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2022年08月01日
No.10002983

木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
NFTでガチャが高射幸性化する可能性
[コラム]カジノ研究者の視点

Kiso Takashi [プロフィール]日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2011年、(株)国際カジノ研究所設立。

オンラインゲームの世界が大きく動くかもしれない報告書が政府でまとまりつつある。経済産業省が昨年11月から開始した「スポーツコンテンツ・データビジネスの拡大に向けた権利の在り方研究会」という有識者会議において、デジタルコンテンツのランダム型販売(購入するまで中身がわからない)、いわゆる「ガチャ」方式での販売における賭博罪の成否に関して一定の結論が取りまとめられようとしている。

オンラインゲームにおけるガチャの取り扱いは2012年に大きな社会問題となり、その後断続的に炎上してきた。その後、国内のゲームメーカーを集める業界団体はガチャに対する自主規制を徐々に強め、特に賭博罪との関連性が強いとされるユーザー間でゲームアイテムを取引できる機能を、「本当にその機能によって賭博罪が成立するのかどうか」の検証もないまま自主規制することとなった。社会からの批判に耐えきれないと判断したからだ。

しかし、一旦落ち着いたかに見えたガチャに対する論議が再燃するキッカケとなったのがNFT(Non Fungible Token=非代替性トークン)という、特定のデジタルコンテンツにまつわる権利の取引履歴を改ざんの難しい状態で保持してゆく技術の登場だ。現在、海外を中心にそのNFT技術を採用したオンラインゲームが増加しつつあるのだ。

経済産業省の有識者会議は、NFT技術が我が国の現行制度上どのように扱われうるのか、そして未来に向かってどのように制度を形成していくべきかを検討するもので、この中で改めて、かつて社会問題となったデジタルコンテンツのガチャ方式での販売とアイテム取引(ユーザーが偶然に獲得したレアアイテムを二次流通市場で高値で転売できる)の関係に関して論議の整理が行われつつあるのだ。この取りまとめの方向性次第では、かつてのガチャ問題において業界自主規制が敷かれたオンラインゲームに、再び強い射幸的要素が復活する可能性がある。

現在、パチンコ業界ではパチンコ遊技をしつつ、同時に手元のスマホでゲームを遊ぶプレイヤーの姿はざらに見られる風景であるが、オンラインゲームにより強い射幸性が導入された場合、それがパチンコ産業との競合が起こる可能性がある。日々新しく生まれる技術動向はもとより、それが周辺産業にどのように採用されてゆくのかを見極めつつ、パチンコ業界はこれをどのような形で取り入れる青写真を描くのか。しっかりと準備をしておくことが必要だろう。


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