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2024年02月05日
No.10004095

ホール経営企業に変革を|お客様のビジネスをもっと成長させたい

ホール経営企業に変革を|お客様のビジネスをもっと成長させたい

INTERVIEW
ベルテクス・エンターテインメント
山口正智 代表取締役


パチンコホール経営企業に変革を──。そんな想いから2023年に設立したベルテクス・エンターテインメント。クライアントの真のパートナーとして共に成長することを企業理念に掲げる山口正智社長が、ホール経営企業を支援したいと考えた源泉はどこにあるのか。その想いを聞いた。

昨年12月、「ひまわり」の屋号で北海道と東北にホール35店舗を展開する合田観光商事(札幌市)が、ホール経営に本格的にAIを導入した。そのパートナーとなった企業がベルテクス・エンターテインメントだった。同社は山口社長らが8年前に起業したベルテクス・パートナーズが23年に設立したグループ会社。合田観光商事との取り組みが進み、本格的にパチンコ関連企業を支援する決意を示すために別会社を設立した。

山口社長は1975年、京都府生まれ。幼少期に東京都立川市に移り、大学は一橋大学商学部に進んだ。だが、この頃からコンサルタントを目指していたわけではない。

「大学では公認会計士を目指して、ダブルスクールで専門の学校にも通っていました。その学校の講師にコンサルタントの方がいたのですが、その先生の話の方が会計士の勉強より惹きつけられた。これが自分のやりたいことじゃないかと思って、初めて経営コンサルタントという道が見えてきました」

就職活動では大学で開催された合同会社説明会で、外資系企業2社と日本企業1社の3社のコンサルティング企業の話を聞いた。

「外資系企業の1社は説明してくれた方が優秀すぎて、自分はこうはなれないなと。日本企業の方は話がつまらなすぎて、こんな風にはなりたくないなと。でも、もう1社の外資系企業の方は学生を笑わせることに全力投球で(笑)、そういう人たちがいる会社が輝いて見えたためエントリーしました」

そしてその外資系コンサルティング会社に入社。当時流行り出したERP(企業の資源最適化)の導入を支援したり、業務変革で会社の生産性を上げたりといったプロジェクトで大手企業の経営支援に携わった。

「ちょうどその頃、副業としてパチンコホール経営企業様とも数社とお仕事をさせていただく機会があり、事業計画書を作らせていただいたりしていました。パチスロにハマり、『アラジンA』や初代の『北斗の拳』をよく打っていた頃でした(笑)」

その後は日本の大手電機メーカーのコンサルティング事業部に転職。

「一度外資系の会社に入ってしまうと、社会を上から目線で見るような人間になってしまうような気がして、日本企業の厳しさを知りたいと思って入社したのですが、肌に合わずに1年で退職しました。実はぼくは8回転職しているんです(笑)」

3回目の転職で出会ったのがオンラインゲームを手掛ける会社。親友に誘われて何となく入社したが、そこが転機になった。

「マネージャーとして入社して、いきなり30人ぐらいのメンバーがいたんですが、専門知識が豊富な部下とどう関係を構築していくか、社内の決まりごともほぼなく、自分の役割さえも曖昧な中で何をするかなど、本当に勉強になりました。会社が50人を超える頃には経営全般に関わりながらゲームをプロデュースしたり、CMを制作したり、いろんなことに携われて、会社の全機能に触らせていただいた。会社という組織がどのような仕組みで成り立っているのかはもちろんのこと、急激な成長に伴いどのように変化していくのか、どうすれば人が動いてくれるのか。いままで経験したお堅い企業とはまったく違う企業風土で衝撃がたくさんあった。いまにつながるベースができたのがその会社だったと思います」

クライアントの真のパートナーでありたい

その後、更なる成長を求めて復帰したコンサルティング会社では、業界を問わずさまざまな案件を任され、プロジェクト全体を推進する立場を務めた。一方で、転職を重ねるにつれ、職位もどんどん上がったが、徐々に経営方針と自分の考えにギャップを感じるようになった。

「自分にとって最高の会社はここではない」

そう感じて退職を決意。その会社で同僚だった6人と起業した。

「みんな会社への不満が爆発している状況で、せっかく出会ったのだから、共にどこにもない会社を作らないかと立ち上げたのベルテクス・パートナーズです」

ベルテクスとは頂点や多角形を示す単語。ロゴマークの七芒星には7人の尖った個性で不可能を可能にするという想いが込められた。社名にはあえてコンサルティングの名を冠していない。それには理由がある。

「コンサルティングというのは一つの方法に過ぎず、本当に自分たちが目指している姿であるクライアントの真のパートナーでありたいという強い願いと確固たる意思があるからです」

傍から見れば上場を目指すコンサルティング会社というイメージがあるが、山口社長にそういう意思はまったくない。

「一時期、社内でそういう話をしたら猛反対されました(笑)。上場した会社がどうなるかをわかっている人間もいますし、今の自由度みたいなところをみんながこの会社に求めているところもある。じゃあ上場は目指さずにいまの環境を守っていこうと。そもそもぼくたちはコンサルタントをやりたいわけでもないし、ITビジネスをやりたいわけでもない。お客様のビジネスをもっと成長させていきたい。そこに一番興味があるからです」

同社の事業内容は新規事業創出やDX推進支援など多岐にわたる。支援先に名を連ねるのは誰もが知る大手上場企業。創業から8年。これまでに300を超えるプロジェクトに関わってきた。

「最近は、本業だけでは将来が見えないという企業様も多く、実績としては新規事業の支援が一番多いのですが、ただ事業立ち上げを行うだけではなく、新規事業のための組織づくりや、メンバーの育成など、さまざまな関わり方をさせていただいています。クライアント様とお話をしていく中で、それならこういうサービスはどうですかといった感じで生まれるサービスもあり、常にクライアントの要望や課題に寄り添うのが我々のスタイルです」

ベルテクス・エンターテインメント山口正智

 
AIを活用したデータドリブン経営へ

そうした中で、2023年1月にベルテクス・エンターテインメントを設立。その経緯はこうだ。

「きっかけは身近に業界経験者がおり、合田観光商事様とのお付き合いの機会を頂けたことでした。最初は1カ月ぐらいの社内診断案件だったんです。その結果について社内で議論しているうちに自分が関わるようになって、話がどんどん大きくなっていった。パチンコ業界から見ると『よそ者』のベルテクス・パートナーズという会社が入っていくことをどのように思われるかを考えると、別の会社を作り、ぼくらは本気でこの業界でやっていくんだという決意をしっかり示すべきと考えました」

では、合田観光商事にはどんな課題があったのか。

「RPAや業務の自動化を進める余地があるのではないかという仮説から入ってみたのですが、調査してみたところ、まったくその余地がなかった。エクセルのマクロのプロフェッショナルがたくさんいらっしゃって、自動化・効率化がかなり進んでいたのです。ただ、そのテンプレートやオペレーションが店舗によって違う。それでも店舗ごとにきちんと最適化ができていて、これを壊す必要はないと思いました。ならば、ぼくたちができることはもっとないかと、いろいろとヒアリングをさせていただくと、社内の縦と横の連携の部分で課題がいくつか見えた。さらに、経営層は次の成長に向けた打ち手を探っておられた。そこで新規事業やDXの話になり、今回のAI導入という大きな話になったという感じです」

AI導入にあたり、まず取り組んだのが先端技術活用ワークショップの開催だった。デジタル人材育成のために合田観光商事の15人の社員が22年11月から23年2月にかけてベルテクスの研修を受けた。そして23年5月から新しいプロジェクトがスタートした。データ経営AIソリューション「Himawari Brain Pro」を導入・活用し、現状の課題である勘と経験に基づく経営スタイルから脱却し、AIを活用したデータドリブン経営への変革を目指すものだ。23年12月からは6店舗でテスト導入がスタート。今春には全店舗で導入が始まる。

「合田観光商事様には、パチンコ業界で最初のクライアントになっていただいて、今回のこのAIを業界内に広めていきたいという思いも持っていただけた。ぼくらがやりたいって思ってることにすごく協力いただいてるところは本当に感謝しています。今回の取り組みで必ず社内に大きな変革が起こります。これまで変わりたいと思っていながら変化できずにいた状況に対して、AIを活用して変化のきっかけが作れたことは、クライアント様の想いに応えられた部分ではあるかなと思ってます」

目指すのは変革実現パートナー

市場規模が右肩下がりのパチンコ業界の中で、業界を、企業を変革したいという経営者は多い。合田観光商事が今回取り組んだDXによって、それは可能になるのだろうか。

「当社は変革実現パートナーを標榜しています。変わりたいのに変われない企業や人に対して寄り添い変革を実現できることが当社の強み。これまでの常識に囚われていたり、変化を嫌う関係者の抵抗により現状を変えられない会社さんもありますし、ある程度経営者が主導権を持って変えられている会社さんもあります。それぞれの会社でステータスが異なると思うんですが、ホール企業様は多くの従業員を抱えていらっしゃって、地域にも責任を持たれている。DXによって業務負担が軽減した先に、社内のリソースを活用して将来性の高いマーケットに進出していただくお手伝いまでできればと思っています。その結果、全国規模や海外でもビジネスができるようになっていただけるとすごくいいですよね。資金があって人材がいる。あとはやる気と目指すビジョンさえあれば、実現できると信じています」

ベルテクスは、ただの提言を行うコンサルティングではなく、伴走型で一緒に目標を実現することを基本スタンスとしている。

「その先はさらに自走化というところまでやっています。自分たちと仕事をすることでお客様が成長していく。さらにぼくたちがいなくなっても今度は自分たちで物事を推進できるようにサポートしています」

山口社長はいま、ホール経営者と積極的にコンタクトを取っている。

「ホールの経営者の方たちとお話しさせていただくと、課題意識をお持ちで、しっかり勉強もされていて、もっともっと会社を良くしていきたい、業界を良くしていきたいと考えられてる方がいらっしゃる。そういう熱い想いのある経営者さんに対して、ぼくたちが良きパートナーになれればすごく嬉しいなと思っているところです。ぼくが最初にコンサルタントという職業を選んだのも、自分の力で人の役に立ちたいという想いが一番にありました。偉そうに聞こえたら申し訳ありませんが、これまでどうにもならなかった課題についても、まずはお話を聞かせてください。我々がその想いと変革を実現する真のパートナーになることをお約束します」


取材・文=野崎太祐(アミューズメントジャパン)
※『月刊アミューズメントジャパン』2024年2月号に掲載した記事を転載しました。


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