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2023年02月20日
No.10003288

マルハン北日本 M&Aで年間5店舗出店へ
実績示した業界最大手の手腕

マルハン北日本 M&Aで年間5店舗出店へ
『盛岡みたけ店』(岩手県盛岡市、1261台)

マルハン北日本カンパニーが出店攻勢を強めている。2023年3月期(22年4月1日から23年3月31日まで)は第3Qまでに、5店舗をグランドオープン。そのすべてが新築ではなく居抜き物件だった。出店した地域を掌管するマルハン北日本カンパニーの目論見を探った。

マルハンはM&Aを行わない──。自社による公言は21年4月、北日本カンパニー(以下、C)によって撤回された。ホール事業で利益を上げる最善の方法は、立地に優れた店舗を強化すること。その際の投資物件は、自社の新築に限らず居抜きも視野に入れている。従来のイメージを覆す、事実上の「M&Aによる成長戦略」だ。

初年度の成約は1件に留まったが、22年中は5店舗を居抜き出店した。4月の『福井大和田店』(福井県、617台)を皮切りに、年末には『新砂川店』(北海道、555台)、『広面店』(秋田県、420台)、『盛岡みたけ店』(岩手県、1261台)、『茶屋が坂店』(愛知県、446台)を立て続けにオープン。特筆すべきは『盛岡みたけ店』だ。

同店は、台数規模も商圏ポテンシャルも抜群のSランク物件。関心を示す有力経営者は多かったが、高額な売却希望額に二の足を踏む状況が続いていた。しかし北日本Cは決断。「良い物件であれば高額でも買う」という強気の姿勢を示した。

北日本Cで店舗開発を担当する開発戦略部の三原太郎部長は、「これからも年間に5店舗程度、5年で30店舗のM&Aを目指す。一見難しそうな案件でも、当社であれば上昇軌道に乗せられる可能性が高い」と自信を覗かせる。

北日本C流の好条件

売り手と買い手に知識と経験の差が生じる事業者同士のM&Aでは、信用に値する買い手を選ぶことが重要になる。不慣れな売り手に対する気遣い・配慮を行うことができる買い手の豊富な経験値は、各種の段取りを円滑に進める推進力になる。

他方で、売り手の最大の関心事は売却価格だ。北日本Cは、評価額が分かれる「のれん代」をどのように評価するのか。

「有形財産の不動産は簿価、遊技機は中古機相場価格、ブランドなどの無形財産は、利益の3~5年分を想定しています。ただしその額は、当Cが運営した場合での算出額。他法人よりも良い条件を提示できます」(三原部長)

事業撤退を検討するホール経営者の中には、複数店舗の同時売却を願う人もいる。買い手としては、良い物件だけに絞りたくなるケースだ。北日本Cの場合、一部店舗でホール事業の継続が難しくても、取得後に他業種への業態変更も可能であるため、相談に乗るという。

社員の雇用は守られるのか。継続就業を希望するアルバイトには面談を行うが、正社員は旧法人での雇用を前提とする。旧法人に別店舗や別事業があれば、配置転換を推奨するが、それでもマルハンへの転職を希望する者には、転職後の全国転勤の可能性を説明する。

マルハンが躍進を続ける理由

ホール業界では今後、スマート遊技機導入に向けた設備投資が本格化する。この一因をどう捉えるかが、事業継続を決断する分かれ目といっていいだろう。そうした中でも北日本Cは出店攻勢をかける。その理由を三原部長は次のように話す。

「街からホールがなくなることは、業界にとってマイナスでしかありません。タッチポイントの減少は、新規客の創造とは真逆。当該店のお客様も、それを機に遊技から離れてしまうかもしれません。現存店舗を1店舗でも多く未来につなげたい。可能性が見込める店舗には投資を回していきます」

『福井大和田店』(福井県福井市、617台)

『茶屋が坂店』(愛知県名古屋市、446台)

『新砂川店』(北海道砂川市、555台)

『広面店』(秋田県秋田市、420台)

現状の経営法人では難しくても、業界最大手というマルハンブランドがあれば、活性化できる公算は高い。資本力、人材力、企業風土、ノウハウ──。これまで300店舗以上で実施してきたセグメント戦略は、商圏人口や競合状況に合わせて運営方針を適応させることができる。

通い慣れたホールが営業力のある店舗に生まれ変わることは、遊技客目線でも好ましいことだ。新台導入のサイクル、ラインナップ、台数。好みの機種を打てる機会が増えることは、来店意欲に直結する。コミュニティとして利用するファンも、快適な居場所で顔見知りと会えることを望んでいる。

近年はホールが防災拠点としての役割を果たすことも多い。廃業の余波は大きい。北日本Cに店舗売却を打診したあるホール経営者は、こう振り返る。

「結果的には成約しなかったが、相談したことで事業撤退の諦めがついた。マルハンが運営してもメドが立たないのであれば、ウチが努力してもダメだろう」

三原部長は言う。「“人生にヨロコビを”がマルハンの使命であり、ファンを増やしパチンコ業界を活性化させるためにエンターテイメントの場づくりを継続していく。そうでなければマルハンがマルハンでなくなってしまいます」

北日本カンパニー開発戦略部 三原太郎部長



マルハン 北日本カンパニー
出店5店舗の紹介専用WEBサイト


※『月刊アミューズメントジャパン』2023年3月号に掲載した記事を転載しました。


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