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2018年12月05日
No.10000935

INTERVIEW
ファン育成につながる情報発信を考える
パチンコ必勝ガイド 福井 理 編集人

ファン育成につながる情報発信を考える
パチンコ必勝ガイドの福井さん

ファンがパチンコやパチスロを楽しむために機種情報は欠かせない。ホールとメーカー、そして情報誌やWebがそれぞれの立場でどんな情報を発信していけばいいか。創刊30周年を迎えたファン向け情報誌の草分け的存在『パチンコ必勝ガイド』の編集人に伺った。


「機種の知識をきちんともっているパチプロやライターに、パチンコ依存症はいないというのが、僕の持論です」

逆にパチンコやパチスロの基本的な仕組みをまったく理解していない人ほど、のめり込みやすいと福井編集人は言う。

「『この台は1000回ハマっているので、もうすぐ当たる』というオカルト信者的なユーザーは危ないですね(笑)。遊技機の初当たりは完全確率の独立試行で、パチスロの天井機能搭載機以外は、理論上はいくら回しても当たらないこともあります。こうした基礎知識がないとアツくなって、過度な投資をしてしまいがちです。依存問題対策としても、パチンコやパチスロの基本的な仕組みを、まずホールでわかりやすく説明してほしい。機種情報を提供する僕たちの雑誌も、こうした大前提があって初めて役立ちます」


情報を開示することでファンの裾野が広がる

初代編集長を末井昭氏が務めた『パチンコ必勝ガイド』の発刊は1988年。今年11月で創刊30周年を迎える。90年、読者が投稿した羽根モノの攻略法を掲載したところ大きな効果があり、 一躍”攻略誌“として名を馳せた。攻略法がほぼ存在しなくなった現在は、ゲーム性や演出などを詳しく紹介することで、それぞれの機種をより奥深く楽しんでもらうことが発刊趣旨のひとつだ。

かつて、一部のパチプロだけが独占してきた「勝つための情報」を万人に開示することで、パチンコやパチスロは「勝ち負けの機会が均等な遊び」として市民権を得てきた。また、遊技機が進化するために、ファン向け情報誌が果たしてきた役割は小さくない。

「僕が入社したのは95年。当時、攻略誌は目の敵にされ、必勝ガイドを持ったファンがホールに入店できないこともありました」

遊技機メーカーも当時、攻略誌を敵視して、スペックなどの情報を提供しなかった。必勝ガイドは独自ルートで手に入れた台のプログラムを解析して誌面を作った。

「カタログをもらうために、スーツを着てホール関係者を装い上野のショールームに行くこともありました(笑)」

ホールから実践取材のオファーが来たり、メーカーに広報部署ができ、機種情報が提供されるようになったのは、2000年頃から。基板のバグやハード面での不具合がほぼなくなり、”キズネタ“に基づいた攻略法が存在しなくなったという背景もある。

「ようやく、遊技機を楽しむための充実した情報を導入時期に合わせてファンに提供できるようになりました」


来店取材の効果と広告・宣伝の適正化

機種情報は近年、情報誌やWebサイトに加えYouTubeなどの動画を通してファンに伝えられることも増えた。しかし、ライターなどの来店取材については、広告・宣伝の適正化の徹底がさらに強く求められている。

「僕たちが機種実践番組を作るために動画収録を申し込むと、勘違いされて『いま(集客のための)来店取材は一切お断りしているんですよ』と言われることも増えました(笑)。数年前に比べ、ホールが行う来店取材や収録の広告・宣伝が一段と難しくなっています。ただ、その原因が実は広告・宣伝の最低限のルールを守らない自分たちにあるということを理解している業界関係者はどれだけいるでしょうか」

つまり、行政が適正化の徹底を強く求めざるを得ない状況を自らが作り出してしまっていると福井編集人は言う。

「ライターの出演料の相場は、数年前に比べてかなり高くなりました。ホールも高額な経費に見合った集客効果を求めますから、広告・宣伝を手がける会社の中には、なりふりかまわず告知を行うところもあるのです」

雑誌や動画に出ている人気ライターを間近で見たいというファンは多い。したがって、彼らを呼んでファンに喜んでもらうこと自体に問題はないはずだ。また、機種のゲームフローや設定示唆演出をライターやYouTuberの動画で見て覚えたという人は多く、来店取材と動画の公開はファン層の拡大や稼働促進に貢献している。「著しく射幸心をそそる広告・宣伝」のために、業界の発展に資する本来の来店取材が実質的に封じ込められてしまうのは歯がゆい限りだ。

2016年に設立された一般社団法人 ぱちんこ広告協議会(PAA)には、現在52社が加盟。広告・宣伝のガイドラインを設け、「特定日」や「事前告知」の概念など、いままであいまいだった解釈をできる限り明確にしようという活動が評価されている。福井編集人も加盟企業の一つであるガイドワークスを代表して協議会に出席している。

「広告・宣伝に携わる企業には、元々他の業界で事業展開していたところも少なくありません。他業種でOKだった表現もパチンコ業界ではNGということもあるのに、ペナルティを受けなければ何をやってもいいと考えている人もいます。そういう人たちにも、同じパチンコ業界内で仕事をする仲間として、コンプライアンスの重要性に気づいて欲しい。PAAが、そのきっかけづくりをしていければと思います」


ファン人口回復のカギを握る設定付きパチンコの普及

設定付きパチンコについて、福井編集人は、「せっかくパチンコファンを増やすチャンスだったのに、出足でつまずいてしまった」と残念がる。少台数しか導入せず、設定付きという特徴をうまく活用しなかったり、導入したことや機種の特徴を店内POPなどで積極的にアピールしなかったことがその理由だ。

「昔は、先輩や友達に”パチンコやパチスロは勝てる“と誘われたことがホールに行くきっかけになった人が多かった。例えば、パチスロの4号機には、目押しを駆使して小役の取りこぼしを最小限に抑え、リプレイ外しをすれば設定1でも勝てる機種がありました。設定付きパチンコも同じように、設定推測要素を覚え、上手く立ち回れば勝てる可能性が高くなります。若い人がホールに足を運ぶ契機になるはずだったんですが、登場当初の段階では、自らその芽を摘んでしまったホールが多かったように思います」

設定付きパチンコは今後、既存機種のスペック変えだけではなく、メジャータイトルの新機種もリリースされる。その時が、設定付きパチンコを新たなカテゴリーとして定着させ、ファン人口増加に活用していくための本当のチャンスだと福井編集人は言う。

「設定判別要素などを覚えれば、より楽しく遊べるパチンコであることをぜひ来店客にアピールしてほしい。また、長期稼働機種にするためには、相当腰を据えて育成しなくてはなりません。”低設定しか使わない“と見透かされてしまうと、いったん下がった稼働を回復させるのは至難の業ですから」

設定付きパチンコに限らず、腰を据えた機種の育成は、「特別な日に勝ちやすい台があることをほのめかす宣伝・広告」と対極にある。薄利営業でファンが楽しめる遊技環境を提供する。新規ユーザーが適度な勝ち体験をすることでファン人口が少しずつ回復していく。こんな良い循環ができあがれば、「風営法や条例の制定趣旨」に反する宣伝・広告をする必要もなくなってくるはずだ。


ふくい・おさむ
1972年東京生まれ。新潟県出身。日本大学法学部新聞学科卒。95年(株)白夜書房入社。長期にわたり『パチンコ必勝ガイド』の編集長を務める。2012年より(株)ガイドワークス副部長。サンダーアーム(奥村遊機)でパチンコに目覚めたことがこの道に進んだきっかけ


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