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2022年05月30日
No.10002829

NRC一級建築士事務所
未来産業への投資が新規顧客を創造する

未来産業への投資が新規顧客を創造する
鶴田代表

<特集 仮想空間に飛び込め!>
INTERVIEW
NRC一級建築士事務所 鶴田 一 代表

ニューヨークやロンドンなどのNFTアート先進都市から多くのオファーを受けるNRC一級級建築士事務所(東京都墨田区)の鶴田一代表は、メタバース建築家としても活躍している。仮想空間ビジネスの可能性はどのようなところにあるのかを聞いた。[文中敬称略]

──どのような経緯で仮想空間に注目するようになりましたか。
鶴田 メタバースという言葉が今ほど一般的ではなかった2~3年前から、仮想空間における建築設計の依頼が舞い込むようになっていました。クライアントは海外のゲーム会社だったり、プラットフォームをこれから構築するIT企業だったり。当社が受賞した建築賞を評価してくださったようです。それを繰り返す中で、仮想空間で求められる建築の概念を徐々に学んでいきました。他方でメタバース建築をアートとして捉え、建築的な要素を基にして芸術作品を創る建築作家としても活動するようになりました。東京・銀座で個展を開催したり、AR(拡張現実)を利用したデジタルアートを制作してみたり。作品をご覧になった方から、メタバース建築のご依頼をいただくサイクルが生まれています。

──なぜいま、仮想空間が盛況なのでしょうか。
鶴田 暗号資産の技術を応用したNF Tが発達したことで、仮想空間でも経済活動が安定的に行えるようになったためです。デジタルコンテンツは複製や改ざんが容易で、唯一性や真贋に疑義がありました。しかし識別情報を付与して代替不可能なものにすれば、固有の価値や所有権を立証できます。NFTが新しい産業を生んだと言っても過言ではありません。NFTはさまざまな既存分野にも影響を与えるでしょう。例えばこれまで登記することで所有権を生じさせてきた不動産も、NFTを利用すればもっと簡便になります。人口に対する日本の暗号資産保有率は1・6%。口座数はざっと200 万件でしょうか。この割合は全世界で70位です。暗号資産でこの程度ですから、メタバースでNFT取引する人はもっと少ない。ましてやメタバース建築家として活動するアーティストはさらに少数で、世界的に見ても稀な存在です。

──仮想空間をどのようなものだと捉えていますか。
鶴田 現状はまだ、投資段階にある未来産業だと考えています。利益を即時に生み出すようなものではなく、あくまでプロモーションやマーケティングを行う場といったイメージです。しかしVR、ARゴーグルといった周辺機器やプラットフォームが確立する数年後には、大きな産業に発展するでしょう。元FacebookのMetaをはじめ、多くの産業が投資しているのはそのためです。コロナ禍による社会情勢の急激な変化も、今の隆盛を後押しした要因の一つでしょう。



──仮想空間に関して、ホール業界への提言はありますか。
鶴田 遊技人口が大幅に減少する中、今までどおりの経営戦略で走り続けることは大きなリスクです。今後を生き残るには新規顧客を獲得することの一択しかなく、その打開策になりうるメタバースが注視されています。遊技経験がないユーザーに仮想空間で疑似遊技を体験してもらい、新規客として囲い込む。そして実店舗に送客するのです。ですがメタバースはSNSの未来形です。SNSから実店舗に送客できるほどの影響力を持たないホールが、コストを投じて素晴らしい仮想空間を手に入れても、役に立たない無意味な空間になるでしょう。まずは既存のSNSで一定の影響力を構築する必要があり、そこに時間と労力がかかります。また、メタバース内の遊技機における著作権の問題などクリアしなくてはいけないハードルも多くありますが、ファーストペンギンを目指して既に水面下で動いている企業はあります。最後に私が提言できることは、一つです。この時代、日々の業務に追われ、5年先のための時代に沿った施策をしないことが最大のリスクです。

<つるた・はじめ>
NRC一級建築士事務所代表。一級建築士、建築家(リアル/仮想空間)、作家、NFTクリエイター、都市計画/観光政策研究者として、多方面で活躍する。これまでに手掛けた建築物の数々は世界的に評価が高く、複数のアワードを受賞。昨春に設計した都内のホールは、アジアパシフィックデザインアワードで銅賞に選出されている。


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