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2019年08月13日
No.10001331

木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
カジノ事業者とスポーツチームのスポンサーシップ契約
[コラム]カジノ研究者の視点

横浜F・マリノスは7月26日、日本での統合型リゾート(以下、IR)参入を目指すメルコリゾーツ&エンターテインメントの日本法人とパートナーシップ契約を締結することを発表した。この他にも、7月27日に横浜の日産スタジアムで開催されたユーロジャパンカップにおいても、マカオの大手IR運営事業者であるギャラクシー・エンターテインメント・グループが冠スポンサーを務めるなど、IR事業者が日本のサッカー界に近接する事例が続いている。北海道コンサドーレ札幌のオフィシャルトップパートナーを務めるハードロック・ジャパンの親会社も、アメリカではIR事業者だ。もちろん、彼らが目指しているのは日本における自社の認知向上と、その先にあるIR事業への参入だ。

サッカー界では2005年にパチンコホール大手のマルハンが、大分トリニータのユニフォームスポンサーを買って出た際に「18歳未満禁止の商品やサービスを扱う事業者は不可」とするJリーグの倫理規定に反するとして大きな論争を巻き起こした。4年にわたる論議の末、最終的にマルハンは2009年に大分トリニータのスポンサーから撤退することとなったが、その後、資金難にあえぐ各チームから倫理規定の改正要望が相次ぎ、Jリーグは2013年から「パチンコ」を解禁した。今回のIR事業者によるJリーグへの参画は、そのような過去の軋轢を乗り越えたおかげで実現したものだといえる。

ギャンブル系事業者のスポンサーシップが増えているのは日本のサッカー界だけではない。イギリスのプレミアリーグでは現在1部リーグ加盟の20チーム中9チームが、2部リーグでは24チーム中17チームがギャンブル系事業者からのスポンサーシップを受けており、その数は年々増えている。

一方、日本と同様にギャンブル系事業者によるスポンサーシップに批判的な論調もあり、現在イギリスの野党第一党である労働党の副党首トム・ワトソン議員は、同党が政権を獲得した際にはギャンブル系事業者によるサッカー界へのスポンサーシップを禁止するなどと公言をしている。

このような背景がある中、スポンサーシップを受ける側にいる英国サッカーリーグを運営するEFLは今年、リーグに加盟する全72チームのファン2万8千人に対するアンケート調査を実施した。調査の結果、回答者のうちおよそ72%がギャンブル系企業によるサッカー界へのスポンサーシップを容認していることが判った。一方で、これら容認派のうち87%は各ギャンブル系事業者に対して青少年保護やギャンブル依存などの社会問題対策に関する取り組みを求めており、無条件でこれを容認した層は全体の13%に過ぎない。

ギャンブル系事業者に対して、各種社会問題への対策が求められるのは日本も英国も変わらないようだ。


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