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2022年01月31日
No.10002643

【特集】異業種参入で新機軸/ホール参入事例①
サンエース エンターテインメント/カンボジアで金融サービス
新型コロナ禍で計画狂うも新規事業に参入

A/テナント誘致とPayLuy加盟店募集を行うサンエース エンターテインメントの社員たち B/工業団地内に開業したマーケット内の小売店 C/サンエース エンターテインメントの店舗では金融サービスのほか宝くじ販売を行う D/取り扱うクジはスクラッチ15種類とナンバーズ6種類

カンボジアの経済特区「SANCOポイペト経済特区」に商業ゾーンが開業したのは新型コロナウイルス禍の2021年10月末。製造業が集積するこのエリアで、地域社会に向けた事業を展開している日本企業がある。
取材・文=田中 剛(本誌)

カンボジアの北西部にあるバンテアイミエンチェイ州ポイペトは、タイとの国境の街。「SANCOポイペト経済特区」は約80ヘクタールの区域内に、日系の自動車・オートバイ部品、電子部品などの製造企業が続々と工場を建設中で、居住区ではすでに数千人が働いている。

2021年10月31日には商業区に「サンコカンダルマーケット」がソフトオープンした。そのテナントの多くは、ポイペトで商店や露天商、行商を営んでいるローカルの人々だ。それゆえテナント誘致のしかたは、日本の商業ビルやショッピングモールの場合とは様相が異なる。開発会社からテナント誘致を請け負った企業が、地元の商人にローラー作戦を展開し、新たに開設されたマーケットへのテナント出店を勧誘している。

ひときわ目を引くのは、揃いのシャツを着たキャンペーンガールのような約20人の女性中心の営業部隊。彼女たちは日系企業のサンエース エンターテインメント社の社員たちだ。毎週月曜日に、日本、ポイペト、プノンペンをつないだビデオミーティングの冒頭で、通訳を介して従業員に訓示を行うのは、同社代表を務める今井有二氏。パチンコホール「将軍」を展開するサンキュー(愛知県名古屋市)の代表だ。ミーティングを静かに見守る共同代表の城山稔央氏は、パチンコホール「ミカド」を展開するミカド観光(愛知県名古屋市)の代表だ。

11月のある日、今井代表は現地の従業員たちにこう呼びかけた。

「我々サンエース エンターテインメントは日本、ポイペト、プノンペンにいて、宝くじ販売や電子決済サービス事業などいくつかの事業を行っていますが、ひとつのチームです。地域の人々に夢や希望を与えるのが我々の使命ですから、特にカンボジアの皆さんは、お客様に笑顔で接してください。頑張った仲間と全員で豊かになりましょう」

城山代表は2018年ころからアジアでのゲーミング関連事業への参入を模索しており、それ以前にもフィリピンでパチンコホール事業を試みたことがある。カンボジアでゲーミング関連ビジネスに参入するチャンスを模索するために、今井代表を誘ってサンエース エンターテインメントを設立したのは2020年初頭。

今井有二代表(サンキュー 代表取締役)

「アジアではフィリピンでしか普及していないビンゴを、カンボジアのカジノ内で営業できると知り興味を持ちました。アジアでのビンゴ運営事業をきっかけにカジノ関連事業の実績を重ね、いつか日本のカジノ産業に参画するのが夢です」(城山代表)

経済特区で金融事業へ

城山代表の指示を受けて、今井代表はビンゴが盛んなフィリピンに視察に行き、その業界で経験豊富なコンサルタントとも面会した。しかし、その直後に新型コロナウイルス感染症パンデミックが起こり計画は大きく狂った。すべてのカジノ施設が営業を停止し、ビンゴ事業の提案ができなくなった。

コロナ禍で身動きがとれない中で、カンボジアにいる同社幹部がカンボジアの最大手ロッテリー(宝くじ)会社カンボジアロトとサンロトの2社の商品の販売権を獲得。これに続いてポイペトの経済特区開発にチャンスを見出した。今井代表と城山代表に提案された新規ビジネスが、新興フィンテック企業Dragonfly Fintechの電子マネー・サービス「PayLuy」の加盟店拡販事業と、PayLuyユーザーに入出金サービスなどを提供するキオスク運営事業だった。同社が行っている経済特区内の商業エリアへのテナント誘致は、同時にPayLuy加盟店の拡販なのだ。

カンボジア国民の平均年齢は約24歳で経済成長率は世界8位。急速に労働者人口が増えるこの経済特区で加盟店が増えれば、ポイペトにおけるPayLuyのシェアを高められる。ユーザーが増えトランザクションが増えれば、サンエース エンターテインメントの手数料収入も増えることになる。

同社はこのマーケットにロッテリー販売と金融サービスのキオスクを出店した。PayLuyへの入金・出金サービスの他、国内外への送金(銀行振込、他デジタルウォレットへの送金)、通貨(USドル、タイバーツ、カンボジアリエル)への両替などのサービスを行っている。取り扱っているロッテリーもPayLuyで購入可能だ。

「ひょんなことから金融サービス事業を始めてエリア総代理店になりましたが、将来何が芽を出すからわからない。種まきのつもりで見守っています」(城山代表)

城山稔央代表(ミカド観光 代表取締役)

経済発展に貢献し
その経験を日本で活かす


今井代表も元々、アジアでのゲーミング関連ビジネスに関心を持っていた。だが今は、現地の従業員とZoom会議やSNSツールを通じて接する中で関心の幅が広がったと言う。

「実際にカンボジアの社員は勤勉で努力家です。しかしながらインフラが整っておらず、会議中に停電が起きたりします。日本でいうところの昭和35年から40年頃のインフラ環境でしょう。そんなこともありカンボジアの経済成長発展にも貢献したいという思いが強くなりました」

例えば、就労ビザを取得し多額の費用をかけて来日しなくても、日本からカンボジアへ専門職の人材を派遣することで、カンボジアにいながら技能を習得させることができないか。

「現地での人材育成事業を展開することにより、日本の雇用問題と高齢化社会対策の一助になるかもしれませんし、カンボジアでのセカンドキャリアの機会を広げられるかもしれない。いずれにせよ、カンボジアで事業を展開することで、ビジネスチャンスと出会う確率が高まるはずです。私も変異株コロナ禍が落ち着けばすぐに現地に行きますし、しばらくしたら弊社の社員を出向させることも考えています。パチンコ事業で培ったことを活かし、またカンボジアで得た経験を日本でも活かせるよう、将来有望な芽が出るよう耕したい。『経験に勝るモノなし』だと思っています」(今井代表)

PayLuyアプリのダウンロード数は10月時点で約25万、加盟店舗数は約5000店舗。サンコカンダルマーケットのソフトオープン時の入居率は約50%で、その85%の店舗がPayLuyを導入した。

※『月刊アミューズメントジャパン』(2022年2月号)から転載


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