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2019年07月11日
No.10001279

木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
横浜IR構想は膠着状態
[コラム]カジノ研究者の視点

横浜市の統合型リゾート(以下、IR)構想が紆余曲折を続けている。同市がIR導入を念頭においた開発計画を最初に発表したのは、市の招聘した有識者会議が山下ふ頭エリアを対象に「横浜市山下ふ頭開発基本計画案」を公表した2015年のこと。この計画はカジノこそ明言していないものの、コンベンション機能やエンターテインメント機能等を有した誘客施設と、滞在型のリゾート施設の整備を含むIR開発を念頭に置いた計画であった。また、当時この横浜市の動きに呼応する形で、横浜市商工会議所を中心とした地元経済界も研究会を組成し、官民一体でIRの導入に向けた本格検討が始まった。

しかし、その検討は2017年に市長の手によって白紙撤回されてしまう。そのキッカケとなったのが同年7月に行われた市長選挙である。当時、林文子市長は自身の3選目をかけた市長選において、突如「検討を推進」と表現していたIR案に関して「白紙撤回」と発表した。明らかに、一般的に「選挙に不利」になり得るIR導入検討を公約から外し、より有利に選挙戦を進めるための措置であった。そのおかげもあってか、林市長はこの選挙を圧勝で乗り切った。

ところが、この選挙向けの対応がその後の横浜IR構想を迷走させることになる。

いったん白紙撤回した構想を再び検討の俎上に乗せることは、「市民への裏切り」と受け止められかねず、有権者から批判を受けるリスクが大きい。国における法令整備が進み、ライバルとなる他の自治体が導入検討を進める中、横浜市は現在に至るまで「白紙撤回」の撤回に至ってないのだ。にもかかわらず、横浜市は2018年には「IR等新たな戦略的都市づくり検討調査」と題された調査を敢行した。「検討は白紙」の姿勢を維持しながらも、世界の開発事業者に対して、横浜市におけるIR開発案の提出を求め、12の事業者グループから提案が集まった。当然ながらこの市の行動に対して、反対派は猛反発をしている。

もうひとつ、混乱を招いている要因が、地元経済界の分裂である。先述の通り、横浜市では商工会議所を中心としたIR推進体制があるが、一方で横浜港での事業に従事する港湾業者らが当該地域でのIR導入に反意を示し始めた。今年5月には同事業者らが中心となり「カジノを併設しない」リゾート開発案を発表。推進派との対立を深めている。

今月末の参院選が明ければ、国および各自治体はIR導入に向けた論議を急速に進め始める。その中で未だ「白紙撤回」から前に進めず、地域の対立が深まるばかりの横浜が、どのように動くのか。はたまた動かない(動けない)のか。刮目して見守ってゆきたい。


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