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2019年02月08日
No.10001018

木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
規制緩和を勝ち取るロビー活動
[コラム]カジノ研究者の視点 

[プロフィール]日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

昨年12月20日、「頭脳スポーツとしての健全で安全な麻雀を推進する議員連盟」(通称・スポーツ麻雀議連)が発足した。発起人には自民党の甘利明選対委員長、岸田文雄政調会長など大物議員が加わり、議連会長には現役大臣である平井卓也・特命担当大臣が就任するという豪華な布陣だ。

本議連はその設立の目的を「健全な環境のもとで頭脳スポーツとしての麻雀が普及・振興し、国民の健康と幸福の向上に寄与すること」としているが、その先には麻雀業にまつわる法規制の緩和、風営法の改正が視野に入っている。当然ながら、この議連組成の背景には全国の麻雀業者を取りまとめる全国麻雀業組合総連合会および、それに関わる各事業者の後押しがある。

風営法の関連分野では、昨年9月に解釈運用基準の改訂が行われ、デジタルダーツ等に対する規制緩和が行われた。これまでの風営法の運用では、デジタルダーツ等はゲームセンターで扱うゲーム機と同様の扱いを受け、その設置運営には原則的に風営法許可の取得が必要であった。しかし、今後は一定の条件の下で一般飲食店などへ自由に設置が可能となる。今回のデジタルダーツ等を巡る規制緩和の背景には、長年にわたる関連業界のロビー活動と、それに呼応する形で動いた「時間市場創出推進議連」(通称:ナイトタイムエコノミー議連)の存在があった。

このように風営法に関わる各産業が積極的にロビー活動を展開し、一部では大きな規制緩和を勝ち取っている一方で、産業規模ではこれら産業よりも遥かに大きなパチンコ業界のロビー力はお世辞にも強いとは言えない。現在、パチンコに関連する議員連盟としては、自民党の「時代に適した風営法を求める議員連盟」(通称:風営法議連)があるが、業界の主だった団体は規制当局である警察庁寄りに動くことが多く、この議連に対する支援や要請もそれほど積極的に行われていない。当然ながら民間による支援が希薄な議連が活発に活動するわけもなく、風営法議連は長らく開店休業状態にある。

風営法は行政当局の解釈運用の幅が広く、パチンコ業界の主だった団体がその運用主体となる警察庁に「寄り添った」活動を行うことには一定の合理性はある。一方で行政当局の主導では、例えば今回デジタルダーツ等の業界で起こったドラスティックな規制緩和は起こり得ない。役所はこのような急激な業界改変を望まないのが通例だからだ。そういう意味では規制当局とのコミュニケーションはしっかりと維持しつつも、一方の政治側からのプレッシャーを必要に応じて利用する、そういう「良い意味での」狡猾さがパチンコ業界にも必要ではないのだろうか。


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