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2019年05月13日
No.10001172

ホール管理者が把握すべき「増税」の対応ポイント

パチンコホールでは「内税」「外税」が議論されるが、そもそもホール管理者は自店が納めている消費税額を把握しているだろうか。
税率アップに向けて、今からホールが手を打っておくべきことを三菱UFJリサーチ&コンサルティングのチーフコンサルタント浦部氏に解説してもらった。




消費税率の話になると、業界内では「内税」「外税」のどちらで対応すべきかが議論される。前回の税率8%への引き上げの際、規則で「遊技料金」の定義を「消費税を含んだ額」とされた。そのため、消費税率8%の現状では4.32円、10%になったときは4.4円が遊技料金の上限額となる。基本的に「4円」でも「4.32円」でも「4.4円」でも「1000円47枚」でも、それは総額表示なので実際は「内税」なのだが、この原稿ではパチンコ業界で使われているように本体価格を従来と変えていないケースを「内税」、遊技料金を値上げする(した)場合は外税と呼ぶことにする。

さて、この「内税」と「外税」のどちらがよいのかという話になると、多くのホール管理者からは「よく分からない」という答えが返ってくる。その最大の理由はホールの管理者が消費税をどのくらい払っているのかを知らないからだ。「あなたのホールで、1日の台あたり消費税金額を教えてください」と尋ねると、ほとんどのホール管理者は回答に窮してしまう。

「顧客から預かった消費税総額」から「ホールが使った金額(業者などに支払った消費税総額)」を差し引かなければ正確な数字が分からない。経理部か経営幹部でなければ、正確な数字が分からないのかもしれない。ただし、ホール管理者ならば「台あたり○○円の粗利は消費税支払いに充てられている」程度の理解をしておくべきだ。それを知らないで内税か外税かと言っても実はあまり意味がない。

しっかりと計数管理ができて長期的な見通しを立てられれば、内税を継続しても2%程度の税率増はどうとでも対応できる。逆に、粗利回復の見通しもないのに顧客にとって負担になるからという見た目上の誤解から、外税化を極端に嫌がったりする考えの方こそ問題だ。


「消費税」の実質支払者は誰なのか?

本来は内税か外税かはその会社が管理しやすいように決めれば、会社のコスト管理という意味ではどちらでもよいものである。しかしこの前提を踏まえた上で、私としては対応可能であれば、外税の方が望ましいと言いたい。なぜならパチンコ営業における内税と外税では、実質的な支払者が異なってくるからである。本質的には次のような違いがある。

単にメダルサンドに1000円を入れたときに46枚払い出しだとイヤがる顧客がいるという話ではなく、どのように負担してもらうべきかを長期的に想定しなおすという話なのだ。

さらにここに遊技機の性能が関係してくる。パチンコもパチスロも新規則機はベース分をしっかり出す仕様になっている。さらに出玉は前の規則の3分の2になっているので、内税を選択した場合、出玉が3分の2に減らされた中から、消費税分を勝った顧客だけに負担してもらうことになる。これは得策とは言えない。むしろ今の遊技機は通常ベースが高くなっているので、サンドからの払出し玉が少なくなることにそれほど神経質にはならないはずだ。だから「外税」ですべての顧客にまんべんなく消費税分を負担してもらった方がよいと考えられる。特に短時間試験の変更の影響で、新規則機は、パチンコもパチスロも玉単価が下がってきており、それだけで台あたり粗利を回収しにくくなる。これはもうすでに多くの店でホール管理者が実感していることでもある。

さらに玉単価が高い旧規則機は、この1、2年で外れていくので、店の平均玉単価の下落傾向は続いていき、たとえ今の稼働状態を維持できたとしても、より回収はしにくくなる。

この上に他の運営コスト増大も乗ってくる。メーカーも今後は遊技機の価格に転嫁せざるを得ないだろう。そうすると「遊技機購入費は増大」する。そして若年顧客の趣味が多様化していることや、主要顧客の高齢化が進んでいることもあり「全体顧客数は今よりももっと減る可能性が高い」。そして人件費を含めた「管理コストは高騰する」という三重苦に陥る。この状況下で、果たして本当に「1日の台あたり消費税分」を新たに勝った人だけに頼って回収し続けられるのだろうか?


過剰サービスを制限
サービスのあり方を見直す


そもそも適正な店舗運営というのは日や月単位ではなく、もっと長期的視野で利益回収を継続できる状態のことを指す。外税をはじめたときに顧客に心理的ダメージがかかることはパチンコに限らずどこの業界でも同じだ。たとえば清涼飲料水の自販機は元々1缶100円だったが、今やほとんどの人が120円であろうが、140円であろうがあまり気にしないでジュースを購入するようになった。最初に外税で転嫁するときはパチンコよりももっと大きな決断だっただろう。

パチンコ業界では、初回ダメージばかりを考え過ぎてしまう。今の顧客へのサービスばかりを追求し「過剰サービス」があふれている。多くのホールが導入している「来店ポイント」などでも同じサービス過剰問題がある。来店ポイントについては、機会を見て詳しく説明したいが、消費税増税時代に対応するには、これをきっかけに、まずは自社が今もっているサービスシステムの使い方や存在意義なども考え直してみる必要がある。



外税にするなら
早めに動くことが肝心


外税に変更するとしたらいつからするべきか。これまでの業界は「顧客にプラスのことは先にやり、マイナスなものは後出しにする」という考えが主流だった。

つまり、現在まだ外税にしていないホールは、内税の方が顧客にとって好ましいと考えており、10月までそのままで営業しようとするだろう。しかし今回それはもっとも非効率な方法だ。

過去の消費税増税時を見ても、その後の景気は1年から1年半にわたって落ち込んでいる。今回もパチンコ業界だけではなく、消費税増税の影響で日本経済全体が10月からさらに大きく落ちる可能性が高い。もともとオリンピック景気というのもオリンピック1年前くらいがピークになり、そこから落ちてくるものである。建設やイベント運営などの受注金額はすべてオリンピック1年前には確定してしまうため、もう上積み分が見えなくなり、景気の見通しが悪くなり、減速するといわれているのだ。

そんな一般経済全体が下降気味で、消費者マインドが落ち、なるべくモノを買わないでおこうとしているときに、ホールからDMがきて「貯玉の引き落としおよび玉数変更のお願い」などとやると、いくら常連客でも受ける衝撃が大きくなってしまう。ましてや10月というのは季節傾向でそこから年末にかけてホール業績が落ちていく時期なのだ。できればもっと早くから外税化を検討し、今の消費税分の転嫁で慣れておいてもらう方が賢明ではないだろうか。



うらべ・まさみつ
同志社大学文学部社会学科卒業後、1992年㈱三和総合研究所入社、2000年主任研究員(現チーフコンサルタントに就任)、2005年三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱発足に伴い現職。




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