No.10005414
シリーズ/いま、サンセイを読み解く第3回|SAP導入の狙い 定型業務から考える仕事へ
TOP INTERVIEW
サンセイアールアンドディ
山本和弘
代表取締役社長
サンセイアールアンドディの〝いま〟について山本和弘社長に聞く連載の3回目のテーマは業務効率化。DXを実現するために「SAP」(エスエイピー)を導入した真意を聞いた。(文中敬称略)
──はじめに貴社で導入されたビジネス基幹システムについて教えてください。
山本 サンセイでは2026年に「SA
P」を導入しました。「SAP」とは企業の財務、購買、在庫、生産、販売などの情報を一元的に管理し、部門を越えて業務をつなぐための基幹システム。ドイツのSAP SE社が提供するERPを中核としたビジネスソフトウェア群の総称です。現在180カ国以上で42.5万社以上に導入されています。サンセイでは、クラウド型ERPの「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」と、取引先との受発注や請求などの情報をデジタルでつなぐ「SAP Business Network」を導入しました。さらに、「SAP BTP」という開発基盤を活用し、バーコード受入システムや各種インターフェースを自社で開発。入出荷業務の効率化、データ精度の向上、サプライヤー様との情報連携強化を進めています。
SAP導入はシステムの話ではなく
働き方を変える話
──一般的にSAP導入というと、基幹システムの刷新や業務効率化の話に聞こえます。山本社長は、この取り組みをどのように捉えていますか。
山本 私はSAP導入を単なるシステム更新とは考えていません。これは、サンセイの業務の進め方、そして働き方そのものを変える取り組みです。これまで社内には、人が一つひとつ確認する仕事、同じ情報を複数のシステムに入力する仕事、特定の経験者でなければ判断が難しい仕事がありました。もちろん、そうした業務を支えてきた社員の努力には、本当に感謝しています。一方で、これからのサンセイは、社員が確認や転記に追われるのではなく、データを基に判断し、次の行動を考えられる会社にならなければなりません。
ホール様も、人手不足の中で日々の営業を回しながら、機械選定、営業計画、人材育成、利益管理など、さまざまな課題に向き合っています。そのホール様を支えるメーカーが、定型業務に追われていてはいけないと思うのです。SAPは、業務を標準化し、情報をつなぎ、社員がより価値の高い仕事に向かうための土台と位置づけています。
取引先との情報連携が
安定した供給と品質を支える
──今回のSAP導入では、取引先とのデジタル連携も大きなテーマになっています。ホールに分かりやすく説明すると、どのような意味を持つのでしょうか。
山本 簡単に言えば、部品の発注から入荷、受入、在庫、請求、会計までの情報を、より正確に、より早くつなぐということです。サンセイでは、「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」と「SAP Business Networkを」導入し、まずは購買領域を中心にサプライヤー様との情報連携を進めてきました。さらに、バーコードを使った受入システムや各種インターフェースを自社で開発し、入出荷業務の効率化とデータ精度の向上に取り組んでいます。
ホール様から見れば、システムの名称そのものはあまり重要ではないかもしれません。大切なのは、「必要な時に、必要な品質で、必要な台数を届けられるメーカーかどうか」ということだと思います。遊技機は、多くの部品、多くの取引先、多くの工程によってつくられています。どこかで情報が止まったり、情報に食い違いが起きたりすれば、納期や品質に影響する可能性があります。
だからこそ、サプライヤー様との情報連携を整え、部品や在庫、入出荷などの状況を正しく把握できるようにすることが、最終的にはホール様との約束を守ることにつながります。私は、DXをホール様に見せるために進めているのではありません。ホール様が安心してサンセイを選べる状態をつくるために進めています。
導入して終わりにせず
自分たちで改善できる力を
──今回、バーコード受入システムや各種インターフェースを自社で開発したことも、大きな成果だと聞いています。なぜ、自社でつくることにこだわったのでしょうか。
山本 外部の力を借りることは必要ですし、今回も多くの専門家の皆様に支援していただきました。ただ、すべてを外部に任せてしまうと、導入した後に自分たちで改善する力が会社の中に残りません。サンセイがこれから強くなるためには、自分たちの業務を自分たちで理解し、課題があれば自分たちで改善していける力が必要です。
そこで、SAP BTPという開発基盤を使い、バーコード受入システムや各種インターフェースを自社で開発しました。現場の業務を知る社員が設計や開発に関わり、AIも活用しながら、自分たちの業務に合った仕組みを作っています。現場では何が起きているのか。どこでミスが起きやすいのか。どこに時間がかかっているのか。それを最も理解しているのは、実際に業務を行っている社員です。その知恵を仕組みに反映することで、単なるシステム導入ではなく、現場で使われ、改善され続ける仕組みになります。
これは、ホール様の現場にも通じる話だと思います。どれほど立派な仕組みでも、現場で使い続けられなければ意味がありません。導入して終わりではなく、自分たちで使い、自分たちで育てていく。そこまで含めてDXだと考えています。
確認する時間を減らし
判断する時間を増やす
──今回のテーマである「定型業務から、考える仕事へ」とは、具体的に社員の仕事がどのように変わるということでしょうか。
山本 これまで社員は、確認、入力、転記、照合、部門間の調整といった業務に多くの時間を使ってきました。もちろん、どれも会社を動かすために必要な仕事です。しかし、同じ情報を何度も入力したり、数字が合っているかを人が何度も確認したりする作業だけで一日が終わってしまえば、新しい商品やサービスを考える時間が残りません。SAPによって情報をつなぎ、業務を標準化することで、これまで確認作業に使っていた時間を判断や改善に振り向けたいと考えています。
例えば、どうすればホール様の導入リスクを下げられるか。地域や客層に合った提案ができるか。データから市場の変化をどう読み取るか。ユーザーに『もう一度打ちたい』と思っていただくには、何が必要か。こうした問いに向き合うことが、メーカーとして本来取り組むべき仕事です。SAP導入は、単に社員の作業負担を減らすことだけが目的ではありません。確認する時間を減らし、判断する時間を増やす。社員がこれまで以上に会社や市場、お客様のことを考えられるようにするための取り組みです。
社員からの新しい提案が
DXの成果
──DXによる社員の変化を表す出来事として、これまで事務業務を中心に担ってきた社員の方が、シェア拡大に向けたアイデアをまとめ、役員に直接プレゼンテーションしたそうですね。
山本 はい。私はこうした動きこそが、サンセイがDXを進める本当の意味だと思っています。DXというと「作業時間を何時間減らした」「入力件数を何件削減した」といった効果が注目されがちです。もちろん、それも大切です。しかし私が最も期待しているのは、定型業務に使っていた時間を取り戻した社員が、会社や市場のことを考え、自分のアイデアを提案するようになることです。これまで事務部門の社員は、正確に業務を処理し、営業や各部門を支えることが主な役割だと見られがちでした。しかし、日々の業務を通じて商品や取引先、営業現場の動きを見ているからこそ、気づけることがあります。今回も、自分の担当業務という枠を越えて、「サンセイのシェアを拡大するために、何ができるのか」「営業活動を、別の立場からどのように支えられるのか」を考え、役員に提案してくれました。提案の内容はもちろんですが、自分で課題を見つけ、自分で考え、行動に移したことに大きな価値があると思っています。
DXの先にあるのは
人が考え、改善を続ける会社
──提案の内容だけではなく、事務部門の社員から経営に向けた提案が出てきたこと自体を評価されているのですね。
山本 その通りです。会社を成長させるためのアイデアは、営業や開発、経営層だけが考えるものではありません。所属や職種にかかわらず、現場で気づいた人が考え、提案し、実行に参加できる会社でありたいと思っています。事務部門の社員には営業とは違う視点があります。営業活動を支える中で見えてくる課題もありますし、社内の情報や業務の流れを横断的に見ているからこそ生まれる発想もあります。そうした気づきは、会社にとって大切な財産です。DXによって業務を効率化しても、新しく生まれた時間を別の定型業務で埋めてしまえば、本当の変革にはなりません。その時間を、市場を調べることやデータを見ること、新しいアイデアを考えること、そして周囲に提案することに使ってほしいと思っています。
社員一人ひとりが、与えられた仕事を正確に行うだけではなく、「会社をもっと良くするために、自分には何ができるか」を考えるようになる。今回のプレゼンは、その変化が実際に始まっていることを示してくれたと感じています。
──「定型業務から、考える仕事へ」を象徴する出来事ですね。
山本 はい。SAPの導入や業務の標準化は、それ自体がゴールではありません。社員が職種の枠を越えて考え、提案し、会社の成長に参加できる環境をつくることが目的です。これからは同じような提案がさまざまな部署、さまざまな立場の社員から出てくることを期待しています。そして、良い提案については、役職や所属に関係なく、実行につなげていきたいと思っています。私は、社員が役員に提案しに来ることを、特別な出来事ではなく、サンセイの日常にしたいと思っています。サンセイのDXが成功したかどうかは、システムが稼働しただけでは判断できません。社員から新しい提案がどれだけ生まれ、それが会社やホール様への新しい価値にどれだけ変わったか。そこまで見て、初めてDXの成果だと考えています。
──最後にSAPの導入を通じて、これからサンセイが目指す会社の姿を聞かせてください。
山本 サンセイが目指しているのは、単にシステムに詳しい会社ではありません。データを基に人が考え、部門を越えて動き、ホール様やユーザーの課題に向き合える会社です。SAPはそのための道具です。データは、判断するための材料です。標準化は、改善を続けるための土台です。大切なのは、システムを導入したことで、社員が何を考えられるようになったのか。そして、その考えを、どのような行動や提案につなげられるようになったのかです。そして、その先にあるのは、ホール様の導入判断を支えること。品質と供給を安定させること。市場の変化をより早く捉えること。ユーザーに期待される商品を生み出すことです。定型業務を減らすこと自体が目的ではありません。そこで生まれた時間と、蓄積されたデータを、次の価値を考えるために使う。社員一人ひとりが自分の担当業務だけを見るのではなく、会社やお客様のために何ができるかを考え、提案する。サンセイは、そんな会社へ変わっていきたいと思っています。ホール様を支えるために、まずサンセイが先に変わる。それが、今回のSAP導入に込めた私の思いです。

1974年、鳥取県生まれ。2002年4月、株式会社サンセイアールアンドディに入社し、営業本部東京支店に配属。ホール様への営業に従事し、現場のニーズを深く理解する経験を積む。その後、営業本部において販促企画および販売戦略の立案に携わり、事業の発展に貢献。さらに開発製造本部へ異動し、初代「牙狼」の開発を担当するなど、商品開発分野においても実績を重ねる。以降、専務取締役、代表取締役副社長を歴任し、2024年4月、代表取締役社長に就任し、現在に至る。













