No.10001501
廃棄台2021年問題
300万台を適正処理できるか!?
社会問題化のリスク回避を
2021年1月末までに旧規則遊技機の完全撤去が求められている遊技業界。現在は新規則機の供給量が懸念されている段階だが、その先には、大量に排出される使用済み遊技機の処理という大きな問題が潜んでいる。約300万台と言われる旧規則機を確実に適正処理するためにはどうすればいいのだろうか。
野積み問題は二度と起こさない
2019年10月28日、日本遊技機工業組合(日工組)は「パチンコ・パチスロ業界関係各位」宛てとして「旧規則機の廃棄処理について(お願い)」と題した文書を発信した。旧規則機が設置の有効期限近くまで設置され、その後、集中的に使用済み遊技機が発生した場合、適切な処理が滞る恐れがあることから、「現在倉庫等に保管されており、今後設置することができないいわゆる検定切れ、認定切れ遊技機については早めに排出されますよう、また処理にあたっては、日工組回収システムや遊技機リサイクル選定業者の利用促進をされますようご理解を賜り、業界一丸となって適正処理を推進して参りたい」と協力を求める内容だった。
背景には、かつての廃棄台の野積み問題という苦い経験がある。1995年、埼玉県寄居町で大量の使用済み遊技機が野積みされたまま放置されていることが新聞等で報道されて社会問題化した。その際、業界団体が協力して費用を負担し、1996年に約4万台の撤去作業を行った。その後、2002年には栃木県鹿沼市と宇都宮市で計約21万台の野積みされた廃棄台を撤去した。日工組では「野積み問題を二度と起こさないために、旧規則機の処理問題については一丸となって取り組んでいく必要がある」と危機感を募らせている。
信頼できない業者には渡さない
では、2021年1月末までに撤去しなければならない旧規則機は現在、どの程度あるのだろうか。正確なデータが存在していないためあくまでも推計だが、現在までの新規則機の普及状況を見ると、パチンコは160万台ほどの旧規則機が設置されているとみられ、さらにホールが倉庫などに保管している旧規則機も含めると200万台を超えると推測される。パチスロは認定機が少ないため倉庫に保管されている遊技機は少ないとみられるが、設置ベースで旧規則機が130万台ほどあるとみられる。合計で300万台を超える旧規則機を2021年1月末までに新規則機に入れ替えなければならない。
仮に、多くのホールが認定機を有効期限まで使用するとすれば、2021年1月末近くから大量の使用済み遊技機が発生することになってしまう。では、使用済み遊技機の処理能力はどの程度あるのか。日工組回収システムにおける指定再生処理会社4社の中で最も規模が大きいユーコーリプロの竹村津代司遊技事業部営業課課長は「現在、北九州と埼玉の2工場体制ですが、愛知県に3つ目の工場を新設中で2020年の春に操業開始予定です。それでも3工場で1日3000台、月に7~8万台。頑張っても年間90万台から100万台程度ではないでしょうか」と話している。
かつてはリサイクルで販売できる部品以外は破砕機に入れて処理をしていたため、1工場で100万台以上処理していた時代もあった。しかし現在はリユース、リサイクルのために部品どりを手作業で行うために時間あたりに処理できる台数は大幅に少なくなっているという。日工組回収システムの指定再生処理会社の他の3社(エコフレンドリー、リサイクルテック・ジャパン、中部第一輸送)や、日遊協が指定する遊技機リサイクル選定業者、遊技機リサイクル協会の指定業者を合わせても、年間で200万台以上のパチンコを適正処理することは大変な作業だ。
一方、パチスロはメーカーごとで下取りなどが行われているが、当然、その先は処理業者が担うことになる。パチスロに関しては「闇スロ」への流出という懸念も拭えない。使用済み遊技機が野積みや不正使用に流出することを防ぐためにも、信頼できない業者に流れることは絶対に避けなければならない。
不正流出防止と適正処理
ただし、仮にほぼ同時期に多くのホールから撤去台が出た場合、ホールが廃棄したくても受け入れ先がない、運送会社が来てくれないなどのケースも想定される。その場合ホールは、一時的に敷地内に撤去台を置いておくことも考えられる。そこが外部から見えない場所であればいいが、外部から見えると近隣住民に「野積み」と見られてしまう可能性もある。そうした光景があちこちで出てくれば、また社会問題化してしまう可能性は否定できない。
竹村課長は「できるだけたくさんの台の適正処理を行い、今までお世話になったホール様やメーカー様のお役に立てればと考えますが、いつ、どれだけの量の使用済み遊技機が発生するのかが不透明な状況では、受け入れ態勢を整えることも難しい」と悩ましさを隠さない。
一時的な需要のために人材を確保したり、大量の処理待ち遊技機を一時保管するために倉庫を借りたりすることは大きなコスト負担になる。社会全体が人材不足の中で一定期間だけ人手を確保することは困難だし、「その時」に備えて空の倉庫を何カ月間も借りているのは賃料の浪費になる。竹村課長は「現在ホール様が倉庫保管されている検定・認定期限切れの遊技機だけでも、処理に関する検討を始めていただけるとありがたい」と語った。
日工組でも、メーカーによる下取りの際に、併せて倉庫にある旧規則機も下取りに出してもらうなど期限切れ遊技機の早期回収策を検討しているという。
300万台というかつて経験したことがない大量の使用済み遊技機を適正に処理するためには、ホール、メーカー、処理会社、運送会社などが、使用済み遊技機の不正流出防止と適正処理という2つの目的達成のために高いモラルのもとで協力し合うことが欠かせない。社会問題化というリスクを回避するためにも、互いの立場を越えてこの難事業に取り組む必要がある。