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2022年05月16日
No.10002798

EC最新事情②
モノが売れるオンラインショップの作り方
ECサイトの基礎知識

モノが売れるオンラインショップの作り方
でとばた・しんごさん SANNの広告事業部の統轄責任者として、テレビ番組、雑誌、Webメディアなどあらゆる広告に精通。SNSを活用したホールの販促活動にも詳しい。SANNは、ホール業界に販促や業務改善のITソリューションを提供しているほか、人材派遣、就労移行支援、教育・スクール運営など多彩な分野の事業を展開している。

遊技機メーカーや部備品・景品の販社など、ホール業界関連企業のECサイトが徐々に増えている。自社でECサイトを作るとしたら、どんな点に気をつければいいのだろうか。ECサイト構築に関する基礎知識をSANNの出戸端信吾常務取締役に伺った。

BtoCのECサイトは、PCやスマホで手軽に注文ができ、早ければ当日配達も可能。複数の商品の特徴や価格を比較しながら自分の欲しい物を選ぶことができ、決裁も簡単だ。経済産業省が2001年に統計を取り始めて以降、コロナ禍に見舞われた20年に初めて横ばい(19兆2779億円)になるまで、市場は20年間右肩上がりで成長を続けてきた。

ECサイト立ち上げには
いくら費用がかかる?

SANNでさまざまな広告事業に携わる出戸端信吾常務取締役は、企業のECサイトを立ち上げることもあり、EC全般に関する造詣が深い。

「Amazon などのショッピングモール出店だけでなく、自社オリジナルのECサイトを構築するには、予算がかかる順に『一からオリジナルで構築するフルスクラッチ』『オープンソース』『パッケージ』『ASP(Application Service Provider)』という4つの方法があります。年商1億円までを想定したサイトならば、一番安くできるASPで十分だと思います」

ASP(カート)によるECサイトの構築はレンタルサーバーが不要で、運用会社が用意するクラウド上で行う。初期費用と月額利用料が無料で、売買が成立した際に決済手数料が3〜5%程度かかるもののほか、有料版もある。有料版は、デザインや機能に制限がなく、更新も頻繁にできるため、企業や製品のブランディングを意識する場合に適している。無料版でも販売に必要な大きな機能制限があるというわけではないので、立ち上げ時は無料版から始めて後に有料版に切り替えるというプランでもいいだろう。

見て買う気にさせる
サイトデザインを考える


良いECサイトの条件は、何よりも目的の商品を探しやすいことだと出戸端さんは言う。

「商品をまず大きなカテゴリーに分け、その下に中・小カテゴリーの階層を作るのがベスト。もちろん、売れ筋商品やキャンペーンを目につきやすいように配置するのも良いでしょう。ただし、ファーストビューで特定商品の動画を強制的に見せるような構成は、よくありません。スマホで見る人も多いのでロードに時間がかかっては離脱の原因になりますし、その商品に興味がない人にとっては、やはりサイトからの離脱要因になります」

使いやすいECサイトのお手本は、ショッピングモールのAmazonやYahoo!ショッピング。DtoC(Direct to Consumer)のサイトとしてはファッション通販ZOZOTOWNなど。「完成度の高いサイトをまねることが、売れるECサイトへの近道だと思います。いずれも検索窓が一番上にあったり、カテゴリーがテキストのみで画面左側にシンプルにまとめられているといった共通点があり、目的の商品を探しやすくなっています」

Yahoo!ショッピング(上)とファッション通販ZOZOTOWNのトップ画面。
ユーザーが欲しい物を探しやすいレイアウトであることがよくわかる

SNSで検索して
欲しい物を買う層が増加

インターネット広告費のうち32.4%をソーシャル広告が占め(電子商取引に関する市場調査:経済産業省。2021年)、この報告書では、オンラインショッピングの情報源として、SNSがかなり活用されていると分析している。

ECサイトの販促のためにSNSを連動させる際、重要なのは商品と各SNSとの親和性やメインユーザーの年齢層を意識すること。ECサイトと最も親和性が高いのは、画像をメインとしたSNSなので、商品を訴求しやすいInstagramだ。商品はアパレルやコスメ関係が多く、ターゲットは20代から40代までの女性と20代の男性。国内の月間利用者数(MAU)は3300万人と言われ、Facebookの2600万人を上回っている。フォロワーの多いインスタグラマー(インフルエンサー)に依頼し投稿してもらってもいいし、「Instagramショッピング」という機能を使い、企業が直接ショッピング投稿したり、ECサイトに誘導することも可能だ。

Instagramで日本でも大幅に売り上げを伸ばしている3CE(韓国)のコスメ(左)。
タピオカブームもInstagramに投稿された映える画像が貢献した

他にも、「文字中心で訴求できるならばMAUが4500万人と圧倒的に多いTwitter」「値段が高い商品で、購買力のあるターゲットを絞り込みたいならばFacebook」「メイン商品がお菓子類など数百円程度ならば、MAUの60%が10代というTikTok」など商品やターゲットに応じSNSを使い分けることができる。

どの媒体でも共通して気をつけなければいけないのは、「広告」であることを明確に謳うことだ。かつて、ブログを使ったステルスマーケティングがさかんに行われた時期があったが、現在この手法は禁じ手と言ってもいい。

「SNSユーザーがそれだけ円熟し、ステマ広告にはだまされなくなったためです。企業案件であることを隠し、インフルエンサーに商品を持ち上げさせると、ステマが露見した後炎上することにもなりかねません」

ドイツのお菓子メーカーの「地球グミ」は昨年、
TikTokで拡散され世界中で爆発的なヒットとなった(上)。
日本では4個入り500円の製品が、メルカリなどで2800円で取引された。
下は230万回再生された難聴うさぎさんの動画

ホール業界でも、部備品や景品などを扱うBtoBのECサイトが増えている。遊技機や交換部品などを扱うサイトも登場している。キャラグッズを掲載した遊技機メーカーのECサイトは基本的にBtoCだが、ホールが購入して景品として提供することもある。こうしたECサイトは、もっと増えていくのではないかと、出戸端常務は話す。

「一方、ファンに遊技してもらうことが本業であるホール企業のECサイトは、現実的ではありません。しかし、多くのホール企業が異業種に参入している現在、他の事業でのECサイトというのは、考えてもいいのではないでしょうか。例えば居酒屋の名物のモツ煮や中華料理店の冷凍餃子などは、コロナ禍で宅飲みの需要が激増したこともあり、昨年ECサイトで爆発的に売れました。飲食関係の事業展開をしているホール企業ならば、こうした食材のオンライン販売も視野に入れられます。ホテル経営をしているところならば、じゃらんなどの大手旅行サイトとは別に、直接予約ができる自社ECサイトを立ち上げて、SNSと連動させながらコロナ禍による業績悪化から回復を図るという戦略があってもいいと思います」

※『月刊アミューズメントジャパン』2022年5月号に掲載した記事を転載しました。


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