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2021年05月20日
No.10002290

遊技障害(のめり込み)のメカニズム解明
社安研「遊技障害研究会」が研究成果を最終報告

公益財団法人日工組社会安全研究財団は先ごろ、同財団内に設置された「パチンコ・パチスロ遊技障害研究会」が2017年に実施した調査に基づく遊技障害についての研究成果の最終報告書を公表した。誘発する要因の解説のほか安全な遊び方の提言がなされている。

ギャンブリング障害の尺度としては、世界的にはSOGSやDSM5が用いられている。だが、「ギャンブリング」の部分を「パチンコ・パチスロ」に置き換えて遊技障害尺度とするには改善や検討の余地があることから、同研究会は専用の「パチンコ・パチスロ遊技障害尺度」(PPDS)を開発し、さらに少数の項目で結果をかなり再現できる「短縮版」を作成。2017年1月~2月に実施した全国調査で得た有効回収5060票のうち、直近1年間にパチンコ・パチスロを遊んだ人は582人(全国の成人の11.5%)で、PPDS短縮版を用いて遊技障害のおそれがある人は21人(同0.4%)だった。ここから、遊技障害のおそれのある人の人口統計学的数値を約40万人とした。
最終報告書では、PPDSの開発の説明のほか、どのような人たちが「遊技障害のうたがい」があると言われるのか、どのような遊技状況が「遊技障害のうたがい」のリスクを下げるのか、どのようなパーソナリティ要因が遊技障害促進要因として最も強くかつ長期的な影響を及ぼしているのか等の研究成果を報告し、対策についての提言をしている。

本報告書でも指摘されているが、メディアが伝えるギャンブル依存症者や受診者をベースにした医療現場の統計や体験談は、本調査から得られた「遊技障害のうたがい」のある人の像とは乖離している。例えばある医療センターのギャンブル外来を受診した人の借金総額の中央値は400万円だったという調査結果があるが、本全国調査ではパチンコ・パチスロによる借金が300万円を超えた人は0人で、借金の中央値は10万円以下だった。依存問題の理解の正しい理解のためにも、業界関係者はこのような学術調査報告書を一読する必要があるだろう。

まず念頭に置かなければならないのは、この40万人という推計値は、国が定義する「ギャンブル等依存症」におけるパチンコ・パチスロについての該当者数を表すものではなく、これより軽度の人が多く含まれているという点。同調査では「遊技障害のうたがい」のある21人のうち、5人が「軽度」に該当した。

しばしば、「ギャンブル行為による報酬系(ドーパミン神経系)の活動の繰り返しが、コントロール喪失、依存(行動嗜癖)に直結する」という説明がなされることがある。しかし社安研の研究報告書は、遊技の開始や継続に関わる要因とプレイヤーに遊技障害のおそれを誘発する要因は一致するとは限らず、「相対的に独立」だとした。つまり、報酬系の活動の繰り返しすなわち「楽しさ」の繰り返しは、遊技障害のおそれに必ずしも直結するわけではない。そもそも、ギャンブリング障害ではその50%程度が遺伝要因という先行研究がある。
社安研が別途行った2年間の縦断調査から、遊技障害の促進要因として最も強くかつ長期的な影響を及ぼしている性格因子は、先行するギャンブリング障害の研究結果と同様に、神経症傾向(不安、敵意、抑うつ、自意識、衝動性、傷つきやすさ)だとした。特にADHD傾向や「不安」「抑うつ」「衝動性」に強い影響が見られたという。一方、外向性(温かさ、群居性、断行性、活動性、刺激希求、よい感情)は全体として影響が見られなかった。ただし、「刺激希求」に限ると、ストレス・イベントとの交互作用によってのみ、障害悪化要因として長期的影響を及ぼしていた。
性格因子のほか、病的心理因子(認知のゆがみ、両価性)も1年間の縦断調査によって確認した上で、認知療法および認知行動療法の限界について言及している。

これらの研究成果を踏まえ、本報告書は5つの提言をしている。
① より健全なレベルからの遊技障害対策が必要である。
② 予防対策で中核に据えるべき対策は、自由に遊べる時間での遊技や負けていても上限に達したら遊技を控える、といった健全な遊技行動のすすめである。
③ 債務整理体験のあるプレイヤーに対しては、遊技額や回数等の上限を設定する自己申告プログラムもすすめられるべきで、債務整理体験のある人には遊技をご遠慮願うという選択肢も考慮すべきである。
④ 遊技をする個人の側の内的要因も考慮すべきであり、遊技障害のリスクの高い個体要因を有する人たちを特定し、健全遊技の必要性を伝えるメッセージを届ける仕組みを構築する必要がある。
⑤ ギャンブル等依存症対策推進基本計画をより実効性のあるものとして生かすべく、遊技障害と密接に関わる遊技をする個人の側の内的要因、健全な遊技行動、広告接触、遊技台の射幸性などと遊技障害のうたがいの関係についての縦断的で科学的な調査研究を推進する必要がある。


特に「自由に遊べる時間で遊びましょう」という呼びかけをいかにプレイヤーに届けるかが最も優先すべき課題だとして、これは遊技量(使用額、頻度、時間)の制限以上に大事な課題であることが示唆されたという。会員カードデータによって遊技量をほぼ把握した別の研究でも、「遊技頻度、時間、負け額の遊技障害のおそれへの寄与は大きくなく、健全な遊技を行っているかどうかの影響が圧倒的」という結果だったという。 


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