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2020年08月03日
No.10001855

サミー
DXで業界の未来を
里見治紀社長インタビュー

DXで業界の未来を
サミー株式会社 里見治紀代表取締役社長CEO

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ビジネスシーンのデジタルトランスフォーメーション(DX)が広がっている。そんな中、サミーグループはこのタイミングで新しいECサイトを立ち上げた。里見治紀代表取締役社長CEOに今後の展開を聞いた。

――世の中が大きく変わりつつあります。この状況をどう見ていますか?
里見社長(以下敬称略) 緊急事態宣言による外出自粛期間中は、時間やお金の使い方、人との付き合い方などのプライオリティを強制的に考えさせられた期間でした。今までは忙しくてそんなことを考える余裕がなかった人たちも、みんな改めて考えたはずです。それによって世の中がニューノーマルへとシフトチェンジしていきました。コロナ以前の価値観はもう戻ってこない。私たちのビジネスもそれに合わせて変わらなければ、生き残っていけないだろうという危機感を持っています。

――緊急事態宣言中には業界バッシングが起きました。
里見 休業要請に応じなかった店舗の行列をメディアが報じました。平時でも朝の行列は近隣各所からのクレームを引き起こします。当社グループのサミーネットワークスはこれを解消するために、『777CON‐PASS』(スリーセブンコンパス)というサービスを提供しています。これはアプリで入店順の抽選を受けられるもので、利用ユーザーは店頭に並ぶ必要がありません。ホール様にもオペレーションのコスト削減やクレームの発生防止などのメリットがあります。7月7日にはサーバーがダウンするほどアクセスが集中して、ご利用の皆様には大変なご迷惑をおかけしました。今回の件で、私たちが想定していた以上のニーズがあることを改めて実感しましたので、今後は運営体制を一層強化し、安定的なサービス提供を徹底していきます。

――新型コロナの感染者が増加するにつれて、メーカーもホールとコミュニケーションを取りづらくなったと聞きます。
里見 営業現場からは、ホール様に伺おうとしても「来てくれるな」と言われてしまうという話を聞いていました。ですから当社は自粛期間中に、リモートを活用したオンラインでの営業活動や近況報告を積極的に行っていました。こうした取り組みがニューノーマルとして当たり前になるのであれば、特に離島や遠隔地などのホール様にはリモートでの営業活動が日常化する可能性があります。一方で、信頼関係を築くための対面営業も大切。ニューノーマルの時代には、両方を同時に行う必要があると思っています。


「777EC」で遊技機を販売

――ウィズコロナの時代を迎えて、サミーグループはどんな展開を考えていますか?
里見 今期から掲げている目標は、「チャレンジ to DX」です。私が特に必要だと考えている変化は、デジタル技術を駆使してこれまで以上の価値を提供すること。すなわちデジタルトランスフォーメーション(DX)です。これはコロナ前から考えていました。当社グループは他のビジネスも展開していますが、遊技業界がもっともデジタル化に取り残されていると感じていたからです。

――具体的にはどのような構想を持っていますか?
里見 まずはECサイトの拡充です。サミーのホール関係者様専用サイト「Sammy Plus」 (サミープラス)は2014年に運用を開始して、今年2月に製品注文機能を備えました。これによって製品発注からトラブル時の対応方法確認や部品注文まで、24時間365日、オンライン上で受付可能となる業界初のワンストップサービスになりました。そしてコロナ禍を受けた今のタイミングで、サイト運営をサミーネットワークスに移し、「777EC」(スリーセブンイーシー)という名称に変え、新たなスタートを切ります。具体的には遊技機のオンライン販売を始めます。第1弾はコロナが深刻化する前に発売を発表していたパチスロ『回胴黙示録カイジ~沼~』。その後も順次、777ECで販売する機種を増やすつもりです。将来的には遊技機の受注方式をEC販売中心に切り替える構想もありますが、当面は従来通りの対面営業とハイブリッドで運用します。機種によってはECだけで受け付けるものも出てくるでしょう。

――ECサイトでの遊技機販売はいつごろから考えていましたか?
里見 Sammy Plusで部品の供給やサービスをオンラインに切り替えた3年くらい前です。オンライン化は当社とホール様のお互いにとって、メリットが多いと実感していました。従来は、ホール様からご注文をいただく時間がどうしても営業終了後の午後11時過ぎに集中していた。働き方改革と言われる中で、夜中の応対に社員を残すことは得策ではありませんし、ホール様もその時間帯を閉店作業に充てるほうが有意義なはずです。オンラインでシステム化すれば24時間365日、ある程度自動化して注文を受けられ、そのまま出荷できます。こうした利点から多くのホール様にSammy Plusをご契約いただけましたので、このプラットフォームをさらに発展させて、遊技機も届けられるようになればと考えるようになりました。

業界全体のプラットフォームへ

――777ECは新しいプラットフォームという認識でしょうか?
里見 Sammy Plusは、他メーカー様からもシステムを使いたいという要望が多く、それならば当社製品だけを扱うECサイトではなく、いわば業界全体のプラットフォームとして機能させようと考えました。777ECというニュートラルな名称にすることで、参画してくださる他メーカー様も各社の特色を出しながらEC上でオーダーを受けられるようになります。メーカー様によって、うちはコールセンター対応から部品注文まで、うちは部品の供給までとニーズが異なります。そこは私たちがニーズに応えて、臨機応変にシステムを提供していこうと思っています。

――どの程度のメーカーが参画されるのでしょうか?
里見 Sammy Plusの実績を聞き及んでいただいた数社から御引き合いをいただいている状況です。ホール様にとっては、メーカーごとのサイトにログインするたびに、その都度異なるパスワードでアクセスするのは手間ですよね。例えばAmazonのように一つのパスワードでログインして、その中でサミーや他社の商品を選べる。そんな使い方をイメージしてください。777ECにログインするだけで各社のページに飛べます。参画メーカー様から良い評判が広がれば、さらに増えるのではないかと思っています。

――ECによって、今後はどんな遊技機営業の姿をイメージしていますか?
里見 新商品をデジタルの中だけですべて説明することは難しい面があるので、ホール様に特徴をご説明したりする営業マンの仕事は変わりません。あくまでも受注業務を効率化しましょうという提案です。ただ、デジタルでできることは最大限やっていくつもりです。例えば試打。わざわざ支店や営業所に来ていただかなくても、デジタルのアプリを用意して、ご自身の好きなときにスマホやタブレット、PCなどで仮想試打できるような仕組みも用意していきます。

――777ECをはじめとするDXで、どんな新しい価値を提供したいですか?
里見 規則を変えなければできないこともあるでしょうが、遊技機のセキュリティが高まる、ゴト対策ができる、オペレーションコストが下がるなど、技術的にはいろいろなことが可能になります。デジタル化によるメリットはいくらでもあります。世の中の価値観が変わってきている中で、オールドノーマルに戻ろうとする会社と、ニューノーマルに移行しようとする会社で大きな差が出てきます。この流れに乗れなければ、業界自体も取り残されてしまう。これがコロナ禍を受けて感じた一番の危機感です。お客様あってのメーカーですので、本来はホール様のご要望に合わせた方法で注文いただくべきだと思っていますが、新しい価値観のニューノーマルではそれ自体も変えていくことで、お互いにメリットが生まれる。まずはそれを新しい価値として提供していきたいですね。

※月刊アミューズメントジャパン9月号でロングインタビューを掲載します。


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