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2019年06月20日
No.10001245

木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
カジノ管理委設置先送りの影響
[コラム]カジノ研究者の視点

[プロフィール]日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

政府は5月23日、7月1日に予定されていた「カジノ管理委員会」の設置を当面先送りする方針を固めた。同じく7月に予定されている参議院議員選挙において、野党からの追及によりカジノが争点化することを避けることが狙いといわれている。

カジノ管理委員会は、我が国においてこれから誕生する統合型リゾート(IR)内のカジノの規制を担う行政組織として内閣府の外局として設置されるもので、IR整備区域選定の前提となる各種重要事項、特に背面調査やフロア内での不正監視に関する様々な事項を定める規則の制定を担う。この設置が先送りされるということは、同時にIR整備区域の選定の前提となるこれら規則制定が先送りされることを意味しており、この秋口に予定されていた政府による整備区域選定に関する基本方針の発表も、ズレ込むことが確実だ。

この政府方針に対する反応は様々だ。強く反発しているのが「2025年の大阪万博までに開業」を掲げてIR導入構想を計画してきた大阪府・市だ。大阪市の松井一郎市長はSNS上で「IR実施法は成立しているのだから、なぜ先送りなのか。参議院選挙において、立民(立憲民主)や共産党が反対キャンペーンを張ってくれば、堂々と議論すればよい」と批判している。

しかし、私はかねてより大阪府・市が主張してきたIRの「万博まで開業」は、実務的には相当無理なスケジュールだと指摘してきた。大阪府政・市政を担ってきた大阪維新の会にとっては「自民党の『弱腰』政策が悪い」と、将来発生するであろう各種計画の遅れを他人のせいにできるという意味で、むしろ「渡りに船」だったのではないか。各事業者にとっても、無理な開発スケジュールを組めば組むほど金銭的な負担が大きくなるのだから、カジノ管理委員会設置の先送りで、損している人はあまりいないともいえる様相なのだ。

一方で、政府の決定に胸を撫でおろしているのが、IR導入を検討している大阪以外の各自治体だ。全国では北海道、千葉、東京、神奈川、愛知、和歌山、長崎などIR導入を検討している地域があるが、大阪と比べると大幅に準備が遅れているのが現状だ。特に千葉、東京、神奈川の関東圏における3候補地は、市場としては有力視されながらも自治体は未だ公式にIR導入に関して明確な決断を下せていない。今回、政府が各種スケジュールの先送り方針を示したことで、これら自治体にとってはもう少し論議を醸成するための猶予ができたことになる。

どこにそれができるのかは未定だが、現在のスケジュールに基づけば、少なくとも我が国のIRは2026年前後には開業する予定だ。


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