
2026年09月04日
No.10005385
No.10005385
10年で2倍超、クレーンゲーム売上3918億円|なぜ「昔からある遊び」が成長市場になったのか
クレーンゲームが、アミューズメント市場の成長をけん引している。一般社団法人日本アミューズメント産業協会(JAIA)が2026年5月に公表した最新実績によると、2024年度のクレーンゲーム売上高は3918億円で前年度比17.7%増。クレーンゲームを中心とするプライズゲーム全体では4178億円に達した。なお、2025年度のオペレーション売上は現時点で未公表のため、2024年度が最新の年間実績となる。なぜ、昔からある遊びがここまで市場を拡大したのか。数字を追うと、景品、遊ぶ場所、情報との接点が変化してきたことが見えてくる。
プライズ売上は10年弱で2倍超に
JAIAの長期データを見ると、プライズゲームの売上高は2015年度の1896億円から2024年度には4177億円へ拡大した。ゲームセンター全体の売上高に占める割合も、同期間に44%から68%へ上昇している。クレーンゲーム等の設置台数は11万5349台から25万8903台へ増え、こちらも2倍を超えた。ゲームセンターの一ジャンルだったプライズゲームは、この10年弱で施設売上の中心を占める存在になった。なお、JAIAの2026年5月公表資料では2024年度のプライズゲーム売上高を4178億円としている一方、長期推移を掲載するJAIAウェブページでは4177億円と表記されている。本稿では、直近年度の内訳については2026年5月公表資料の数値を用いる。
その中心にあるのがクレーンゲームだ。2024年度のクレーンゲーム売上高は3918億円で前年度比17.7%増、設置台数は23万4000台で同4.0%増だった。クレーンゲーム以外のプライズゲームは260億円にとどまり、プライズ市場の大部分をクレーンゲームが占めている。台数の伸びを売上高の伸びが上回っていることから、単純な設置台数の増加だけではなく、1台当たりの稼働や売上の伸びも市場拡大を支えていると考えられる。
景品の広がりが「遊ぶ理由」を増やした
成長の背景としてまず挙げられるのが、景品構成の変化だ。JAIAは、従来のキャラクターグッズに加えて、菓子や日用品など生活に身近な商品の導入が広がったことで、利用者層が拡大したと分析している。1回100~200円程度から遊べることや、市販品であれば景品の価値を消費者が把握しやすいことも、ライトユーザーが参加しやすい要因となっている。さらに、アニメやゲームなどのキャラクター商品は「推し活」との親和性が高く、好きなキャラクターの商品を手に入れること自体がプレーの目的になっている。
ここで起きているのは、景品の役割の変化とも言える。従来はゲームを楽しんだ結果として景品を獲得する側面が強かったが、現在は「この景品が欲しいから遊ぶ」という消費行動も生まれている。景品そのものが来店理由になり、欲しいものを獲得するまで挑戦する過程もゲームとして楽しめる。クレーンゲームは「遊び」と「モノを手に入れる消費」の双方を備えることで、参加の入口を広げてきた。
SNSが店舗の外にも接点をつくった
SNSや動画の普及もクレーンゲームとの接点を大きく変えた。JAIAは市場拡大の要因として、SNSや動画を通じた攻略情報の広がりを挙げている。景品の入荷情報や獲得方法、実際に景品を取るまでの様子が動画や投稿として発信されることで、店舗へ行かなくてもクレーンゲームに触れる機会が増えた。攻略情報の共有によって、「運任せの遊び」だけではなく、技術やコツによって獲得を目指せるゲームとして認識される機会も増えている。
クレーンゲームは、プレーそのものを映像化しやすい点でもSNSとの親和性が高い。何回で取れるのか、どこを狙えば動くのか、狙った景品を獲得できるのかといった過程に見せ場があり、新景品の紹介も含めて継続的な発信材料になる。店舗内だけで完結していた遊びが、SNSを通じて来店前から消費者と接点を持つようになったことも、市場の裾野を広げた要因の一つと考えられる。
小型化で「遊べる場所」が広がった
市場を押し広げているのは需要側の変化だけではない。供給側ではミニクレーンなど小型機の普及が進み、クレーンゲームを設置できる場所そのものが広がった。JAIAによると、2024年度はミニクレーンを含む小型機の導入拡大に加え、コンビニへの設置や小規模専用店の増加などによって消費者との接触機会が拡大した。プライズゲーム専門店や物販店舗などへの設置も広がっており、クレーンゲームは大型ゲームセンターに出掛けなければ遊べないものではなくなっている。
小型機は設置面積を抑えやすく、従来はゲーム機を置きにくかった場所にも導入できる。JAIAの過去の調査では、景品とプレイヤーの距離が近く、子どもにも景品を見せやすいことなどもミニクレーンの特徴として挙げられている。一方で、2024年度の市場を支えているのは小型機だけではなく、標準型クレーンの高稼働も大きい。遊べる場所を増やして新たな接点をつくる一方、既存の主力機でも高い需要を取り込んでいることが、市場全体の拡大につながっている。
成熟した遊びでも市場は広げられる
クレーンゲーム市場の成長で注目したいのは、まったく新しい娯楽が登場したわけではないことだ。長く親しまれてきた遊びに対して、景品の幅を広げて参加する理由を増やし、小型化や専門店によって遊べる場所を広げ、SNSや動画によって来店前にも接点をつくった。その結果、2024年度のクレーンゲーム売上高は3918億円まで拡大した。市場成長の背景には、単一のヒット商品ではなく、「何を取りたいか」「どこで遊べるか」「どうやって遊びを知るか」という複数の変化がある。
この成長過程は、パチンコ・パチスロ業界にとっても示唆的だ。成熟した娯楽であっても、遊びそのものを大きく変えなくても、「何を目的に参加してもらうか」「どこで接触してもらうか」「来店前にどう興味を持ってもらうか」を変えることで、新たな利用者との接点を生み出せる。クレーンゲーム市場の拡大は、既存の遊びの価値を別の角度から再構築することで、市場を広げた一つの事例と言えそうだ。
出典:一般社団法人日本アミューズメント産業協会(JAIA)「2024年度アミューズメント産業界の実態調査」「クレーンゲームの売上の推移」ほか
文=アミューズメントジャパン編集部















