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2019年04月09日
No.10001122

木曽 崇(国際カジノ研究所 所長)
パチンコ産業 学術的な教育・研究の必要性
[コラム]カジノ研究者の視点

[プロフィール]日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者での会計監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長に就任。

筆者はアメリカのネバダ州立大学ラスベガス校(UNLV)ホテル経営学部をカジノ経営学専攻で卒業した。学生時代からこれまで「カジノ一色」の人間である。

UNLV内には学生に対する教育機関の他、国際ゲーミング研究所と呼ばれる専門研究機関があり、日々の専門研究の実施はもとより、産業人に対するより実践的な公開講座の提供も行われている。UNLVホテル経営学部はこのようなカジノに関する様々な教育研究活動が評価され、現在イギリスの大学評価機関QS社の発行する「世界大学ランキング」の「ホスピタリティ&レジャー経営学部門」において、並み居る世界の有名校を抑えて世界第一位の評価を得ている。

当然ながらUNLVの教育研究活動は、現在7・5兆円産業にまで成長したアメリカのカジノ産業によって支えられてきた。ちなみにUNLVの国際ゲーミング研究所は、カジノ機器メーカーとして日本からアメリカ市場の一画に参入しているコナミゲーミングの寄付によってその運営が維持されている。

一方で日本の大衆娯楽の代表たるパチンコ産業はどうだろうか? ごく一部ではパチンコに関する産学協同研究などが行われてきた例はあるものの、それらはあくまで点としての活動でしかなく、産業に対する学術的・専門的な知見が継続的に積み上げられた学術機関は存在しない。またパチンコ業界に特化した職業学校は存在するものの、その卒業生に専門の学位を提供する学術機関は未だない。日本のパチンコ産業規模はパチンコホールの粗利ベースで3兆円弱と、規模としてはアメリカのカジノ産業の半分程度であるが、GDP比で見ればパチンコ産業は非常に大きい(日本のGDPはアメリカの4分の1)。そう考えると、パチンコ産業の学術的な教育・研究への関心は低すぎはしないか。

学術的な教育や研究は産業の進歩や発展を推進する原動力であるのと同時に、そこで積み上げられた知見は産業が世の中から認知を得るための武器にもなる。例えば現在、政府はギャンブル等依存症対策の観点からパチンコ産業に対する営業規制の強化に向かっているが、「射幸性とは何か?」という根源的な論議や理解がない中、様々な施策がエビデンスレベルの低いまま推進されている。本来ならばこのような局面でこそ学術的に積み上げられた知見が活かされ、効果の低いと思われる不要な産業規制に対する業界側の反証として活用されるのである。だが現在のパチンコ業界にはその術がない。これはひとえにパチンコ業界が学術的な教育・研究に対して無関心であり続けてきたツケでもある。

今回の規制強化の波には間に合わなかったが、今からでも遅くはない。パチンコ業界も産業の未来のために、そろそろ本腰を入れて学術的な教育・研究の集積に取り組むべきではないのか。


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