2018年11月14日
No.10000900
No.10000900
木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
万博誘致次第で狂うIR整備
[コラム]カジノ研究者の視点
[プロフィール]日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。
目下、我が国のIR業界関係者による最大の関心事となっているのは、現在、大阪が開催都市として名乗りを挙げている2025年の万国博覧会(万博)の開催都市の行方だ。なぜなら、2025年の万博開催が大阪に決定するかどうかは、日本版IRの今後の整備スケジュールはもとより、各都市の競争環境にまで大きく影響するからだ。
大阪ではここ数年、大阪万博誘致とIR誘致がセットになる形で将来の都市開発構想が進められてきた。対象となったのは大阪湾に浮かぶ人工島、夢洲(ゆめしま)。ここはかつて大阪が2008年のオリンピック開催都市として名乗りを挙げた時、先んじて埋め立てを行なった島である。しかし2008年のオリンピック開催は北京に決定し、「大阪オリンピック」の夢は脆くも崩れ去った。結果として残ったのが、大阪府政にとって最大の「負の遺産」となる夢洲だった。
その夢洲が再び「夢の島」として注目されるキッカケとなったのが、我が国のカジノ合法化とIR整備構想だ。2014年4月、大阪府の松井知事は、「負の遺産」となっていた夢洲を日本版IRの誘致候補地とする意向を表明。その後、2016年に当該地域は万博誘致候補地としても指定され、IRと万博の両誘致プロジェクトの候補地として大阪の都市開発構想の中核地域となったのである。