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2019年10月29日
No.10001421

アミューズメントジャパン
完全分煙化に向け、どう準備をする!?

完全分煙化に向け、どう準備をする!?

すべてのパチンコホールが原則屋内禁煙となる2020年4月1日。期限まで半年を切った今、喫煙専用室を設置するホールが徐々に増え始めている。喫煙専用室を設置する際、どのような点に留意するべきなのか。導入ホールの話などから明らかになってきた。



受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が来年4月1日から全面施行される。不特定多数の客が来店するホールは屋内での喫煙が原則的に禁止されるが、一定の技術的要件を備えた喫煙専用室を設置することは可能だ。

業界内で行われた種々のアンケートによれば、現行プレイヤーの半数以上に喫煙習慣がある。喫煙専用室は彼らの離反を最小限に留める必要最低限の設備と言えるだろう。

今夏以降、それほど数は多くないものの喫煙専用室を設置するホールが増えてきた。しかしそのほとんどが遊技スペースでも喫煙できる状態のため、喫煙専用室を利用する遊技客はそれほど多くない。法改正前に設置する目的は、利用を促すことではなく、来店客に今から周知することだ。

昨年7月25日に改正健康増進法が成立して1年以上が経つが、改正法の内容を全国民が把握しているとは言い難い。遊技客の中には、「飲食店の話だと思っていた」「東京だけじゃないんだ」「改正されたことすら知らない」と話す人もいるという。

つまり遊技客への「周知」には、法改正によって喫煙環境が変わる(遊技中に紙巻きたばこを吸えなくなる)ことを知らせることと、法施行後でも喫煙できる環境を用意していることを知らせることの2つの意味がある。

どの程度の人が改正法の内容を把握しているかは分からないが、完全分煙や喫煙専用室の設置を進めるホール関係者の声を整理すると、高齢層や地方在住者、非喫煙者よりも喫煙者に喫煙ルールが変わることを周知させる必要がありそうだ。

他方、喫煙専用室を設けるための設置業者の人手や部材の供給不足も懸念材料だ。法の効力は、国内すべての業種・業界に及ぶ。設置工事を望む業態はホールだけではないため、改正法施行が近づくほど駆け込み需要が高まると予想される。設置業者から遠い地方の店舗や小規模店舗は、後回しにされる可能性も考えておくべきだろう。


設置後に見えてきた課題

喫煙専用室を設置したホールは早くも課題を見つけている。まず一つ目は、改正法が施行されたあとに実際どのくらいの規模の喫煙専用室が必要になるかだ。

日遊協が作成したマニュアルは、総設置台数500台、稼働率50%、喫煙率50%などの諸条件の場合に、20.8平方メートルの広さを目安として複数室の分散設置を推奨している。しかし稼働率は曜日、時間帯で変動しやすいため、最適な室数が見い出しにくい。

完全分煙を実施したホールの調査によると、喫煙者は平均で1時間に1回、遊技台を離席して喫煙ブースに向かうという。喫煙ブースでの滞在時間は平均5分~6分。つまり喫煙者がプレイする遊技台は非喫煙者のそれに比べて、稼働が約1割下がるということだ。これを解消するためには、喫煙ブースの設置場所などを考慮しなくてはならない。

喫煙専用室を設置しすぎても、コストやスペースが無駄になる。かといって少なすぎても、喫煙するための待ち時間が増える。遊技客のストレスが高まるだけでなく、待ち時間の稼働ロスというホール側のデメリットも発生してしまう。

ホールや喫煙ブースメーカーでも独自に最適な規模を算出している。あるホールではピーク客数の3%、あるいは設置台数の数%に当たる人数が同時利用できる規模を目安としている。これは完全分煙を実施した店舗で調査した際、最大で何人が喫煙ルームで喫煙しているかをカウントしたものをベースとして算出したものだ。ただし、完全分煙のホールは一般的なホールよりも喫煙者の割合が低いはずで、これが最低限の数値になるだろう。

また、あるメーカーはピーク客数の5%程度が同時に喫煙する人数になると想定している。仮にピーク客数を200人とすると、その計算式は以下のようになる。

【200人×50%(喫煙率)×6分(喫煙時間)/60分(1時間)=10】

総客数200人のうち喫煙率を50%とすると喫煙者は100人。その100人が1時間に1回、6分間喫煙するという前提だ。すると総喫煙時間は600分。この喫煙時間を1時間で処理するには、100人が喫煙するタイミングを均等に分散させたとしても、最低でも10人が同時利用できる喫煙専用室を設ける必要がある。それでも1時間中ずっと、常時満員の状態が続く。

設置場所も悩みの種だ。遊技席から離れていては、一服するための移動距離の長さが不満につながるおそれがあるからだ。
  
 
加熱式たばこを吸いながら
遊技できる空間を


もうひとつ、ホールが考えるべき分煙環境は、部分禁煙やフロア分煙だ。経過措置として、当面の間は加熱式たばこに限って、喫煙しながら遊技できる。

ワンフロアであればガラスなどで四方と天井を遮蔽し、一方を加熱式たばこの喫煙が可能なエリア、もう一方を禁煙エリアにする。多層階であれば、特定のフロアだけ、遊技しながら加熱式たばこの喫煙を可能にする。これは喫煙者にとっては喜ばれる可能性が高いだけでなく、遊技をしながら喫煙できるので、稼働ロスの懸念がなくなる。

ただし、これをホールで実施するには障壁もある。まず、遊技機をバランスよく配置できるか、という問題だ。それぞれのコーナーにパチンコ、パチスロを設置する場合、ワンフロアにしてもフロア分煙にしても、新たな島工事が必要になってくる。それには多額のコストがかかるだけでなく、構造上の問題で既存店では実現できないケースも考えられる。

さらに加熱式たばこを吸える空間には、20歳未満の従業員および遊技客を立ち入らせてはならない。スタッフ配置の人繰りや、未成年者と思われる遊技客の年齢確認が必要になるという問題が出てくる。


オペレーションも要検討

完全分煙を進める上では防犯対策も注意点だ。喫煙専用室の利用が進むほど、遊技客が離席する機会は増える。貴重品を放置・紛失したり、ICカードを抜き忘れたりしないように、喚起アナウンスはこれまで以上に必要になる。スタッフの巡回頻度も高まるだろう。

コストや労力負担の増加ばかりが見えるホールの完全分煙化だが、喫煙できる公衆の場所が減っている社会の中で、ホールの喫煙専用室が街のインフラとなる期待感もある。従来とはまったく異なるホール環境へと脱皮するためにも、改正法施行前の準備や周知は、早いに越したことはないだろう。



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