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2020年03月31日
No.10001619

木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
融資支援「対象外」のままでよいのか?
[コラム]カジノ研究者の視点

融資支援「対象外」のままでよいのか?
[プロフィール]日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

中小企業庁が提供する「セーフティネット5号保証」という制度がある。本制度は中小企業信用保険法に基づいて提供される特別な融資制度の一環で、災害や大規模な経済危機が発生した時、中小企業者の運転資金の調達を支援するものである。今回の新型コロナ被害にあたって、政府はこの「セーフティネット5号保証」制度の運用拡大を行っており、中小企業向け支援の柱のひとつとして位置付けている。 

ところがこのセーフティネット5号保証制度は、実は風営法で規制されている業種のうち「飲食の提供を行うもの以外」の業種に関しては、原則的に適用されない。当然ながら、この支援の枠組みからパチンコ業種も外されており、遊技業界の中からは各都道府県の窓口(各都道府県の信用保証協会)に相談に行ったものの、けんもほろろに支援を断られたという事例もすでにある。他の業種と同様に新型コロナ被害を受けているにも関わらず、にである。

このような政府による差別的な扱いに対して、いち早く行動を起こしたのが雀荘業界である。雀荘は、3月2日に政府専門家会議が発表した資料において、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食などと同様に、新型コロナの集団感染が起こりやすい場所の一つとして名指しされた業種の一つである。その後、3月9日に同じく専門家会議から発表された資料ではそのリストから外されたものの、営業への影響は甚大であり現在多くの事業者が経営危機に直面している状況にある。

それにも関わらず、上記セーフティネット5号保証制度が雀荘業に差別的な扱いを付し、その支援の対象としていないことは問題だとして、雀荘業界を取りまとめる業界団体、全国麻雀業組合総連合会が3月上旬に動きだした。その後、組合は早急に要望書をまとめて彼らが支援する議員連盟「スポーツ麻雀議連」に提出。議連はその要望を受けて3月17日に緊急会合を開催し、その場に同席した警察庁保安課および中小企業庁金融課に対して、雀荘業をセーフティネット5号保証制度の対象として追加するようにとの要望が直接伝えられることとなった。その結果、雀荘業は4月からめでたくセーフティネット5号保証制度の対象業種として指定を受けることとなったのである。

前出の通り、セーフティネット5号保証制度はパチンコ業には未だ適用されておらず、雀荘業が指定対象となる4月以降も全国のパチンコ業者はその支援を受けられないままの状態が続く。雀荘業界は迅速なロビーイングにより業界利益を勝ち取ったわけだが、はてさてパチンコ関連の業界団体は一体何をしているのであろうか?


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