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2018年06月01日
No.10000652

「日本版IR」 刊行記念シンポジウム
弁護士・公認会計士らがIR実施法を解説
IR実施法審議入りで関係者の関心高まる

ホテル・外食業界の専門誌を発行する出版社オータパブリケイションズが5月24日、日本型統合型リゾート(IR)をテーマにしたシンポジウムを都内のTMI総合法律事務所で開催。弁護士、公認会計士などがIR実施法を解説した。

シンポジウムは同社が発行する雑誌『日本版IR Vol.1』の刊行記念として開催されたもので、海外IRオペレーターの支援に携わってきた弁護士やIR誘致都市の有識者会議メンバー、マカオでIRを展開するオペレーター企業らが登壇。IR開業に関心を寄せる約100人が参加した。

基調講演の第一部は「IR法案の概要と今後の展望」と題し、TMI総合法律事務所の3人の弁護士が講演。阿部洸三弁護士は、IR実施法が5月22日に衆議院本会議で審議入りした際の安倍総理の、「日本型IRは新たなビジネスの起爆剤となり観光や地域振興、雇用創出といった大きな効果が見込まれる」という趣旨説明の意味することを、「公益性を重視している」と説明。

このことがIR実施法の様々な規定に影響している例として、カジノ施設の先行営業が認められない(特定複合観光施設として規定されているすべての施設が備わった状態でなければカジノ施設の営業は始められない)を挙げた。また、地域振興という言葉は主として<送客施設>と呼ばれている施設にかかってくるとした。
これは2条に<我が国における各地域の観光の魅力に関する情報を適切に提供し、併せて各地域への観光旅行に必要な運送、宿泊その他のサービスの手配を一元的に行うことにより、国内における観光旅行の促進に資する施設であって、政令で定める基準に適合するもの>と定義されているもの。

阿部弁護士は、「これは日本政府の考えが如実に表れていて、海外からの観光客がIRに来たことをきっかけとして、IRをハブとして各地方に行ってもらいたいということ。そして、その旅行商品を個人個人のために組み立てる専門家がいる施設を想定している」と説明した。


松岡亮弁護士はIR整備法の成立・公布から区域整備改革の認定申請までのプロセスを説明。今国会で法案が成立したらという前提で、「おそらく来年の4月から6月には内閣府にカジノ管理委員会が設置され実働を開始するのではないか。その後の国土交通省での基本方針の策定・公表は、2020年の夏頃の見込み」と予測した。

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基本方針が公表されると、それに従って各自治体が実施方針(事業者選定の基準など)を策定することになるが、この作業は自治体のマンパワーによりスピードに差が出るとし、「大阪のような大きな自治体が有利となり、速いところでは2020年の末から2021年初頭になるのではないか」との見方を示した。この結果、IR事業者が選定されるのが2021年中、国に対して区域整備計画の認定申請をするのが2022年の後半頃になると予想した。

ただしこれは作業が最速で進んだ自治体のケースの予想であり、大阪以外の自治体はこれより遅いスケジュールで進むと考えられる。


中山茂弁護士は、特定複合観光施設がどういう施設から構成されるかを改めて説明し、どのような事業者がこれに関われる可能性があるかを説明。「私は<観光魅力増進施設>が最も重要だと思っている」と、2条の<我が国の伝統、文化、芸術等を生かした公演その他の活動を行うことにより、我が国の観光の魅力の増進に資する施設であって、政令で定めるもの>という定義を紹介。「カジノオペレーターは、日本企業が参加するコンソーシアムを組まなければこの施設の実現は難しいのではないか」との見解を示した。
また、<送客施設>についても触れ、「コンソーシアムにせよ業務委託にせよ、旅行業者は必ず参加することになるだろう」と説明した。

IR実施法案では、カジノ施設のほか必要とされる施設(図参照)が一体となった特定複合観光施設を運営する事業者を<カジノ事業者(認定設置運営事業者)>と表現するようになったことを指摘。カジノ事業免許の主体はこの<カジノ事業者>であり、また、会社組織であって組合のような組織形態は想定していないと説明。この会社の株主として5%以上の議決権を持つ場合は、背面調査の対象になる。ノンゲーミング事業に関しては昨年の取りまとめ案と変わっておらず、カジノ事業者の各部門から外部に業務委託が可能。
カジノ事業者が他の事業者と締結する契約には法律上多くの制約がある。認められていない契約の一例として中山弁護士は、「カジノ行為の粗収益に比例する金額を支払う契約」を挙げた。


基調講演の第二部ではあずさ監査法人(KPMG)の丸田健太郎氏が、公認会計士としての視点から、IRの事業モデル(収支構造)および、IR整備法案の11の重要論点の解説をした。
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丸田公認会計士は重要論点11項目を、事業モデルの論点とIR導入プロセスの論点に大別。さらに、事業モデルの論点を「需要サイドの論点」と「供給サイドの論点」に分類。IR導入プロセスの論点を「IR区域数及び見直しの論点=中長期プロセス」と「開業プロセスの論点=短中期プロセス」に分類。それぞれに該当する論点の事業モデルへの影響などを説明した。


基調講演の後には、アジア最大のIRオペレーター、ギャラクシー・エンターテインメント・グループの岡部智日本地区総支配人や、長崎・佐世保IR推進協議会の有識者メンバーも務めた東洋大学国際観光学部の佐々木一彰准教授らを交えたパネルディスカッションなどが行われた。


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