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2023年10月23日
No.10003855

航空機リース事業を次のステージに | ダイナムジャパンホールディングス
蓄積したノウハウをパチンコ関連企業へ

航空機リース事業を次のステージに | ダイナムジャパンホールディングス
DAILの安藤CEO(左)と佐藤取締役 ※エアバスA320の前で撮影

ダイナムジャパンホールディングス(以下「ダイナムジャパン」)のグループ会社であるDynam Aviation Ireland Limited(本社:アイルランド・ダブリン、以下「DAIL」)が航空機リース事業を本格化している。グループ内でパチンコ事業に並ぶもうひとつの事業の柱に育てていく方針で、航空機リースの主要マーケットであるアイルランドで得た経験をパチンコ関連企業と共有し、更なる成長を目指す。


9月6日に都内のホテルで開催された航空ファイナンス投資に関するカンファレンス。このイベントの中で行われたパネルディスカッションの登壇者に、パチンコ関連企業2社の名前があった。DAILの安藤克彦CEOと、タツミコーポレーションの李煥辰社長の2人だ。

DAILの安藤CEOは現在、航空機リースの主要マーケットであるアイルランドのダブリンを拠点に航空機の調達を担っている。タツミコーポレーションの李社長は8年前から航空機への投資を行っていて、DAIL同様にアイルランドで会社を立ち上げることを模索したが、コロナ禍などもあり断念した経緯があったという。

李社長はパネルディスカッションの中で「(日本の)リース会社からの案件はありがたいが、その価格が妥当なのかを検討することが非常に難しい。本来はダイナムさんのように自分たちで動かせるようになりたかった」と悔しさをにじませた。

カンファレンス_ダイナム・タツミ
都内で行われたカンファレンスに登壇したタツミコーポレーションの李社長(左)と安藤CEO


日本における航空機リースマーケットへの疑問

ダイナムジャパンが航空機リース事業をはじめた背景には、さらなる企業成長に向けた事業多角化の狙いがあった。本誌の取材に安藤CEOはこう答える。

「パチンコ事業とは別に収益の柱となるビジネスを作ることがグループ全体の課題でした。航空機リースはパチンコ業界の経営者にとって馴染みがある事業。船舶や不動産への投資と比べて残価変動リスクが低く、安定したリターンが得られる。そうした特性を踏まえて航空機リース事業への参入を決めました」

とはいえ、今日に至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。2015年に創業家の持ち株会社としてSATOアビエーションを香港で設立。しかし、航空機を買いたくても買い方がわからず、1機目は日本のリース会社から購入する以外に選択肢がなかった。

日本での航空機リースは大手リース会社などが手掛けているが、投資家の目的の多くは法人税の繰り延べや相続税対策。航空機を購入して減価償却を取ることで事業収益を抑制し、長期にわたって税を繰り延べるメリットを受けることを目的とするケースがほとんどだ。しかし、SATOアビエーションには航空機の売買を事業として行っていくという方針があった。そのため、日本のアレンジャーが出す条件に疑問符がついた。

これはおかしい。もっと安く買える方法はないか。

2機目と3機目は世界にアンテナを広げ、紹介者から売りに出ている機体の情報を得て購入した。DAILの佐藤周平取締役は当時をこう振り返る。

「日本では、税金を繰り延べられるなら仕方がないと、アレンジャーが提示した価格を受け入れる投資家が多いのが実情です。一方で、航空機は対象機種が限定されていて資産価値が安定しているため、良い機体を安く買って高く売ればまず間違いがない、ということもわかってきました」

エアラインから新品の機体を購入

そこで次のステップとして、全世界の航空機マーケットのプレイヤーが一堂に集まっているアイルランドに進出。2019年、ダイナムジャパンは首都ダブリンでDAILを設立し、本格的に事業を開始した。DAILが最初に購入した機体は、50社程の世界中の航空機リース会社に直接連絡し、「売る機体があったら買います。情報を全部ください」とコンタクトを取って購入にこぎつけた。

それでもまだ満足はできない。他のリース会社から購入する機体は中古機になるからだ。アイルランドで存在感を増してきたDAILは、セール&リースバックのスキームで航空会社(エアライン)から直接購入する方法にたどりついた。近年は主にエアラインから新品の機体を購入している。

「ピカピカの新造機が手に入るのでリース期間も長く取れ、将来的には値段が上がったところで売却して利益を得ることもできる。これは、世界中のエアラインと連絡を取り合える関係性を作り、彼らから引き渡し当日に100億円近い資金を用意できる会社だと信頼を勝ち得て、初めてできたことなんです」

DAILは現在、SATOアビエーションが保有する分と合わせて16機の航空機を保有・管理。2023年末までに17機に増える予定だ。ダイナムジャパンの決算資料によると、2023年3月期の航空機リース事業の収入は28億7500万円。アイルランドでスタッフを採用しサービサーとしての機能も備えた。航空機リースが単なる投資ではなく、事業として成り立つ基礎はできた。

同業者同士で一緒に良い買い物を

DAILにとって、これからが事業を成長させていくステージになる。しかし課題もある。エアラインと直接取引をするにあたっては、ある程度のボリュームの機数で航空機を購入する必要がある点だ。

一方で、同業者である日本のパチンコ関連企業への想いもある。情報格差のために日本のリース会社の提示する価格が妥当かどうか判断できないまま航空機リースの契約を結んでいないか。リスクの高い機体を購入していないか。本場アイルランドで培ったノウハウを共有することで、言葉やカルチャー、専門知識の壁を取り除き、Win‐Winの関係を築けないだろうか。安藤CEOはこんな例を挙げてそのメリットを説く。

「どうせマグロを買うなら、スーパーで買うのではなく、築地の市場で競りに参加した方が良いマグロが手に入ります」

この例えは、日本で航空機を買うよりアイルランドで買う方が、良い機体を安く買えることを指している。安藤CEOとともにDAILをけん引してきた佐藤取締役はこんな心情を吐露する。

「みなさん、100で買えるモノに110を払う必要はないんじゃないですか、というのが現在の当社の気持ち。同業者同士で一緒に良い買い物ができればいい。そうすることによって投資家さんが増えるのは素晴らしいことだと思うんですね」

冒頭のカンファレンスで、タツミコーポレーションの李社長はこんな発言をしている。
「ドル資産を持ち、ドルのリース料が定期的に入ってくることで、コロナ禍でも(パチンコの)営業を続けることができました。航空機リースには感謝しかない。安藤さんと話をして、ダイナムさんから航空機を買った方が良いのかなと思ったりもします」

安藤CEOは取材の最後にこう話した。

「当社が学んだのは、美味しい投資話は向こうからはやってこないということ。自分から探しに行かなければならないんです。どうせやるなら失敗してほしくない。そのために当社は市場の案内役をするつもりです」


Dynam Aviation Ireland Limited問い合わせ


文=野崎太祐(アミューズメントジャパン)
※『月刊アミューズメントジャパン』2023年11月号に掲載した記事を転載しました。


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