
No.10005401
売る客が「仕入れ先」になる|3.5兆円リユース市場の収益構造を読む
リユース市場が3.5兆円規模まで拡大する中、大手事業者はリアル店舗への投資を続けている。環境省によると、2024年の国内市場規模は3兆4986億円。セカンドストリートは出店を加速し、BOOKOFFも大型総合店の展開を進める。中古品はECでも売買できる。それでも店舗を増やすのはなぜか。鍵になるのは、買取によって仕入れと集客を同時に生み、販売まで循環させるリユース特有の事業構造だ。
リユース市場を見るうえで、注目すべきは市場規模の大きさだけではない。商品をどこから集め、誰に売り、その顧客をどう次の取引につなげるのか。この一連の流れを店舗の中で成立させている点に、このビジネスの面白さがある。市場拡大だけでは大手が出店を続ける理由を十分には説明できない。店舗を増やすこと自体が、仕入れと販売の双方を広げる仕組みになっている。
環境省の「令和6年度リユース市場規模調査」によると、2024年の市場規模は3兆4986億円で、2021年から2.8%増加した。最大の自動車が1兆9213億円を占めるものの、自動車を除いた市場も1兆5772億円あり、同3.9%増だった。さらに環境省は、2030年の市場規模を4兆6000億円、生活者のリユース実施率を2024年の40.8%から50%へ引き上げる目標を掲げている。
市場の広がりと並行して、大手の店舗網も拡大している。ゲオホールディングス傘下のセカンドストリートは、2025年3月末時点で国内880店舗を展開。国内外では同年4月に1000店舗を突破し、2029年3月期までに国内1000店舗を目標に掲げる。ゲオホールディングスは、国内にはまだ商圏を獲得できていない地域があるとして出店余地を見込んでいる。
では、店舗を増やすことで何が変わるのか。一般的な小売業では、客は基本的に「買う側」だ。リユースでは、その客が「売る側」にも回る。家庭にある商品を店舗へ持ち込み、事業者が買い取り、その商品を別の客へ販売する。一つの店舗が販売拠点であると同時に、地域から商品を集める仕入れ拠点にもなる。店舗数が増えることは、売場の増加だけでなく、商品を持ち込める場所が増えることも意味する。
消費者の行動にも、その構造が表れている。ゲオホールディングスが2026年にゲオアプリ会員1759人を対象に実施した調査では、利用経験のある買取サービス・場所で「店舗」が69.2%と最も高かった。買取サービスを利用する理由では「現金化できる」が80.4%、サービス選択時に重視する項目では「買取金額」が82.3%だった。企業調査のため市場全体に一般化はできないが、「不要になった商品を店へ持ち込み、その場で価値に換える」という行動が、店舗への来店理由として成立していることは分かる。
注目したいのは、売る人が店舗へ来るという行動そのものが、事業者にとって仕入れになる点だ。新品小売なら来店客が増えても、それだけで商品在庫は増えない。リユースでは、買取客との接点が増えるほど仕入れ機会も増える。商品を販売する一方で、別の顧客行動から次に売る商品を集められる。この二方向の流れが、店舗網を持つ価値を高める。
ただし、集めれば利益になるわけではない。何を、いくらで買い取り、どこで、いくらで販売し、どの程度の期間で在庫を動かすのかが収益を左右する。ゲオホールディングスはセカンドストリートの収益性向上策として、査定システムの標準化、在庫状況に合わせた売場変更や買取対応、真贋オペレーションなどを挙げている。店舗展開を支えているのは物件数だけではなく、買取価格と在庫をコントロールする仕組みだ。
もう一つ目立つのが、大型化と多商材化である。ブックオフグループホールディングスは2026年5月期、「BOOKOFF SUPER BAZAAR」を中心に11店舗を新規出店した。国内約700店舗の8割超では、本やソフトメディア以外にもトレカ、ホビー、アパレル、貴金属、腕時計、ブランドバッグ、スポーツ用品などを扱う。2026年5月期の連結売上高は1301億円、経常利益は47億円で、いずれも過去最高となった。
商材を増やす意味は、売上カテゴリーを増やすことだけではない。BOOKOFF GROUP HOLDINGSは、幅広い商材を扱うことで「不要になったものをまとめて売りたい」という需要に応えていると説明する。本、服、玩具、スポーツ用品を別々の店へ持ち込むより、一度に手放せる方が利用者の負担は小さい。取り扱えるカテゴリーが増えるほど、一度の来店で持ち込める商品の幅も広がる。品ぞろえの広さは、販売力だけでなく仕入力にも作用する。
買う側の行動から見ると、大型化には別の意味がある。ゲオホールディングスが2026年8月に開設した「スーパーセカンドストリート マーケットスクエア川崎イースト店」は、売場面積約1033坪、商品数約10万点。衣料品だけでなく、家具、家電、楽器、ホビー、スポーツ用品、自転車、貴金属などを扱う。セカンドストリートは大型店から専門店まで複数のフォーマットを展開し、同月には超大型店「スーパーセカンドストリート」が全国20店舗に達した。
リユース品は、同じ商品名でも状態や付属品、使用感が異なる場合が多く、一点物も少なくない。欲しい商品を検索して最短距離で買う行動だけでなく、売場を歩きながら「何があるか」を探す行動が成立しやすい。ゲオホールディングスも、店舗によってはリユース品との出会いを「宝探し」と表現している。ネットでは検索効率が価値になる一方、店舗では当初探していなかった商品との接触も購買機会になり得る。
店舗とECは、どちらか一方を選ぶ関係でもない。BOOKOFFではオンラインストアで注文した商品の店舗受け取りを提供し、実店舗とオンラインを合わせた年間利用客数は8560万人としている。検索や在庫確認はネットで行い、受け取りや買取、実物確認は店舗で行う。それぞれが得意とする行動を組み合わせることで、顧客との接点を広げている。
環境省の2024年推計では、自動車とバイクを除いたリユース市場の購入経路を見ると、「リユースショップ・中古品販売店の店頭」が4468億円で34.9%と最も大きかった。ネットオークションは24.4%、インターネットショッピングサイトは22.2%、フリマアプリは13.8%。オンラインで中古品を売買する環境が整った現在でも、店頭は最大の購入経路を占めている。これは店舗がECに勝ったという話ではない。リユースでは、買取や査定、実物確認など、販売以外の役割まで店舗が担っていることを見る必要がある。
このビジネスの魅力と難しさは表裏一体だ。店舗を増やせば買取客との接点を増やせる。しかし、買い取り過ぎれば在庫が膨らむ。査定額が低ければ商品は集まりにくく、高過ぎれば粗利を圧迫する。扱う商材を広げれば利用場面は増える一方、必要な商品知識や真贋、価格管理も複雑になる。店舗そのものより、「何を、いくらで買い、どこで売り切るか」を仕組み化できることが競争力になる。
大手が店舗を増やす理由も、ここまで見ると市場拡大だけでは説明できない。店舗を増やせば販売する場所が増えると同時に、仕入れる場所も増える。商材を広げれば、売る理由と買う理由の双方が増える。さらにオンラインを組み合わせれば、一つの店舗にある商品をより広い顧客へ届けられる。
リユース事業がつくっているのは、単なる「中古品売場」ではない。買取で商品を集め、在庫を価値に変え、販売し、その商品が再び市場へ戻る。3.5兆円という市場規模以上に、大手各社が店舗投資を続ける理由は、この循環をより多くの地域、商材、顧客へ広げられる点にある。
出典:環境省「令和6年度リユース市場規模調査」 など
文=アミューズメントジャパン編集部







