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2019年12月16日
No.10001499

旧ノーマル機撤去でファン減少?
求められる新ノーマル機の早期充実

今月、検定・認定期間が満了した比較的射幸性の低い旧規則機の大量撤去が行われている。この中には、5号機に完全移行した2007年以降に導入、使い続けてきたノーマルタイプのパチスロが多数含まれている。来年以降もジャグラーやニューパルサーを中心とした5号機ノーマルタイプの撤去が予定されていて、ノーマルタイプファンのパチスロ離れが懸念されている。


全体の3割・55万台のノーマル機が消える衝撃

12月、5号機のうち認定期限を迎えた主要高純増AT機に加え、ノーマル機などの「射幸性が比較的低い遊技機」も撤去されている。この中には2007年から導入され、総販売台数約20万台(台数は推計。アミューズメントジャパン調べ。以下同)の北電子の『アイムジャグラーEX』など、ジャグラーシリーズ10機種、約13万台も含まれている。来年1月には、『ハッピージャグラーVⅡ』(設置台数2万8000台)、6月には『ニューアイムジャグラーEX‐KT』(同3万7000台)が認定切れを迎える。

ジャグラーシリーズ以外の5号機ノーマルタイプもごく一部の例外を除き、21年1月までにホールから姿を消す。この中には、パイオニアの『ニューキングハナハナ』(約1万5000台。20年7月)、アクロスの『ハナビ』(約3万5000台。20年12月)、山佐の『ニューパルサーSPⅡ』(約1万4000台。21年1月)など、多くの人気機種が含まれている。

11月、市場に設置されていたパチスロは約170万台。このうち約36%・55万台がノーマルタイプだが、ほとんどが5号機で、6号機のノーマルタイプは全体のわずか1%、約1万7千台に過ぎない。

21年の1月末までに5号機のノーマルタイプは、ほぼ撤去されてしまうが、この日を境にユーザーが6号機のノーマルタイプにそのままシフトしてくれるかと言えば、はなはだ疑問だ。最悪の場合、今まで慣れ親しんだ5号機のノーマルタイプがないならば、ホールに行くのをやめるという選択をするユーザーが大量に発生する可能性さえあるのだ。こうした懸念を杞憂で終わらせるためにも、いま何をすれば良いのか、前回の新基準機移行時の状況にも詳しい識者に聞いた。




5号機完全移行時に学ぶノーマルタイプの重要性

「2007年10月に4号機から5号機に完全移行したときは、RT(ストック)機やAT機ユーザーが大勢ノーマルタイプを打つようになりました」と言うのは、エムシックの三輪勝治氏だ。




図1の「4号機ユーザーの移動先タイプ推移」を見てほしい。同年10月時点で、移行先が最も多かったのがノーマルタイプで51.8%。この年の1月には5号機の『アイムジャグラーEX』が導入されている。翌年6月にかけてパチンコのミドルタイプやMAXタイプが上昇、5号機のART機がまだ10%程度なのは、射幸性の高い4号機を打ってきた層が食指を動かすような5号機がまだ登場していなかったためだ。ところが10年6月には5号機のART機が27.5%と急上昇。これに合わせるようにパチンコのミドルやMAXタイプが下降線を辿っていった。エウレカセブンや新鬼武者など、ある程度高いリターンが期待できるART機が登場。一方で、ミドルやMAXは利益率を上げすぎたのでファンが離れていった。

「5号機への完全移行時と条件は少し違いますが、今回も射幸性の高い機種からノーマルタイプに流れるファンは相当数いるのではないでしょうか」

エムシックの「AI‐CIS」によれば、今年11月、『アナザーゴッドハーデス』『ミリオンゴッド‐神々の凱旋‐』をメインで打つファンがサブで打つ機種は5号機のARTタイプがトップだが、第2位は5号機のノーマルタイプで6号機のART機よりも多い。

「リターン重視のファンでさえも、勝ち体験がしやすいノーマルタイプに魅力を感じていることがわかります」


アミューズメントジャパンは今年9月、P‐WORLDと共同してファン2000人アンケートを実施した。図2は、パチスロ派、パチンコ・パチスロ半々派別の「現在最も良く打つパチスロのタイプ」だ。どちらのユーザーも低メダル貸しを含めて、ノーマルタイプを最も打っていることがわかる。20円貸しに限れば、パチスロ派54.4%、パチンコ・パチスロ半々派48.8%とノーマルタイプの比率はさらに高くなる。


日電協と回胴遊商は今年9月に開催した「パチスロサミット2019」の際にユーザーアンケートを実施(図3)。「今後期待するスペックは?」という質問に対し、回答者約1万3000人のうち、約3000人が「ノーマルタイプ」と答え、ユーザー層の厚さを証明した。

「ファンがノーマルタイプに大きな魅力を感じているのと同様に、ホール側もノーマルタイプの重要性を十分に認識しています」と言うのは、矢野経済研究所・主任研究員の稲田剛史氏だ。



矢野経済研究所は今年8月、全国のホールや本部に「5号機が撤去される21年1月末時点のパチスロスペック・タイプ別の設置比率がどのように変化すると思うか」と聞いた(図4)。

「変わらない」が43.1%。「やや上昇する」が33.8%。比率が低下すると考えているのは2割にも満たなかった。

「これは、6号機になってもノーマルタイプの比率を減らさないと考えているホールが8割以上あるということで、非常に興味深く、注目すべき結果だと思います」


最適バランスが固まればヒット機も登場する?

これまでも6号機のノーマルタイプは何機種も登場しているが、大ヒットと呼べるような機種はまだない。その大きな理由が、6号機のノーマルタイプは獲得枚数が220枚程度なのに、300枚以上獲得できる5号機のノーマルタイプがたくさん残っているためと考えられている。

パチスロ市場の動向に詳しいパチンコビレッジ・マーケティング部 部長の酒見真司氏は、今の状況は5号機完全移行期と非常に良く似ていると話す。


「4号機はリプレイ外しを駆使すれば約400枚獲得できるノーマルタイプもありました。5号機の初代『アイムジャグラーEX』の導入は07年1月ですが、撤去されるまでの半年以上、同じジャグラーでも旧基準機を打つという人が少なくありませんでした。しかし、旧基準機が完全撤去された後は、獲得枚数が少ない5号機のジャグラーでも十分に勝負になるとファンの意識が変化、その後パチスロコーナーの主軸機となっていきました。今回も同じような経緯をたどる可能性はあります」

矢野経済研究所の稲田氏も「6号機のノーマルタイプの標準的な獲得枚数が220枚程度ということを、ファンが認識するようになれば、長期稼働をする機種が必ず出てくるはず」と話す。

「6号機のノーマルタイプのスペックバランスは、まだ手探りの状態だと思います。しかし、BIGの獲得枚数やBIG・REG比率、合成確率、1000円当たりのベースなどの最適なバランスが定まり、『6号機ノーマルタイプのスタンダード』と呼べるような機種が出てくれば、稼働もついてくるのではないでしょうか」(酒見氏)

矢野経済研究所の調査によれば、新基準機に移行する約1年前の2006年12月、千台規模の大型店の平均設置機種数は、パチンコが27機種、パチスロが29機種、合計で56機種だった。今年7月に同じ調査を行ったところパチンコは212機種、パチスロは121機種、合計333機種と大幅に増加。10数年で、設置機種数が6倍にも増えたことがわかった。同研究所の稲田氏は、ファンの嗜好がいかに細分化しているかに注目してほしいと話す。

「ファンの嗜好の多様化に応えるためには、早い時期から計画的に6号機を揃えていかないと、店舗全体の稼働低下を招きかねません」

厚いファン層が存在することや、移行期におけるリターン重視ファンの受け皿として、ノーマルタイプは6号機の品揃えを充実させるために中心となるカテゴリーのひとつだ。

「ジャグラーをはじめ、ニューパルサーなどの山佐系、アクロス系、ハナハナ系などは一定の層に支持されている人気シリーズ。こうした手堅く稼働が期待できる機種を中心に入れ替えてほしい」と稲田氏は言う。

また、ノーマルタイプでも、完全告知だけでなく、技術介入要素があるもの、リーチ目が楽しめるもの、ショートRT搭載で液晶演出が楽しめるものなど、さまざまなタイプにそれぞれファンが付いていることも知っておきたい。自店の客層や5号機時代のタイプ別稼働実績を踏まえて具体的な機種を選定していくと良いだろう。


ゲーム性把握した運用でパチスロ市場の未来を拓く

エムシックの三輪氏は、品揃えを充実させるだけではなく、もう一歩踏み込んで稼働促進のための工夫を積極的にしてほしいと言う。

「早めに6号機ノーマルタイプを浸透させていくためには、まず店側が『5号機のノーマルタイプがあるうちは、どうせ稼働が伸びない』という先入観を捨て、さまざまな施策を実施すべきです。例えば、6号機ノーマルタイプだけのバラエティコーナーを店内の入口付近など、目立つ場所に設置する。5号機ノーマルタイプの島のすぐ近くではなく、AT機やパチンココーナーとの動線上に配置するのも良いでしょう。もちろん店内POPで存在をアピールすることも大事です。パチンコや他のカテゴリーのパチスロを打った後、ノーマル機を打ってから退店する『ちょい打ち派』が意外なほど多いことがわかっていますから、しっかりと設定を入れて期待を裏切らない運用をすれば、新たな稼働の柱として成長していくことも期待できるのです」

パチンコビレッジの酒見氏は、「5号機のノーマルタイプが残っている間は、6号機のノーマルタイプの普及は容易ではないでしょう。それでも、6号機のノーマルタイプをファンに浸透させていくために業界全体で盛り上げなければいけないと思います。パチスロの入門編として打ってもらい、新規ユーザーを獲得するためにも、絶対に取り組むべきだと思います」と話す。

6号機のノーマルタイプは高射幸性機種に疲弊したファンの『低投資で大当たり体験をしたい』という願いにもマッチしている。こうしたファンニーズにも対応できる営業スタイルを早めに確立していかなければ、冒頭の写真のようなベニヤ板の光景が再び現実のものになってしまうかもしれない。そうならないためには、高設定域も上手に使い、当たりやすく遊びやすい6号機のノーマルタイプ本来のゲーム性を多くのファンに知ってもらうべきだ。かつて、MAXタイプに疲弊した多くのファンは、より射幸性の低い機種に流れていった。こうした状況から甘デジが一つのカテゴリーとして確立したように、6号機のノーマルタイプも将来の収益の柱の一つとして育成していきたい。長期的視点での取り組みは、いずれしっかりした「結果」を生み出してくれるはずだ。




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