
No.10005359
省力化から価値創造へ|マースエンジニアリング
INTERVIEW
マースエンジニアリング
美濃谷雄一 取締役 営業企画部長
設備・システムが実現する新たな役割
2024年に発表したホールトータルシステム「EVOALL(エヴォール)」シリーズを皮切りに、省力化の先にある価値創造を掲げ、データ活用を軸に新たなホール経営を提案してきたマースエンジニアリング。2年ぶりの新製品内覧会を9月に開催する同社の美濃谷雄一取締役営業企画部長に、マースが描く新時代における設備機器・システムの開発について聞いた。(文中敬称略)
──2024年の展示会から2年が経ちました。この間、ホールを取り巻く環境はどのように変化したと感じていますか。
美濃谷 この2年間で最も大きな変化は、スマート遊技機が完全に業界のスタンダードになったことです。特に4円パチンコ、20円パチスロでは高い普及率となり、スマート遊技機の中での入れ替えサイクルも活発になっています。一方で、ホール運営では業務効率化やDXがさらに進み、人材不足のなかでも限られた人数で店舗を運営することが求められるようになりました。こうした環境変化の中で、設備機器にはこれまで以上に大きな役割が期待されていると感じます。もう一つの大きな変化は、スマート遊技機によって取得できるデータ量が飛躍的に増えたこと。これまでは取得できなかった遊技データも活用できるようになり、営業戦略や顧客分析に役立てられる情報が大幅に増えました。
──そのなかで、マースの製品には、どんな優位性がありますか。
美濃谷 マースの「ユニコン」は、ユニットとホールコンピュータの機能を一体化したシステムです。スマートユニットが普及することで、ホールコンピュータと同等のデータをユニット側でも取得できるようになります。将来的には、ホールコンピュータの役割そのものが変わる可能性もあると考えています。データを「集める時代」から「活用する時代」へ。その変化は、ホール経営そのものを変える可能性を秘めています。
──2024年に発表した「エヴォールシリーズ」は、市場でどのように評価されていますか。
美濃谷 エヴォールシリーズはホール運営の利便性向上と効率化、省力化を徹底的に追求し、お客様の売上と利益の最大化に貢献することを目的に開発しました。導入いただいたホール様からは、業務効率化だけでなく営業支援の面でも高い評価をいただいています。
アナライズレポートはホールの健康診断
──具体的にはどんな製品でどんな機能が?
美濃谷 代表的な製品はエヴォールクラウドです。営業計画、シミュレーション、会員管理、接客支援、景品管理におけるABC分析などを提供します。これらの機能はそれぞれの機能を個別に提供するのではなく、一つのシステムとして連携させることで、店舗全体の運営を効率的に支援することができます。中でも特に評価いただいているのが、会員管理機能の「アナライズレポート」です。以前は複数のデータを組み合わせて会員様の行動を分析していましたが、現在は必要な情報を一枚のレポートに集約し、店舗の状況を瞬時に把握できます。いわば店舗の「健康診断」のような存在です。AIがコメントを自動生成する機能も搭載し、「どの顧客層へどのようなアプローチを行うべきか」といった提案まで自動で行います。
さらに、その情報はスマートウォッチとも連携。優良顧客への対応が必要なタイミングをスタッフに通知し、現場で迅速な接客につなげることができます。単にデータを蓄積するだけではなく、実際の接客や営業活動に結び付けられることが重要だと考えています。エヴォールシリーズは省力化を実現するシステムであると同時に、データを営業力に変えるためのプラットフォームでもあります。効率化だけではなく、「ホール全体を最適化する仕組み」として進化を続けています。
効率化の先にあるのは店舗の価値向上
──マースのモノづくりでは何を大切にしていますか。
美濃谷 当社には、創業以来受け継がれてきた「マーケットイン」と「プロダクトアウト」を両立させるというDNAがあります。マーケットインは、お客様が求めるものを形にすること。プロダクトアウトは、お客様自身もまだ気付いていない価値や、「こんなことができたら面白い」という発想を技術で実現することです。この両方がそろって初めて、本当に価値のある製品になると考えています。これまでにも景品管理システムやパーソナルシステムなど、さまざまなプロダクトアウト製品を世の中に送り出してきました。現在の「ユニコン」もその一つです。ユニットとホールコンピュータを一体化した独自の発想で、スマート遊技機の普及が進むほど、その価値をより実感していただける製品になるでしょう。もちろん、お客様の声を取り入れることも欠かせません。今年の内覧会でも、現場の課題から生まれた提案と、当社ならではの新しい発想、その両方をご覧いただける内容になると考えています。
──2024年の展示会では「省力化」を強く打ち出していました。今年はどんなテーマを打ち出しますか?
美濃谷 省力化という言葉だけを聞くと、「人を減らすこと」と受け取られがちですが、私たちの考え方は違います。設備メーカーの役割は、設備でできることを設備が担うことです。店舗スタッフの本来の仕事は、お客様への接客やサービスの提供ですから、設備が業務を自動化することで、その時間を生み出し、人にしかできない仕事に振り向けてもらう。それが私たちの考える省力化です。
例えばエヴォールクラウドの営業計画や設定シミュレーションが、その良い例です。以前は店長が何時間もかけてデータを分析し、Excelで試算していました。しかし今では、その作業をシステムが瞬時に行えるようになっています。重要なのは、その空いた時間をどう使うかです。ホールはサービス業ですから、分析作業が短縮された分、お客様との会話や接客、店舗づくりに時間を使っていただきたい。そのためにエヴォールシリーズやエヴォールクラウドを開発してきました。私たちが目指しているのは、効率化そのものではありません。効率化の先にある、お客様との新しい関係づくりや、店舗の価値向上です。その意味で、「省力化から価値創造へ」という言葉には、マースエンジニアリングがこれから目指す方向性を込めています。
会員管理を活用して客層に合わせた接客を
──スマート遊技機によって取得できるデータが増えています。今後、そのデータをどのように活用していくことが重要になるのでしょうか。
美濃谷 マースでは以前から会員管理を重視してきましたが、今後はその重要性がさらに高まると思っています。業界内ではよく「全国データ」が話題になりますが、私たちはそれ以上に「その店舗のお客様を知ること」が重要だと考えています。同じチェーンでも店舗によって客層は異なります。全国で人気の機種が、そのまま自店でも支持されるとは限りません。だからこそ、自店のお客様を分析し、その店舗に合った営業や接客を行うことが大切なのです。
その象徴的な例が、40代〜60代のお客様です。ここ数年、業界全体では若年層の取り込みに力を入れてきました。もちろんそれは重要な取り組みですが、一方で2019年と2025年を比較すると、40代、50代、60代のお客様の離反が目立っています。売上や利益を支えてきたこの世代に対して、遊技機選定や接客、イベントなどのフォローが十分だったのか。私は、もう一度そこに目を向ける必要があると感じています。だからこそ、データ分析が重要になります。どのお客様が来店頻度を落としているのか、どの常連のお客様が離反する可能性があるのか。それを把握し、適切なタイミングで接客や販促につなげることが、これからのホール経営ではますます重要になっていくでしょう。マースが会員管理や顧客分析を重視してきたのもそのためです。データは集めることが目的ではありません。店舗がお客様を理解し、一人ひとりに寄り添ったサービスを提供するために活用してこそ、価値が生まれると考えています。
カードレスシステムでスマートフォンを会員カードに
──今年は9月に内覧会を開催します。どのような新しい提案がありますか。
美濃谷 今回ぜひご覧いただきたいのは、「カードレスシステム」です。世の中では会員カードのアプリ化は一般的になっています。パチンコホールでもスマートフォン一つで遊技から精算、景品交換まで利用できる環境を実現します。アプリにはNFC機能やQRコード認証を採用しており、スマートフォンを会員カードとして利用できます。遊技開始や持ち玉の利用、精算まで行えるほか、会員カードを持ち歩く必要もありません。これまで「財布に会員カードを入れたくない」「家族に見られたくない」といった理由で会員カードを敬遠していたお客様にも利用していただきやすくなると思います。
──確かに、いまは多くのサービスでカードがなくなっています。
美濃谷 もちろん、「カードレスシステム」のメリットはカードをなくすことだけではありません。アプリでは遊技履歴や収支管理、遊技機情報の閲覧、店舗からのお知らせやプッシュ通知など、さまざまなサービスを提供できます。お客様にとって利便性が高まるだけでなく、店舗が会員様との接点をこれまで以上に広げることができます。私たちは以前から会員管理を重要なテーマとして取り組んできましたが、カードレスシステムはその考え方をさらに発展させるものです。遊技中だけではなく、来店前から退店後まで、お客様とのコミュニケーションを継続できる基盤になると考えています。
エヴォールクラウドにチェーン店管理機能を搭載
──ほかに内覧会での見どころは?
美濃谷 エヴォールクラウドの機能強化も期待してください。他メーカーのホールコンピュータを導入している店舗も含めて、本部で複数店舗を一元管理できる「チェーン店管理機能」を新たに搭載します。メーカーの違いを気にすることなく、店舗全体の状況を把握できるようになります。その他、景品払出収納庫は従来の6レーンタイプの他に、運用に合わせて選択できる3レーンタイプを追加します。スペースの関係でセルフ交換システムを設置したい場所に設置できなかったというお声に対応させていただいたマーケットインの製品です。また、島上に設置するタイプの出玉表示機についても新規開発を行いました。視認性の高い大型の表示機で、スマート遊技機時代の課題である出玉感の表現に役立てる製品となります。
──今後、マースはホールにどのような価値を提供していきますか。
美濃谷 今回ご紹介する製品は、単なる新製品ではありません。私たちが目指しているのは、ホール運営の効率化だけではなく、その先にある新しい価値を提供することです。マーケットインとプロダクトアウトの考え方をこれからも大切にしながら、お客様の声に応えることはもちろん、お客様自身もまだ気付いていない価値を提案し続けていきたいと思っています。

1972年1月生まれ。神奈川県横須賀市出身。1996年(株)マースエンジニアリング入社、東京営業所、西東京営業所、営業企画部を経て2020年4月(株)マースシステムズ西日本の取締役営業部長に就任、2022年6月(株)マースエンジニアリング取締役営業企画部長に就任し、現在は営業企画部長兼東京営業部長。趣味はゴルフとスキューバダイビング。
文=アミューズメントジャパン編集部

















