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2022年03月22日
No.10002710

特集 SDGsことはじめ② ユーコーグループ
SDGsの種を育てる
『関係人口』を増やし課題解決とファンの創造へ

SDGsの種を育てる
廃棄ユニフォームを再生利用してエコバッグを制作。「エコ活」のキャッチフレーズで活用を呼びかけた

九州を中心に全国でホール25店舗を運営し、グループ企業で遊技機リサイクル事業や障がい者就労継続支援、旅亭、ゴルフ用品のリサイクルショップなどを手掛けるユーコーグループ。SDGsに先駆けて持続可能な社会への取り組みを進めてきた同社の取り組みを聞いた。

「当社グループではこれまで、さまざまな社会貢献活動を行ってきましたが、そのアウトプットがしっかりできていない面がありました。そんな中、2019年の年末に社内でSDGsの取り組みを始めようという議論になり、改めてこれまでの取り組みを整理することから始めました」

こう語るのはグループ広報担当の押川巧真さん。しかしその後に新型コロナウイルスの感染が拡大し、予定していた社内での勉強会や講習会がすべてできなくなった。

一方で、コロナ禍の当初に起こった業界バッシングをきっかけに、金海基泰社長が「こんなときだからこそ、地域と社会のためにできることをやろう」と社内に呼びかけたことで、従業員の意識が変わっていったという。

「ホールの駐車場を利用した献血会などの新たな取り組みもスタートし、CSRやSDGsへの認知が自然と従業員の間で広がっていきました」

廃棄ユニフォームでエコバッグ

全従業員にプレゼントされたエコバッグ

こうした中で注目されたのが、廃棄ユニフォームを再生利用したエコバッグの制作だった。このプロジェクトを担当した人事部の高瀬岳彦さんはこう振り返る。

「ちょうどSDGsという言葉を聞くようになった頃、2020年に店舗スタッフのユニフォームを一新する計画を立てていました。そのときにユニフォーム企画会社との打合せの中でSDGsについて話題になり、従業員約1000人のユニフォームを廃棄せずにリサイクルすればSDGsにある『つくる責任、つかう責任』を行動に移すには最適なプロジェクトになると気付きました」

そこで神奈川県に本社を置くベンチャー企業の日本環境設計にリサイクルを依頼。北九州市にある同社の工場で、使用済みのユニフォームからポリエステルを取り出して糸にし、海外に送ってエコバッグを制作するという過程でプロジェクトは進んだ。

「コンビニのレジ袋有料化もあり、SDGsにつながるエコバッグということで従業員に周知するには絶好のアイテムでした」

リサイクルに使用したユニフォームはベスト、シャツ、パンツなどトータル約3万枚。制作したエコバッグは2000枚。再生利用によるCO2削減効果は約2912㎏に相当する。同社の従業員がこのエコバックで買い物をして、レジ袋として使用した場合のCO2の削減効果は年間約6000㎏相当という試算が出た。

エコバッグは2021年6月、グループの全社員とアルバイトにプレゼントした。その際、押川さんは「エコ活」というキャッチフレーズで社内向けのPOPを作った。

「作ったけど使われないと意味がないと考えて、あえてSDGsという言葉を使わずに、エコ活にしました。制服のリサイクルによる環境負荷削減では話が難しくなります。使ってもらうことによる環境負荷軽減を訴える方が、SDGsの趣旨に沿うのではと考えました。デザインもユーコーオリジナルですので、会社への愛着につがってくれればとも思います」

女性の声から生まれた新制度

カウンターマネージャーが作成した「カンガルーサポート」のポスター

もうひとつ、SDGsのNo5に掲げられた『ジェンダー平等を実現しよう』を具現化する取り組みもスタートした。それが産休育休復帰支援プロジェクト「カンガルーサポート」だ。

ユーコーグループでは女性従業員が全体の約3割を占める。しかし、産休や育休を取得した後に退職するケースが多く、女性人材の定着が大きな課題だった。

「産休や育休から復帰後、子育てで遅番ができない、土日にシフトに入れないなど周囲への配慮が必要な働きづらさから、退職に至るケースが多かったのです」(高瀬さん)

「カンガルーサポートはオリジナルの名称で、カウンターマネージャーの女性が中心になって提案してくれました。法定の支援を超えた支援をしていこうと、早番限定、店舗限定、土日休み可能など、子育てをしながらでも女性が長く働けるフレキシブルな制度になりました」

復帰前に面談の機会をつくったりするなど、妊娠から産休、育休、職場復帰までのプロセスを見える化し、カウンターマネージャーが簡単なリーフレットを作って店舗で閲覧できるようにもした。さらに、産休育休中の社員と育休が明けて復帰した社員との座談会「カンガルートーク」なども企画。2020年の1月からスタートして、すでに6人がこの制度を利用して、職場に復帰して子育てをしながら働いているという。

グループ広報担当の押川さん(左)と人事部の高瀬さん

「決してSDGsの取り組みをするぞと言われて始めたことではなく、従業員のためにこういうことをしたらいいよねと始めたことが、結果的にSDGsの目標と合致していたケースです」(高瀬さん)

「女性社員はアイデアや提案が多い印象です。SDGsの種を蒔いた中で、反応してくれたのはカウンターマネージャーだった。社会福祉法人の障がい者が作ったお菓子を賞品に仕入れてみたり、端玉のお菓子の活用を提案したり。こうしたことを通じて社員の会社に対するエンゲージメントが強くなってくれればと思います」(押川さん)

押川さんは、今後、パチンコ事業につながるSDGsを模索していきたいと考えている。

「いまはSDGsの種を蒔いた結果、現場から少しずつ芽が出てきた段階で、前に進んでいることは確かです。まず世の中の人にユーコーという会社を知っていただき、興味を持ってもらう、ファンになってもらう。地方創生でも言われている『関係人口』を増やすという考え方です。SDGsはそのためのヒントになります。その先に、社会におけるパチンコホールのあり方や役割が見えてくるのだと思っています」


※『月刊アミューズメントジャパン』2022年3月号に掲載した記事を転載しました。


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