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2022年03月23日
No.10002704

特集 SDGsことはじめ③ NEXUSグループ
世界の共通言語で社会とつながる
取り組み知らせるSDGs新聞

世界の共通言語で社会とつながる
NEXUSグループ 広報課長の大谷和也さん

2021年1月にSDGs宣言をしたNEXUSグループ(群馬県高崎市)。全国で60店舗のホールを展開する同社ではどのように取り組みを浸透させているのか、SDGsに取り組むメリットはどこにあるのか。プロジェクトの立ち上げを行ったNEXUSグループ広報の大谷さんに聞いた。

NEXUSグループは2021年1月、「NEXUSグループSDGs宣言」を社外に発信。パチンコホール60店舗のほか、フィットネス、温浴、飲食、インターネットカフェ、カラオケなどを展開する同社がSDGsに真剣に向き合う姿勢を示した。プロジェクトの立ち上げを行った大谷さんはこう振り返る。

「実はその1年前の2020年1月から、会社としてSDGsに取り組んでいく準備をしていたのですが、その矢先に新型コロナの感染が拡大し、宣言が1年遅れた形でした」

とはいえ、同社ではこれまでもさまざまな形でCSR活動に取り組んできた。そのなかでSDGsをどう位置付けたのか。

「一つひとつの社会貢献活動は良い取り組みです。しかし、企業のブランディングという意味ではそれぞれがつながっていませんでした。でもSDGsという世界の共通言語を使うことによって、それらを統合できると考えました」
 
人材採用に欠かせないツール

まず取り組んだのが、社内へのSD Gsの浸透だった。社外講師を招いて本社に勤務する社員が「SDGsとは何か」をテーマにした講義を受講。その後は人事部のタスクメンバーが、店長クラスの社員に研修の輪を広げていった。

「現場のスタッフにとってSDGsや社会貢献は営業に直結しないと思われがちですが、SDGsに取り組むことで、間接的に営業力アップにつながることを知ってほしいと思いました。具体的には人材採用に欠かせないツールになるということです」

大谷さんは長く人事部で新卒採用を担当していた。その経験から、最近では積極的に社会の課題に関わりたいと考える学生が多く、SDGsなども勉強していると感じていた。

「お金を稼ぎたいというより、どれだけ社会に関われるかが、会社選びの基準になりつつあります。背景には、東日本大震災や度重なる豪雨被害などの際に自衛隊やボランティアの方々の活動を見ていた経験があるのではないかと思います」

SDGsに取り組むことは、新卒採用にも役立つ。店舗でもアルバイトスタッフを採用しやすくなる。結果として業績アップに貢献してもらえる。そう説明することで、店長クラスの人材にSDGsのメリットを理解してもらう。NEXUSグループでは月に一度の店舗会議で、社員にSDGsの取り組みを継続して伝えるところからスタートした。

石灰石からできた名刺に変更
 
SDGsプロジェクトでは昨年、1カ月に一度、新しいSDGsに取り組むという目標を掲げた。これまで取り組んでいた活動を進化させたものや、新たに取り組む施策などさまざまだ。

新しく取り組んだ施策の代表的なものに、環境に配慮した名刺への転換がある。「LIMEX(ライメックス)」を利用した名刺だ。LIMEXとは石灰石を主原料にプラスチックや紙の代替え製品を成形する日本発の技術。木を素材とする紙より排出するCO2を減らすことができ、日本で100%自給自足できる資源だという。同社ではすべての役員と社員の名刺をLIMEX名刺に切り替えた。

「費用はこれまでの紙の名刺と同程度。昨年4月にニュースリリースを出したところ、同業の法人様からも多くのお問い合わせをいただきました」

一方、従来行っていた活動にSDGsの考え方を盛り込んで進化させた活動もある。そのひとつが「端玉寄付BOX」の設置だ。

「SDGsの取り組みとして始めたのは昨年10月からですが、それ以前には、店舗で交換されずに賞味期限を迎えそうなお菓子をフードバンクに寄付していたのです。それをSDGsとして購買部が進化させました。カウンターの横に端玉寄付BOXを設けて、お客様が直接お菓子を箱に入れていただけるようにし、設置店舗数を増やしました」

箱に入れられたお菓子は、賞味期限が近いお菓子とともに、これまでどおりフードバンクに寄付される。現在、群馬と埼玉の店舗で実施しているが、今後は取り組むエリアを増やしていきたい考えだ。
 
社内の取り組みを可視化

月にひとつを目標に新たな施策を続けてきたSDGsプロジェクト。その取り組みをまとめたものとして昨年9月、プロジェクトチームは「NEXUS SDGs新聞」の創刊号を発刊した。

「大きな目的がふたつありました。ひとつは店舗で働く社員に対して、会社が行っている取り組みを知っていただくこと。もうひとつが人材採用に役立てることです」

新聞を作ることが目的ではない。それまでにやってきた取り組みをまとめて可視化しようという発想だ。昨年12月に第2号を発行。今後も3カ月に1回の発行を目指している。

15人ほどのプロジェクトメンバーがもっとも大事にしていることが、現場に負荷をかけないことだ。

例えば、本社では毎週火曜日、店舗では毎月1回、社屋や店舗の周囲を清掃している。これまでは清掃活動の写真を社内の共有サーバにアップするだけだったが、その際に、残業時間の削減を目指して事務所内に掲示している棒グラフの画像もアップすることを付け加えた。

「写真が1点増えるだけなのでそれほど現場の負担にならないはず。SDGsが店舗の仕事を圧迫してしまうと本末転倒になってしまうので、極力現場の負担にならないことを強く意識しています」
 


2030年までの開発目標

SDGs宣言から1年が経ち、毎月ひとつの取り組みを実践してきたSD Gsプロジェクト。大谷さんはこの1年をこう振り返る。

「まだ従来の取り組みをSDGsの視点でブラッシュアップしている段階だと思います。でもそれが、SDGsが目指す持続可能な社会を作ることにつながるはずです。SDGsの取り組みは業界メディアだけでなく一般メディアにも取り上げてもらいやすい。業界の枠を超えて社会の共通言語を使うことで、世の中の人とつながれる意義は大きいと思います」

広報という立場から、大谷さんのもとには他法人からもSDGsに関する相談を持ちかけられることが多いという。

「お話させていただくのは、SDGsの前にはMDGsという開発目標もあったのですが、このSDGsは2016年から2030年までの15年間で達成するために国連が掲げた有効期限のある目標だということです。ですから1年でも早く始めた方がよい、悩まれているなら一歩踏み出した方がよいのでは、とお伝えしています。2029年から始めるのでは遅いですから」

※『月刊アミューズメントジャパン』2022年3月号に掲載した記事を転載しました。


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