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2019年03月13日
No.10001066

木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
依存症対策推進基本計画案が業界に求めるもの
[コラム]カジノ研究者の視点

[プロフィール]日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

3月7日、政府はギャンブル等依存症対策推進基本計画(案)を発表した。本計画は昨年成立したギャンブル等依存症対策推進基本法を受け政府によって策定された、我が国初めてのギャンブル等依存症対策に関する総合計画を示したものであり、今後、この計画に則って国、自治体、および各ギャンブル等の産業主体がより具体的な対策を講じて行くこととなる。

今回の基本計画案の中で、公営競技にパチンコを加えたギャンブル等産業側が横一線に示した対策案が、本人および家族申告による「アクセス制限」の導入強化である。アクセス制限とは、諸外国のカジノ産業からその導入が広まり我が国の各ギャンブル等産業においても現在導入が進められている、ギャンブル依存者を施設入場させないための仕組みのこと。公営競技の世界では本人もしくは家族の申請によるアクセス制限の提供が2017年から一部開始され、現在では全ての競技場で導入されている。

パチンコ業界における現時点のアクセス制限は、本人申告および「本人の同意を得た上での」家族申告による制度の提供にとどまっており、公営競技が提供している「本人同意のない」家族申告によるアクセス制限は未だ導入されていない。警察庁は今回の基本計画案においてこの点を課題視ししており、平成31年度中の導入を業界に求めている。

また、公営競技ではすでにすべての競技場においてアクセス制限の導入が完了しているのに対し、パチンコ業界での制度採用は現時点で全体店舗数の2割強程度にとどまる。この点に関しても警察庁は業界に対して、制度導入店舗の拡大を強く求めている。

そして何よりも今後の最大の課題となるのが、アクセス制限導入の先にある「実効性」の問題である。現在、パチンコ業界において提供されているアクセス制限は各店舗が導入している会員システムを利用して提供されているものであり、非会員もしくは、カードを利用しないプレイヤーに対してはその制限が十分機能していない。この点に関して警察庁は、現在業界で提供されているアクセス制限の実行性を高めるため、顔認証システムの利用など新技術の適用可能性を検討するよう、今回の計画案において方向性を示している。

ギャンブル等依存症対策推進基本計画案はパブリックコメント(国民からの意見募集)にかけられた後、4月には閣議決定される予定。その内容はすでに内閣官房のウェブサイトにて公示されており、3月26日まで個人・法人も含めて誰でも政府に対して意見を送付することが可能である。読者の皆様も、この数少ない国民が直接政策論議に参加できる機会を活用し、広くパブリックコメントに参加して頂きたい。


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