。ですから結果にもこだわりたいですが、ファンに喜んでもらえるような、セガサミーフェニックスを応援してもらえるような麻雀を責任もって打たなければと強く思っています。

──プレッシャーも相当なものだと思います。
魚谷 リーグが始まる前まではプロ人生の中で一番の重圧を感じて、体調を崩しかけました(笑)。これまでも応援してくださる方の想いなどを背負ったことはありますが、どれも自分が勝つために打つ麻雀だったので、重みが全然違いました。Mリーグが始まってからは、使命感の方が強く湧きました。「自分があれほど望んだ戦いの場所に連れてきてもらえたんたぞ」という感謝の気持ちが大きいですね。

──感動体験を与えられる、応援してもらえる麻雀とはどういうものですか。
魚谷 自分が命を懸けて麻雀をやってきたということが証明できるような麻雀です。一打一打に心を込めて、そうした感情を伝えること。面前で高打点を作る派手な麻雀が楽しいと感じる方もいるでしょうが、私は自分が築いてきた基盤を崩さずに、勝つための最良の一打を打ちます。勝つために打つ麻雀が”魅せる麻雀“だからです。

──Mリーグの発足は、麻雀プロにどのような影響を与えましたか。
魚谷 年俸をいただけることは非常に画期的なことでした。一般的なタイトル戦の賞金は大きな試合で優勝しても100万円。女性では50万円程度がざらです。それも各々年に1回。対局だけで生活することはまず不可能でした。ですからMリーグはほとんどのプロから憧れの場として見られています。私はMリーガーになって、自分がプロであることを強く意識するようになりました。対局により集中できるようになりましたし、一般の方に麻雀プロと認識されることが増えました。今後は競争が激しくなりますが、まずは選手としてできることを精一杯やりたいです。Mリーグ機構の藤田代表理事には、私に限らずすべての麻雀プロが感謝していると思います。

──今後の目標を教えてください。
魚谷 セガサミーフェニックスがチームで優勝できるように、全力を尽くします。個人としても結果を出し続けられるプロでないと認められないので、各タイトル戦の結果を重視して、勝ち続けられるプロでありたい。将来的な目標は、私の生きざまが目標や憧れにしてもらえるようなプロになること。もっと頭脳スポーツというイメージを広げ、麻雀をもっと人々の身近なものにしたいですね。いずれ、中学生や高校生のプロ雀士がMリーグでデビューを飾る日がくるかもしれません。それは素敵なことですよね。


うおたに・ゆうみ
1985年生まれ、新潟県柏崎市出身。2009年、日本プロ麻雀連盟に所属してプロデビュー。めきめきと頭角を現し、11年と12年には同連盟の女流プロリーグを2連覇。CS番組「モンド麻雀プロリーグ」では王座決定戦を3回制した。18年は日本プロ麻雀協会の日本オープン、所属連盟の女流プロ麻雀日本シリーズ、王位戦で計3冠を達成した。


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