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2018年12月19日
No.10000957

木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
国家資格「公認心理師」への期待
[コラム]カジノ研究者の視点

国家資格「公認心理師」への期待
[プロフィール]日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

厚生労働省は12月2日、今年9月に初めて行われた公認心理師の試験に2万7876人が合格したことを発表した。公認心理師は2015年に成立した公認心理師法に基づき新設された国家資格であり、我が国における「心のケア」の最前線に立つ専門職だ。

我が国における心理系資格は臨床心理士と産業カウンセラーが2大資格であったが、これらは国家資格ではなく、民間資格で、その資格保持者の品質のバラつきなど問題点も指摘されていた(もちろん、質が悪いのは一部であるが)。 

公認心理師は、民間資格とは異なり、国家が付与する公認資格である。しかも資格取得にはおおよそ2年程度の大学等での必須科目の受講と、80時間以上の実習が求められている。そのカリキュラムの中には、ギャンブル等依存への対応も含まれており、パチンコを含むギャンブル等業界においても今後の活躍が期待される。

ギャンブル等依存対策は、多くの精神疾病はもとよりアルコールや薬物などその他の依存と比べても、圧倒的に無資格者による「無手勝流」の支援が中心となってきた領域だ。その理由の第一は、アルコール依存や薬物依存ほど肉体的なダメージが少なく、ギャンブル依存対策に対して医療の関与する場面が非常に少なかったことに起因する。第二に、依存者同士で語り合うグループミーティングという手法が、依存回復にとって有用であるとされてきたことがある。

もちろん、グループミーティングそのものは、依存当事者はもとより、依存者家族にとって有用に働くことも多い。だが、その療法が万人に有効なわけでもなく、また専門的な知識に裏付けられた確立した療法でもない。この点に関する「功罪」は非常に大きく、自団体が推奨する回復プログラムを妄信しすぎた挙句、それに馴染まない依存者に逆に負担をかけるケースもあった。

また、回復支援団体の中には、医学的見地から患者に治療・回復を提供する医療機関を敵視する風潮が一部に存在するなど、緊張関係があったのも実態だ。

そのような未だ機能不全が残るギャンブル等依存対策において、今回新しく登場した公認心理師は、医療がこれまでカバーできなかった依存問題の早期発見、早期介入から始まり予防教育に至るまで、さまざまなシーンにおいて国家資格保持者として活躍することに期待が寄せられている。

ちなみにパチンコ業界も2017年から安心パチンコ・パチスロアドバイザーの独自資格の認定を始めているが、この制度もあくまでいち民間資格に過ぎない。今後は新設の公認心理師を依存対策プログラム内に有効に取り入れ、活用してゆくことも検討が必要となるだろう。


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