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2022年08月05日
No.10002996

ESG経営を始めよう! ④
パワハラを防止することもESG経営の重要な課題です

やまなか・けんじ 1970年東京生まれ。石嵜・山中総合弁護士事務所代表弁護士。専門分野は労働法。94年司法試験合格。96年京都大学大学院修士課程修了。98年弁護士登録。2005年から専修大学客員教授に就任(現在まで)。中央大学の客員教授や大阪大学大学院の招へい教授なども歴任。19年関東弁護士会連合会理事。10年からPTB評価委員会の委員。

INTERVIEW ③
PTB評価委員会委員/
弁護士

山中健児さん

──労働環境改善の課題の中で、最近クローズアップされているのがパワーハラスメントです。

山中 今年の4月1日に、「労働施策総合推進法」(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)が全面施行されました。罰則はありませんが、パワハラに対する行政指導が行えるようになりました。もちろん、暴行脅迫を伴うパワハラは刑事罰の対象ですし、精神的苦痛に対する慰謝料の請求など民法の規定に従って被害に対処できる仕組みもあります。

──「労働施策総合推進法」が策定された主旨のひとつは「職業生活の充実」です。パワハラ防止がなぜ必要なのでしょうか?

山中 企業が社員一人ひとりの職務遂行能力が妨げられないように職場環境への配慮と調整を行うことは、働く者の人格権の保護に繋がります。人格権は、憲法の幸福追求権から導かれる基本的人権であり、パワハラ行為は、被害者にとって人権侵害となる行為です。このような問題意識から、今回「労働施策総合推進法」では、パワハラ防止のための各種取組みが企業に義務づけられることになりました。パワハラには、企業にとってもデメリットが少なくありません。SNSなどで社会的な制裁を受け、その結果優秀な人材が集まらなくなることもその一つです。

──パワハラの抑止以外にも、業務改善は「職業生活の充実」に繋がります。最近は、どんな業務改善に取り組んでいる企業が多いですか?

山中 いわゆる、「はんこ業務」のような仕事の解消に取り組む企業が増えました。ワークフローシステムを導入したり、RPA(Robotic Process Automation)のようなアプリケーションで業務を自動化し、長時間労働の解消を図る企業も増えています。ホール企業では、本部だけでなく店舗にも広げていくことも重要ではないかと思います。社内に委員会を作って、他の「時間のかかる非効率な業務」を洗い出し、優先順位をつけて改善していけば、さらに効果が挙がります。

──ESG経営のうち、ガバナンスの対象は多岐にわたりますが、中でも重要な課題は何でしょう。

山中 ガバナンスとは、経営課題として何をコントロールしていくかということになりますが、近年は情報管理と過重労働の防止が大きなテーマになっています。ホール企業もこの二つを意識しているところが増えているのではないでしょうか。

──ホール企業がガバナンスに取り組むメリットは何ですか?

山中 ひとつは、やはり優秀な人材の確保です。ホール企業は給与が世間相場よりも良いにもかかわらず、就職先として高く評価されているとは言いきれません。最近は労組のあるホール企業もあり大分少なくはなりましたが、小さな法人では、過重労働やパワハラが起こりがちです。こうした職場環境を変えるためには社員教育も大事ですし、本部が各事業所で起きた事象をきちんと管理し対処する「全体的なガバナンス」が必要です。企業統治がきちんとできるようになれば就活生の評価も上がり、優秀な人材の確保や企業価値の向上に繋がっていくはずです。

※『月刊アミューズメントジャパン』2022年8月号に掲載した記事を転載しました。


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